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2025.05.22

阪急阪神不動産 隅田様・河目様に聞く、
DXビジョンの実現に向けたロードマップ作成とビジネスアーキテクチャ整理の重要性

WealthParkでは「世の中の不動産体験をアップデート」するために不動産業界のDXを推進。業務支援SaaSの提供をはじめソフトウェアだけで解決に至らない本質的な課題解決や新規事業開発を担うDXコンサルティングサービスを提供しています。

今回は、DXコンサルティングサービスをご利用いただいている阪急阪神不動産の隅田様・河目様に、同社が掲げるDXビジョンとその世界観、サービスを利用した率直な評価や今後期待することをお伺いしました。社内にDX推進部が立ち上がったのが2022年。部門設立から4年目を迎えた今年、新たな挑戦として『FUTR LABO(フューチャーラボ)』が設立されるなど、阪急阪神不動産のDXは着実に進化を遂げています。

ゲストプロフィール

 

阪急阪神不動産株式会社 経営企画本部 DX推進部長 隅田 和博 様
1994年阪急電鉄株式会社入社。資金調達担当としてキャリアをスタート。経営企画部との連携を通じてファンド事業やREIT事業の立ち上げに携わる。その後、阪急電鉄(現在の阪急阪神ホールディングス)の経営企画部に異動。2015年からは不動産事業本部に異動し、不動産事業における戦略企画に従事しながらデジタル化の波にも対応。部門横断のプロジェクトを経て2022年、出向先の阪急阪神不動産にてDX推進部を設立。2025年4月1日より現職。

 

阪急阪神不動産株式会社 経営企画本部 DX推進部 課長 河目 浩樹 様
2003年阪急電鉄株式会社入社。不動産部門に配属され、沿線の商業施設等の開発に従事。首都圏での新規開発案件などを経て2012年から3年間人事業務に携わる。その後、都市マネジメント事業部にて梅田のエリア価値向上に取り組む。2022年からはDX推進部に所属しながらもスタートアップとの協業も継続して担当している。

インタビュアープロフィール

 

WealthPark株式会社 代表取締役 COO 手塚 健介
富士フイルム株式会社・楽天株式会社を経て、2015年にWealthPark株式会社に入社。人事部の立上げ、SaaS事業およびDXコンサルティング事業の立上げ・事業運営など幅広い業務に携わる。2020年7月に取締役CBO(Chief Business Officer)、2023年11月より現職。

 

WealthPark株式会社 執行役員 DXコンサルティング事業部 事業部長 村上 朝一
アクセンチュア、グラクソ・スミスクライン、ソフトバンクロボティクスにて、事業戦略、業務改革、システム企画/運用などに従事。WealthParkでは事業変革支援サービスの責任者として、新規事業開発、データドリブン経営、業務改革、システム刷新などを支援。

目次

DX推進部が立ち上がるまで

手塚本日はお時間ありがとうございます。まず、隅田様・河目様のご経歴と現在ご担当されていらっしゃる業務に関してご紹介いただけますでしょうか。

隅田様よろしくお願いいたします。私は1994年に入社しました。入社時は資金調達を担当し、銀行交渉やIR周辺に関わってまいりました。経営企画部との連携も多く、ファンド事業やREIT事業の立ち上げにも携わりました。2015年からは不動産部門の経営企画を担当。自社単独の取組みから外部との協議を重ねながら価値を生み出していく動きへと変革を進めていきました。そんな中、不動産事業にもデジタル化の波が押し寄せてきます。当初は部門横断のプロジェクトで対応していたのですが、本格的に取り組む必要があると経営陣も判断し、2022年にDX推進部を立ち上げるに至りました。

仕事の上で重視していることは2つあります。1つはシナジーの発揮です。不動産事業では複合開発が中心となり、従来のように賃貸は賃貸、分譲は分譲といった縦割りではなく横断で企画を考える必要があります。デジタル化においては特にその傾向が強く、各部門の専門性を統合しながら連携を進めています。もう1つは常に変革し続けること。デジタル化が進む中、阪急阪神不動産の事業においてもその前提条件が変わりつつあります。特にコロナ禍を挟んで変容を遂げた働き方、暮らしぶりなどの生活スタイル、さらに顧客ニーズの高度化・個別化への対応は事業競争力にも直結する大きな課題です。つまり従来のようにハードをつくるのみではなく、不動産ビジネスのサービスの定義そのものを書き換える必要がある。DX戦略含めて従来の枠にとらわれない取り組みを推進すべきだと考えています。

河目様私は不動産部門でキャリアをスタートさせました。沿線や梅田エリアでの商業施設の開発等に携わり、その後6年ほど首都圏の新規開発案件を手がけたのち、2012年に大阪に戻ります。人事部門での3年間の経験を経て、再び都市マネジメント事業部にて梅田のエリア価値向上に取り組みました。またスタートアップのエコシステムを担当し、FUTRWORKSの前身であるコミュニティスペースを運営。2022年からDX推進部に所属すると同時にスタートアップとの協業も継続して担当しています。

村上ありがとうございます。隅田様の連携や変革といったお話、また河目様の都市マネジメントの取り組み、いずれもいまのDX推進部に脈々と流れるストーリーを感じます。

DXビジョンと初期の課題感

村上それでは本題に移らせていただきます。まずは御社が策定されたDXビジョンについてご紹介いただけますでしょうか?

隅田様DX推進部を立ち上げた初年度(2022年度)はそもそもDXという言葉の定義がメンバー間で揃っていませんでした。そこでまずはDXってなんだ?という価値観の統一を図るため、一年かけて策定したのがDXビジョンです。根底にあるのは「100年まちを創ってきた  これからの100年も創る」という2018年の阪急阪神不動産発足時に掲げた企業スローガン。これを実現するためにデジタル技術を活用し、事業やビジネスモデルを変革し続ける総合デベロッパーを目指すという旗を掲げました。

村上まさに企業理念に紐づいたDXビジョンだと思います。ただ御社の場合、不動産だけでなく周辺のヘルスケアなども含めたスケール感のあるまちづくりを掲げていらっしゃいますよね。大きなビジョンを具体的に落とし込む際の課題はありませんでしたか?

隅田様もちろんありました。ちょうどご相談した頃は、DXビジョンを描いてはいるものの、なかなか施策に落ちていかないという課題を抱えていました。壮大な目標と足元の取り組みをどう繋いでいくべきか。そのために最前線でDXに取り組んでいる方とディスカッションの場を設けてほしい、と手塚様にお願いしたのが最初でした。

河目様あのときに手塚様から先進事例をご紹介いただいたことで、みんなのスイッチが入った気がします。実際にDXロードマップを描くところまでご支援いただき、業務DX、事業DX、価値DXと段階をあげていくイメージを抱くことができました。同時に組織としてのデジタルリテラシーをブラッシュアップしていかなければ、大きなDXビジョンをいきなり実現することは不可能だろうという認識も持てました。

手塚壮大なビジョンがありながらマネジメントの方々がいまひとつ現実感が持てなかったのが課題でしたね。

隅田様 DXビジョンの実現によって「働きたい・訪れたい・暮らしたいまち」をつくるという構想自体はビジョン策定時に合意できていたんです。ただ、その道筋をつくる必要性について組織レベルにまで落とし込めていませんでした。ここの認識ができたことにより、今後はその道筋を着実に歩んでいこうと。デジタルを活用しつつ先達より継承してきた事業ノウハウおよびサービスへの信頼感をベースに、スタートアップや他社さんとも連携しながらお客様に新たな価値を提供していくことを目指しています。

ビジネスアーキテクチャの整理と理解

村上実務面ではすでにデータ基盤の整備をはじめ、現場各所での取り組みがはじまっています。目下のテーマとしてはこれらの取り組みがDXビジョンにどうつながっていくのか。ロードマップの登り方が重要なのでは、と思いますが……。

隅田様おっしゃるとおりです。DXということでつい現状のシステムのデータ構造からのボトムアップ思考になりがちなんですが、それでは経営層と議論が噛み合わないんですね。なぜかというと、デジタルの手前のそもそも論としてビジネスアーキテクチャ(※)の整理が不十分だったから。御社にご協力いただき成功事例と現状の差分を見ることで、その視点が欠けていることにあらためて気づけました。

デジタル領域から深めていくことは必要なんですが、それでは経営層が目指しているものとどうつながるのか、という対話にはなりにくい。あらためてビジネスアーキテクチャを整理した上で、われわれがやりたいことと顧客価値提供が両立する可能性を探り、それをデジタルの世界に落とすアプローチが必要だということを実感しました。

河目様まさにDXでいうところの「デジタル」と「トランスフォーメーション」ですよね。デジタルを通して生まれるトランスフォーメーションの姿って何なんだろう、と。当時はわれわれも経営陣もぼんやりしていたんです。そこに対して手塚さんからご紹介いただいた成功事例に基づくユースケースをヒントに模索していきました。

村上ビジネスアーキテクチャもそうですが、エンタープライズアーキテクチャや概念データモデルといったテーマを理解していただくのは決して簡単ではありません。でも阪急阪神不動産では隅田様や河目様がDX推進部で啓発してきた知識や情報を下地として持っているので理解も早く、共通認識および言語化がスムーズでした。

※ビジネスアーキテクチャ:ビジネスのあるべき姿、組織構造、業務プロセス、情報の流れ

若手社員主導で生まれた「FUTR LABO」

隅田様やってみてわかってきたこともあります。1歩ずつ着実な歩みでありながらも、具体化への確かな手応えを感じつつあります。たとえば今年、考えるだけでなく実践する場として「FUTR LABO」というものが若手の社員主導で立ち上がったんです。DXが進む中でかつてのような暗黙知をどうやって引き継いでいくべきか。そんな若手からの問題提起が経営陣の課題認識と重なったのが設立のきっかけでした。

河目様「FUTR LABO」は社員発のプロジェクトだけに、新しい取り組みを新しい人たちが先導して進められる。スタートアップとの共創もますます活性化していくでしょう。この中から新たなビジネスモデルの創出だけでなく、DXビジョンの文脈に則った未来のまちづくりにつながるアイデアも生まれるのではないかと期待できます。

村上事業領域が大きく、さらにその先にいろんな展開がありますよね。当然のことながら顧客接点もあれば都市情報も含めたいろんな外部データとの連携も考えられます。その基盤づくりをWealthParkとしてもしっかりとお手伝いしたいと考えています。
 

▼「FUTR LABO」特設サイト
https://futrlabo.hhp.co.jp/

不動産×DXだからこそ提供できる価値

村上最後になりますが、WealthParkへの感想や今後に対する期待感などあればぜひお聞かせいただきたいです。

河目様御社はDXコンサルタントの中でも不動産領域における知見を有していますよね。これが大きな優位性だと思います。当時、われわれは不動産会社としてDXとどう向き合うべきなのか相当悩んでいました。そこにさまざまな会社さんがご支援の手を差し伸べてはくれたのですが、データ構造の話ひとつとっても不動産事業とのつながりを背景からお伝えしなければなりません。しかも解像度高くご理解いただくには粘り強いやりとりも必要です。ここに相当パワーをかけなければならない。ところが御社の場合は最初から勘所を押さえているので話が早いんですね。不動産×DXという組み合わせは、他社にはなかなかない強みだと思います。

手塚ありがとうございます! プロジェクト開始してから印象に残ったことなどありますでしょうか?

隅田様繰り返しになりますが、まず御社の理解が非常に早い点ですね。あれだけの情報量の整理を短期間でまとめていただき、曖昧で不明瞭な質問にも的確に回答をくださる。最終的に経営層に上げるにあたって資料の完成度を高めてくれて、説明する側としては本当にありがたかったと思っています。

河目様データ基盤やビジネスアーキテクチャの説明を社内に浸透するのは難しいのですが、どう噛み砕いていくかについて御社のノウハウを参考にさせていただきました。

村上 DXで不動産ビジネスを変えるんだ、という皆様の熱い思いに応えるべく、これからも変わらず精一杯伴走させていただきます。本日はありがとうございました!

 
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