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2021.07.16

【イベントレポート】不動産会社様と一緒に歩んできたから分かる DX導入の失敗と成功の差(前編)

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この記事は、2021年2月18日に開催されたオンラインイベント「不動産会社様と一緒に歩んできたから分かる DX導入の失敗と成功に差」のイベントレポートです。
不動産テックを運営する3社のカスタマーサクセスチームの担当者によるプレゼンとトークセッションが開催されました。
この記事では、WealthParkカスタマーサクセス部長の鳥谷によるプレゼン内容を「前編」トークセッションの様子を「番外編」としてノーカット文字起こし形式でお届けします。

 

目錄

自己紹介

はじめまして!WealthPark株式会社の鳥谷と申します。
まずは、簡単に自己紹介から始めさせて頂きます。私は、新卒で楽天に入社しまして、インターネット業界には10年ほど携わっており、WealthParkには5年ほど前から参画しております。

現在の業務はカスタマーサクセス部の責任者として、主にお客様のシステム導入と活用支援が担当です。
本日は、どうぞよろしくお願い致します。

WealthParkとは?

WealthPark株式会社について簡単に説明します。
当社は、いわゆる不動産テックのスタートアップです。
約100名の社員の半数は、現在エンジニアとして勤務しており、WealthPark Businessというツールを開発しています。

 

また、弊社はWealthPark Businessというツールを不動産管理会社様向けに提供していますが、このツールは、管理会社様とオーナー様のコミュニケーションを円滑化する機能を備えています。

私の管轄部署であるカスタマーサクセスのミッションは、管理会社様に対するWealthPark Businessの導入・活用支援です。
また、カスタマーサクセス部門のバリューについてですが、データ連携、システム提供、オーナー導入、機能活用と段階的なステップを踏むプロセスで、顧客を支援し、お客様の導入負荷を軽減することが主な業務となります。

DXとは?

今回、このプレゼンのテーマは「DX推進の課題とカギ」とさせて頂いておりますが、ポイントとしては、DX推進の課題はDXの手前にあり推進のカギとはカスタマーサクセスの活用であるという点をメインにお話していきたいと思います。

初めに、DXの定義についてご説明しますが、「DX」とは、単なるデジタル技術の活用ではなく、企業構造・ビジネスモデルの継続的な変化が本質です。
「DX」と聞くとデジタルというところに注目されがちですが、本日はX(企業構造・ビジネスモデルの継続的な変革)にフォーカスしてお話させて頂きます。

 

DXのフェーズは、以下のようにデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションと3段階のステップによって構成されます。

これをWealthParkのサービスに置き換えると、第一段階がオーナー様へWealthParkを導入して頂く段階、送金明細の確認や承諾プロセスのデジタル化が第2段階、オーナー様体験の改善、資産管理への転換が第3段階のデジタルトランスフォーメーションとなると考えています。

WealthParkを活用したDXは、ワークフローという機能によって、オーナー様に対するワンタップでの修繕の見積もり、募集条件の確認ができる機能を提供しており、この機能によって、これまで最大2日要していた作業を最短15分まで縮めることで空室期間の短縮に成功しています。
さらに、空室期間の短縮以外にも管理会社様で様々なメリットが生まれているのが現状です。
例えば、1月あたり90,000円の郵送コストのカットや3000人のオーナー対応を6人で対応できるようになった、新規顧客獲得の際のツールとして利用できるようになったなど、日々新たな事例が生まれております。

事例紹介

私はお客様のDXサポートを5年ほどさせて頂いている中で、DXは実行の難易度が高いと感じています。これを証明する数値として、DXによって期待できるような成果を得られた企業は、わずか5%であるという統計も得られたほどです。

また、昨年のアンケート調査の結果を見ると、課題の解像度が低かったのかなと感じました。これはコロナの影響などで、昨年から急激にDX施策に取り掛かる企業が増えてきたことが原因であると考えています。

様々な企業様に対してDXを推進するサービスを展開させて頂いている中で、多くの課題が浮き彫りになっていますが、多くの課題はDXの手前にある課題であるというのが私の観点です。
今回のテーマは成功と失敗の差とされていますが、個人的には、どの会社が成功してどの会社が失敗したみたいなのはないのかなと思っていて、どちらかといえば、失敗の速度の差が一番大きいのではないかと思います。

このことから、今回は、課題の解像度の差をあげていくために、つまずきから出た気づきや学びを共有していきたいと考えており、トピックとして4つほど数字を紹介します。

はじめに1人という数字からご紹介していきます。

これは初期の頃、WealthParkをなかなか使って頂けない原因を調査するため、管理会社様のもとを伺った際に得た数字であり、WealthParkを誰も使っておらず、やっと見つけた人が1名いらっしゃったという事例です。

 

実はその当時、私もその現実を目の当たりにして、管理会社様のデスクで頭を抱えて悩みました。
ここで気づいたことは、お客様にそもそもWealthParkを使う習慣がなく「ITに慣れていない」「業務が忙しい」などの理由でWealthParkが使用されていない実態です。
また、唯一利用して頂いていた方に聞いてみたところ、「自分はWealthParkを使っているけれど、なかなか他のスタッフまで習慣化させることができない」という意見でした。

この習慣を変えるというのは個人単位で変えたとしてもなかなか効果がなく、組織単位で変える必要があるということが気づきであると思います。
デジタル化の主役は現場の全ての人であり、ツールはあくまで黒子です。
そのため、最初から関係者全員を取り残さないことが重要であると考えています。

また、巻き込むべき相手ですが、デジタルに抵抗のない若者やシステム担当者ではなく、導入に前向きでない担当者やデジタルが得意でない方、関連部署の担当の方を巻き込んで行くことが大切であると思っています。

WealthParkでは「導入計画」というものを各社に作成して頂き、導入の目的や成果の定義(導入に踏み切ったオーナー様の数)などをを1つ1つの会社様と話し合いながら設定しています。
この「導入計画」の段階で巻き込むべき人をあえて巻き込むことが重要であり、担当者の方を途中からではなくはじめから巻き込むのがポイントです。

2つ目のキーワードは5ヶ月です。

これは1人目の地主オーナー様に利用してもらえるまで要した期間を表した数値です。

WealthParkのアプリはどうしても投資家様向けに捉えられがちですが、現在は多くの地主オーナー様に使って頂いております。
サービス開始当初、どうしても地主オーナー様になかなか使って頂けていないという課題を解決するために、管理会社様がオーナー様のもとを伺う際に自分も同行させて頂いて、WealthParkをご案内させて頂きました。


ここで気づいたことは、高齢オーナー様が利用しないなという思い込みに囚われていたという点です。
オーナー様は70歳ぐらいの方で、相続へ向け、情報を集約したいという思いから、オーナー様自身はWealthParkの使用に前向きでしたが、導入までに色々なつまづきのポイントが障壁としてあったため、本格的な導入に踏み切れていなかったのです。

オーナー様へWealthParkを導入して頂く流れの中には、告知、利用提案、利用申し込み、システム登録、ログインフォローなどのフェーズがあり、その流れの中で「送金明細をみてみたい」「メールを見ていない」などつまずきのポイントがたくさんあります。

実際、私の方でも、お客様のWi-Fiが正しく設定されていなかったため、設定を手伝い、ログインして頂いたのが導入第一号のオーナー様の事例となりました。
また、この事例はオーナー様にとっても成功体験や学びに繋がったと思います。

DX施策ではどうしても管理会社など直接のクライアントばかりに目を向けがちです。
しかし、実際には、DXの手前で「何に困っているのか?」とういうことの把握し、障壁を取り除いていくことが重要であると実感しています。

次の80%という数字は、ある地場の管理会社様がオーナー様向けのアカウント発行したうち、24時間以内にログインしているオーナー様の割合です。

少しイメージしづらいかもしれませんが、これは、当初5ヶ月の時間を要していたものが、現在では24時間以内に行われるようになるのが普通になったことを示した数字です。
この管理会社様にお話を聞いたところ、各オーナー様に担当者の方が直接訪問し、オーナー様の課題を解像度高く認識していらっしゃることが高いログイン率に繋がっていることが分かりました。

ここでの学びは、無意識の思い込みがなく、導入・利用イメージの解像度が高ければ、サービスを有効に導入して頂けるという気づきです。
一般的に、担当者の方はオーナー様がアプリを使ってくれるというイメージを持っておりません。しかし、そのような思い込みをなくすことで発生する効用は非常に高いと感じています。
「システムを利用しないかもしれない」という理由は無限にありますが、実際にはオーナー様の反応を見るのが一番早く、オーナー様自体もDXの一員として巻き込むという意識があれば、導入は進むのではないかと考えています。

 

担当者の抵抗をなくし、小さな成功体験を大切にしていくことがポイントです。

次の3%という数字は、WealthParkのお客様のうち、オーナーコミュニケーションについて組織全体で定量的な分析を実施している会社の割合です。

このような実態について、管理会社の方からは、情報が散在しているため、どうしても業務改善に繋がらないというご意見を頂きます。
しかし、部分的にコミュニケーションや情報整理の問題を解決しても、データが残らなかったりデータの形が異なってしまうと属人的な解決にしかつながりません。

逆に、問題を組織全体で共有し、最適化をすることで組織的な業務改善に繋がると考えており、部分最適の積み重ねが必ずしも組織的な全体最適には繋がらないということを学びました。

将来的には、オーナー様が複数の管理会社との間でWealthParkを使っている状態を目指しており、より多くのオーナー様が繋がっている状態を目指しています。
また、この状態になるとオーナー様自身が、各管理会社様の返答や対応を横で比較してみることが可能になると言えるのではないでしょうか?

このような、全体最適の課題を解決するのがインプットのワークフローです。

インプットの形を整えると結果的に文脈や関連ファイルが記録に残ります。
そうすることで、業務カテゴリの分析による業務の平準化、オーナー様ごとの分析が実現できるような体制を構築していくことができるようになるのです。

そして、ここでの気づきは、日々の業務データを組織の共通言語にすることで次の改善が生まれるということ学びになります。

まとめ

本日は、このようにDXを推進する上での4つの課題についてお話しました。

カスタマーサクセスチームとしても管理会社様に共通する課題を横展開したり深堀りすることでDXが1つの会社だけではなく、業界全体で進んでいくと思っています。

 

 

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