2021.06.08
DX推進における3つの壁の壊し方 DX推進担当者の悩み、 成功事例から学ぶ組織形成
2021年5月25日、不動産テック事業を運営するWealthPark株式会社、株式会社日本エイジェント、株式会社リコーの3社の担当者が集い
「DX推進における3つの壁の壊し方」と題されたウェビナー企画を開催しました。
大変ご好評頂きましたので、パネルディスカションの内容を記事に起こしてお伝えいたします。
目錄
はじめに
筒井:本日パネルディスカッションの司会を務めさせて頂きます。筒井と申します。よろしくお願い致します。
本日は、「DX推進における3つの壁の壊し方」というテーマでパネルディスカッションを行います。
まずはじめに、本日のディスカッションの流れを確認するため、以下で提示した図をご覧ください。
以下の図は、DXツールの導入から運用までのフローを表した図です。
本日は、この図の流れに沿い、DXツールの導入決定から運用の継続までの各フェーズで発生する課題についてのトークセッションを行います。
【DXツールの導入決定から運用継続までのフロー】
筒井:また、以下の図は一般社団法人不動産テック協会が作成した、不動産テック業界のカオスマップです。
このカオスマップから、現在、国内には領域ごとに数多くの不動産テック企業が参入していることがわかります。
【不動産テック業界のカオスマップ】
決定までの壁
筒井:早速、DXツール導入における第一の壁である「決定までの壁」についてディスカッションしていきます。
現在、不動産テック企業は、掲載したカオスマップの通り、国内だけでも数多く存在しており、ユーザー様が全てのサービスを比較し運用することは非現実的です。
そのような状況下で、実際にお客様にDXツールの導入を決定してもらうために、どのようなポイントがあるのかを話し合いたいと思います。
筒井:では、初めに日本エイジェントの橋本さんに、DXツールの「決定までの壁」について伺いたいと思います。
DXツールの導入のポイントは、どのような点であるとお考えでしょうか?
橋本:そうですね。
弊社の場合は、まず自分たちの手で作ったDXツールを自社内で一度使い倒し、ツールの特性を十分理解した上で、ユーザー様へ提供しています。
そのため「ユーザー様の立場に立って、痛みや悩みを共感できることが強みである」と考えており、その強みを実際の営業に生かしていることがサービス導入をご決断頂くポイントであると認識しています。
WealthParkさんも似たような体験をされているのではないかと思いますが、鳥谷さんはどのように考えていらっしゃいますでしょうか?
鳥谷:そうですね。
弊社も日本エイジェントさんと同じように、ユーザー様へDXツールを提供する前に、一度自分たちで自社のDXツールを使い倒しているので、ツールを使う側の立場に立って、ユーザー様の悩みに共感できることが強みであると認識しています。
また、「何のためのツールなのか?」という観点や「システムの思想」などをユーザー様側に理解して頂くことが、ツールの導入を決めて頂くためのポイントであると感じています。
このように顧客目線に立つことは、ツールを継続的に使って頂くためにも重要な要素です。
筒井:ありがとうございます。顧客目線に立ち、継続的にDXツールを使って頂けるような関係性の構築が重要だというお話ですね。
次に、「自社の課題をどのように定義していくか」という点についてお話を聞いていきたいと思います。
関野さんは、この点についてどのようにお考えでしょうか?
関野:自社の課題に関する質問ですね。この質問に関して、本日は図をご用意致しましたので、下の図を参考にお話しを進めていきたいと思います。
関野:この図は、売り上げを作るための施策を計算式で示した図です。
赤字で書かれた9つの要素を確実に掌握することで、売り上げを飛躍的に向上させることが可能であると考えています。
また、この場合、抽象的なイメージではなく具体的な数値として指標を管理することが重要です。
橋本:関野さんがおっしゃった通り、売り上げに関する施策を数値で管理するというアクションは非常に重要ですね。
また、数値管理の前段階として、各ユーザー様のDX担当者様が、「まずやってみよう!」という気になってDXツールの導入に前向きになって頂けるように、後押しすることも効果的だと思います。
導入までの壁
筒井:ありがとうございます。
次に、「導入までの壁」というテーマでお話をさせて頂きます。
DXツールの導入を決断しても、現場から反対され、なかなかツール導入が進まないという課題を抱えている企業様も多いのではないでしょうか。
このような壁を打破するためにはどのような施策が有効でしょうか?
関野:そうですね。
不動産業界は、元々対面営業の世界なので、例えば、DXツールを利用した非対面営業を推進する場合、ある程度の反対意見は出てきてしまうと思います。
この解決策としては、DX導入を推進するプロジェクトマネージャーに裁量や権限を与える施策が合理的です。
また、不動産テック企業は、各社CSチームを用意しているので、CSチームに伴走してもらうことで、よりチーム全体を巻き込みやすくなると考えています。
鳥谷:CSチームについて触れて頂きありがとうございます。
私はCSチームの業務を通して、ユーザー様の企業内でDXツール導入に関して摩擦がある場合、第三者であるCSチームを現場の円滑油として使って頂くことが有効であると実感しています。
たとえ反対意見があったとしても、CSチームが、ユーザー様に寄り添った提案をすることで、現場の方が「じゃあ使ってみようかな?」という気持ちになって頂く状態が理想ですよね。
また、理想の状態まで持っていくためには、CSチームがユーザー様側の色々な立場の人に接し、現場以外の第三者的な立場の方と手を組むことで、現場へのツール導入を後押ししてもらうことが有効であると考えています。
筒井:ありがとうございます。
現場以外の第三者の方とタッグを組む発想は、今まで私にはなかったので、非常に参考になりました。
ちなみに、DXツール導入の推進者であるプロジェクトマネージャーと現場スタッフの温度感やギャップを調整することも非常に重要な作業であると考えていますが、こちらはいかがでしょうか?
鳥谷:そうですね。うまくDXツールの導入が進んでいる企業様の傾向を見ると、ツール導入に関して、プロジェクトマネージャーのコミットが強い企業や、マネージャーと現場スタッフが同じビジョンを共有している企業は、DXの導入もうまくいく傾向があると感じています。
また、マネージャーと現場スタッフの温度感の差をできるだけ少なくするためには、定期的にKPIの振り返りをすることが有効です。
KPIの振り返りは、振り返るたびに現場のモチベーションをあげることが出来るため、非常に有効な施策であると考えています。
橋本:私は、DXツール導入を成功させるうえで、主なポイントが3つあると考えています。
1つ目は「どんな小さな規模のDXツール導入でもプロジェクト化して取り組むこと」、2つ目は「プロジェクトには、比較的社歴の浅いメンバーをアサインすること」、3つ目は「プロジェクトの責任者がビジョンを明確化してメンバーに共有し、現場から絶対逃げないこと」であると考えています。
そして、小さな成功事例を積み重ね、大きな業務改善につなげていくアクションが求められるのではないでしょうか。
安定運用までの壁
筒井:ありがとうございます。
続いて、「安定運用までの壁」についてトークを進めていきます。
まず「安定運用とはどのような段階を示すのか?」というお話ですが、
こちらに関しては、鳥谷さんの見解から伺いたいと思います。
鳥谷:我々としてはうまく運用ができているユーザー様に照準を合わせ、
そのユーザー様の状態を「安定運用の状態」と定義し、同業他社の方へその状態を共有しています。
具体的には、「御社と同じぐらいの規模の会社様であれば、これぐらいの導入速度で、何名ぐらいの方にアプリを使って頂いております」と1つのロールモデルとして、他の会社様にも紹介するようにしていますね。
また、DXツールを導入してから一定の時間が経つと、導入速度が鈍化するので、
丁寧に経過を振り返りながら、じわじわと浸透させることが重要です。
このように、ツールの導入がうまくいっているかどうかを振り返る機会を定期的に設けることが安定運用のポイントであると考えています。
関野:最近感じていることは、「DXと真面目さは、非常に相性が悪い」という点ですね。あるユーザー様は、不動産テックを活用した成功事例を社内チャットへ大量にシェアした人に「〇〇サービスマスター」みたいな称号を与えることで、スタッフモチベーションを上げ、安定運用の状態をキープしているそうです。
筒井:少しの工夫でも積み重ねることで、地道に結果を出していくことが安定運用に繋げるために重要ということですね。
逆に、解約要因になりうる要素については、どのようにお考えでしょうか?
橋本:そうですね。ユーザー様が「このツール、ただお金かかっているだけだから要らないよね」みたいな状態が続くと、解約を助長してしまいます。
そのような状態を避けるためには、導入したら終わりではなく、マイルストーンを設定し、ユーザー様側とこまめに振り返る機会を設けることが必要です。
筒井:ありがとうございます。
最後に、「運用継続の壁」というテーマでお話を進めさせて頂きます。
せっかくDXツールの導入が進んだのに、不具合の報告や解約の話ばかり出るような状態は、運用継続において大きな支障であると感じています。
関野さんは、このように運用継続を阻む要因を解消するためには、どのようなポイントがあるとお考えでしょうか?
運用継続の壁
関野:そうですね。運用を継続させるためには、導入初期が一番重要だと考えています。導入初期の時点で、「ユーザー様側が、ツールに触れてもらう機会を設定できるように寄り添うこと」「現場のフィードバックをしっかりと受け止めること」を意識して行動することが求められます。
橋本:不具合や失敗ばかりにフォーカスされすぎた結果、運用が定着しないという現象も見受けられます。その状態を避けるためには、成功事例を積極的に発信出来るような環境を整備し、現場スタッフが自分の仕事に自信を持てるようなフローを形成することが、運用を継続させるためのポイントです。
また、一番重要なのは、プロジェクトマネージャーが現場に対して感謝の気持ちを示すことなのではないでしょうか。
筒井:そうですね。成功事例を社内で共有し、評価し合う習慣を作ることが重要であると感じました。
ちなみに、カスタマーサクセスの目線としてはどのように映りますでしょうか?
鳥谷:私もDXツールを導入する段階が一番重要で、導入初期にどれだけ小さな成功体験を早く積み重ねるかが、その後の運用継続に向けたポイントであると考えています。
また、運用を定着させるためには、振り返りをこまめに行い、PDCAを回すことが重要です。
弊社では、ユーザー様同士が、失敗や成功を発表し共感し合う場を「ユーザー会」として定期的に開催しています。
「ユーザー会」は、「自社と同じ課題を他の会社も実感していることが共有できた」「他社様の事例を参考に自社の課題を解決できた」など大変ご好評頂いております。
筒井:そうですね。同業他社との交流を通して、同じ目標の仲間を見つけることは、業務改善を進める上で、非常に有効であると認識しました。
皆様、本日はありがとうございました。