2020.05.08
CEO川田的連載專欄 Vol.2 |海外房地產科技的昌盛和變革<第一回>
本連載では、“不動産×テクノロジー”というキーワードを、“Connect Value, 繋がることによって生まれる価値”、という観点から紐解くことで、その息遣いと変化の核心を共有して参りたいと考えております。
「テクノロジー」の活用が進んでいる、先進的だ、と評される米国ですが、その核心に迫る上では、日本と米国がそれぞれ置かれている市場環境の違いを正確に把握する必要があります。今回は、まずはマクロな視点で日米の市場環境の比較をすることで、なぜ米国においては「テクノロジー」や「サービス」が生まれ、育まれ、そして活用されているのか理解を深めて参りたいと考えます。
目錄
日本の3.4倍を誇る、賃貸住宅市場
まず何より目を引くのが、6,200万室を誇る米国の賃貸住宅市場です。公営・社宅等を含めても最大1,800万室と見積もられる日本の3.4倍の規模で、かつ総住宅戸数の44%が賃貸として存在、日本と比較しても非常に大きなシェアを占めていることが伺えます。住環境をライフスタイルに合わせて変化させるという、日本とは違った側面が大きく影響をしており、特に注目したいのがSingle Family Rental(一軒家貸、戸建貸)という市場です。日本では古くから“戸建ては終の棲家”とされているため余り一般的ではありませんが、米国では“中核都市から車で30分の庭付き一戸建てを借りて住む”というのが当然の文化として根付いています。
圧倒的な二次流通市場
第二に、二次流通市場がしっかりと整備されていることが挙げられます。2019年は実に554万件の中古物件の売買がなされました。これは少なくとも25年に1度は売買がなされるという事であり、家は“資産(買う)であり、かつフロー(借りる)でもある”とみなされている事を示しています。なお日本で同様の数値で置き換えると、327年に1度しか中古の売買がなされていないとなりますが、これは各地方を中心に代々家を引き継ぐ、20-30年すると立て替えて新築を購入する、という独自の文化が存在し、家は“資産・フローの行き来をする対象とは必ずしも言えない”という実態を示しています。
希少な新築供給
第三に、非常に希少な新築供給が挙げられます。都市部における新築物件の建築許可取得の難しさ、建築工程確率・人員(職人)確保の難しさ、そして、中古の売出・貸出の巨大な市場との競争という観点から、新築の供給は著しく限られ、日本よりも供給が少ない市場となっています。
人口動態の差
米国でも、実は10年ほど前から合計特殊出生率は2.0を切っており、寿命の延びに支えられるという要因を除くと人口減少期を迎えていると言えます。但し積極的な移民の受入を行ってきたことから、現在でも引き続き年間150万人程の人口が増え続けており、今後も安定的な伸びを示すことが予想されています。一方で日本は、既にピークアウトをし、年間50万、今後は100万人近い単位での人口減少が見込まれていることから、この点からも市場環境は大きく違うことが伺えます。
なお、米国においては昨今、一部の都市部において、都市部に仕事もしくは学業の為にやってきても、賃料が高騰し家賃が払えない、結果、都市の機能が果たせなくなってきているという問題が深刻化してきています。不足している住宅数はおよそ400万室ともいわれ、その対応が急ピッチで進んでいます。GoogleやFacebook等も住居提供や環境整備に多額の資金を拠出することで、住環境の整備に協力をしている実態があります。なお6200万室をほこる賃貸市場の空室率は、直近の統計では1.4%と出ており、そのひっ迫感が伺えます。
日本と比較して3.4倍の市場規模、半分の空室率、30倍の中古流通市場、規制と競争に置かれた新築供給、そして増え続ける人口と多様化するニーズに対して、誰もが解決を模索し、チャレンジをしている実態があり、マクロの観点でも多くのチャレンジが皆様にも想像頂けたのではないかと思います。
次回は、そんな米国の市場の中で、実際にはどのような「サービス」や「テクノロジー」が生まれ、チャレンジをしているのか、そして本連載のテーマである“繋がることによって生まれる価値“はどこに存在しているのかを、探って参ります。
表.1:マクロから見る日米比較
執筆者:
川田 隆太 WealthPark株式会社 Founder & CEO 東京工業大学卒。日系証券会社にて投資銀行業務に従事後、女性向けアパレルECサイト運営会社にてCFO・CEOを歴任。現在は、資産管理・運用プラットフォームであるWealthPark事業を展開。東京・ニューヨーク・上海・香港に拠点を構え、11カ国で投資用不動産の管理・管理システムを提供
※本稿はWealthPark株式会社による全国賃貸住宅新聞社様への連載寄稿です