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2020.10.30

特別対談企画(後編)東急住宅リース三木社長に聞く、デジタル化推進のお取り組み

東急住宅リース株式会社 代表取締役社長の三木氏をゲストにお迎えし、不動産管理会社に関する貴重なお話を頂戴する特別企画。後編では、不動産管理会社でデジタル化を推進することの難しさやそのための取り組み、また社会環境が変化し続ける中での組織運営や同社社員に対する思いなどついてお話を伺いました。(後編/全2回)
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ゲストプロフィール

東急住宅リース株式会社 代表取締役社長 三木 克志氏
1982年早稲田大学政治経済学部卒業後、東急不動産入社。1995年東急リバブル出向。2002年同社関西支社事業推進部長。2004年同社ソリューション事業本部事業企画部長。2012年同社取締役常務執行役員流通事業本部長。2014年同社取締役専務執行役員。2018年同社取締役副社長執行役員。2019年4月東急住宅リース代表取締役社長に就任。

 

目次

デジタル化による実質的な効果に視点を置く

── 東急住宅リース様はデジタル化に対して早い段階から積極的に取り組まれている印象がある一方、ご苦労やお悩みもあるかと思います。デジタル化の実際面での難しさにどの様に対処されていますか。

三木社長:例えば、これまでRPA導入に関しては、ロボットの新規開発に力を入れてきましたが、業務効率化のメリットが生じる前に、準備段階の手作業に時間がかかってしまい、現場の所感としては大変さに大差がないということが起こりました。大事なことは、「デジタル化によって現場がいかに楽になり、喜んでくれるか」です。会社の方針としてデジタル化を推進すると同時に、現場のオペレーションの実質的な効果に視点を置くことが重要だと考えています。現在では、これまでに開発したものの効果検証とメンテナンスを行いつつ、活用しています。
今ないものを導入しようとすると、どうしても一定の反対意見は出ます。今後も、デジタル化やシステム的な技術に詳しい部門の担当者が現場とよく対話をして、メリットとデメリットを理解した上でDX化のプロセスを踏んでいきたいと思っています。

── デジタル化の進め方は会社によって方針が分かれると思いますが、トップとしてどのように推進されているのでしょうか。

三木社長:私は方法まで詳細に決めてトップダウンで進めるというタイプではありません。大方針を立てたら、どう形にするかは知識や経験がある人、または現場に近い人に任せた方が良いと考えています。
一例を挙げると、テレワークを社内に本質的に定着させるため発足した、「テレワーク推進プロジェクト」というチームがあります。すべての決定権を彼らに渡して、スピード感を持って進めてもらっています。メンバーは30名程で、役職関係なく、手を挙げて参加してくれた有志者です。トライアルなので上手くいかないこともあるかもしれませんが、失敗したら責任は私が負うとして、自発的に動いてもらっています。

── 素晴らしいですね。そうしたチャレンジの仕組みは御社にとって新しい動きだと思いますが、どのようにして従業員の皆さんから理解や賛同を得ているのでしょうか。

三木社長:会社としてテレワークをここまで一生懸命にやる理由は、従業員一人一人が働き方を選択しやすい体制をつくりたいから。単なる通勤の制限ではなく、子育てや介護といった、個人の人生の事情と折り合いをつけながら仕事を続けられる体制づくりの一環として、リモートワークの環境をしっかり整えていきたいと考えています。こういった思いを従業員に伝えることで、今回の新しい取り組みも賛同を得られたのだと思います。実際の取り組みの進め方としては、全てを細かく会社が決めて指示を出すのではなく、従業員自身が自分達にメリットがあると感じられるかが大事ですね。

── 目指す組織づくりに向けて、責任はトップが取る形で現場に裁量を渡して進めていくアプローチに感銘を受けます。最終的には、やはりDXの推進も人にかかっていますよね。

三木社長:そうですね。いつでも行き来が可能な都内在住のオーナー様の中には、デジタルツール(オンライン会議システム等)を介さず、直接のコミュニケーションを好む方もいらっしゃいます。そうした文脈を完全に無視してデジタルツールを強いると、独りよがりの世界になってしまう。個別の考えや気持ちに配慮しながら、デジタル化の流れをつくっていくことが大切だと考えます。
デジタル化は明らかに今後の太い流れになっていく。とはいえ、オーナー様にしても、我々のような管理会社にしても、デジタル化に対する意識は個別に濃淡があるのが現状です。デジタル化を一気に推し進めるのではなく、オーナー様の納得感を高めながら技術を取り入れ、オーナー様や管理会社、そしてシステムのベンダー様等、ステークホルダーそれぞれのメリットを追求していくフェーズに業界自体が移行することが期待されます。

事業の維持と成長の両立

── 今後の御社の展望をお伺いできればと思います。東急住宅リース様として考えていらっしゃるチャレンジや目標を教えてください。

三木社長:会社としては3つ挙げられます。1つ目は従業員の働きがいを高めること。一人ひとりがこの会社で良かったと思えるような、環境、人間関係、仕事などをつくっていきたい。2つ目はデジタル化の推進。デジタル化を通じて効率を高め、お客様からの期待に応え評価を高めることを目指します。従業員に対しては、どこよりも早く大規模にデジタル化を達成しそれを成果につなげていくことで、大事なモチベーションの一つである給与を上げたい、という思いを伝えています。3つ目は事業を推進する上での競争力を具体的に高めること。さまざまな属性のお客様から我々を選んでいただけるようさらに確立させていきたいと考えています。

── なるほど。3つの視点で事業の成長を目指されていらっしゃるのですね。賃貸管理業は継続や維持を前提とする事業の性質上、事業の基盤を堅持しながら、成長を求めていくことのバランスの難しさもあるのではないでしょうか。

三木社長:事業の維持と成長は両立できると考えています。我々の事業の成長の一番の起点は、新たに不動産(賃貸マンション等)の管理をお任せいただく場面。つまり、不動産のオーナー様に対して、東急住宅リースに任せるメリットを具体的なファクトとしてご提示できるかどうかにかかっています。当社の管理開始後も、入居者募集の戦略に説得力があるか、オーナー様や入居者様に対して、修繕工事等でご負担や不安感を与えていないか、何かが起きた際の対応の速度や精度はどうだったか。お客様に我々を選んで良かったと思っていただけるかどうかは、こうした日々の積み重ねの結果であり、また、その上で事業が成長できると思っています。
繰り返しが中心の業務の中で意識を強く持って何かを変えていくことは、確かに難しくもあります。難しいからこそ、どうしたら意識できるか、行動を変えられるか、そういった視点で考えることが大事ですね。

── 今年6月の法改正で、賃貸管理業も士業として認定されました(施行は来年)。業務自体に良い意味で法の網がしっかりと掛っていく動きの中で、業界のあるべき姿についてどのようにお考えでしょうか。

三木社長:今回の法改正の中心であるサブリース業者の登録制度や重要事項説明は、必然の流れだと思います。自分達が良ければ良いという事ではなく、仕事を通じてお互いが幸せになる方向を目指すべきですし、今回の法改正は業界そのものの信頼度を担保すると思います。我々としては、今回要求されるレベルは既に満たしていると考えておりますが、仮にさらに何か要求されたとしても、お客様や業界の為になるのであれば、積極的に支持していきたいと思っています。

仕事に対する誇りを高めるサポートをしたい

── 士業認定は社会的認知度の高まりの反映と言える一方、不動産の賃貸管理業界は一般的にはスポットが当たりにくい業務領域ですよね。例えば採用について、若い人材を魅きつけるには、どのような取り組みが必要と考えていらっしゃいますか。

三木社長:初めて社会に出る新卒の学生に業界や会社を選んでもらうためには、ある程度の分かりやすい格好の良さや社会貢献の実績が必要なのだと思います。我々の仕事は地味な繰り返しも多いのですが、一方でさきほどお伝えしたような積極的なチャレンジも行っています。そのような取り組みの積み重ねが業界や社会を変えていき、あなた自身や周りの幸せにもつながっていく、という具体的なイメージを提示していければと思います。

── 御社のような会社が不動産業界を牽引する形で、お客様の大切な資産と向き合っている賃貸管理業務のリブランディングができたら良いですよね。

三木社長:不動産業界の中にも開発、売買、管理と色々ありますが、地道にやっていきたいという人がチャレンジできる場を用意して、全体として魅力的な業界に変えていければと思います。
今は我々が考えつかなかったような技術がたくさんありますが、技術の単なる効用面にとどまらず、導入後の暮らしにおける変化もアピールできる様な、全体像をご提案できる時がそろそろ来るのではないかと思っています。

── 楽しみですね。御社と同じく不動産の賃貸管理に従事されている現場の皆様に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

三木社長:賃貸管理業は、日々のやり甲斐はあるとはいえ、お客様にご要望をいただいたり、場合によってはお叱りを受けたりといったことが多い職種。作業も膨大で、目の前の仕事に追われることもあるでしょう。現場同士での支え合いはもちろんですが、会社が働きやすさの向上などの仕組みづくりを行い、それを通じて、仕事に対する誇りを高めていくサポートをしていくことも大切だと思います。
業界全体がより良くなっていくよう、今後も社内外に向けたさまざまな取り組みを行っていきますので、引き続きよろしくお願いします。

── 本日は貴重なお話をありがとうございました。

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インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

  

東急住宅リース株式会社

賃貸管理事業をメインとし、リフォーム・リノベーション、建物管理、海外投資家向けサービスなどの資産運用サービスを展開しています。「想いも、資産も。叶えていく。」というブランドタグラインのもと、専門家や他業種との連携を図り、ITを積極的に活用しながら、既成概念にとらわれないサービスや商品の創出に挑戦しています。

本社所在地:東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス16階
代表者:代表取締役社長 三木 克志
事業内容:不動産の賃貸管理・運営、海外投資家向けサービス、建物管理サービス、リフォーム工事サービス、コンサルティングサービス
ウェブサイト:https://www.tokyu-housing-lease.co.jp/

<本件に関するお問い合わせ先>

東急住宅リース株式会社経営戦略本部 経営計画部 広報グループ 越川
Mail:pr@tokyu-hl.jp

WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com

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