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2020.12.04

特別対談企画(前編)ホットハウス田嶋会長に聞く、地方エリアならではの不動産管理会社の進化

「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第2回は、北海道で先進的なテクノロジーによってオーナー管理や物件売買をされている、株式会社オネックスグループ代表取締役・株式会社ホットハウス取締役会長兼CSOの田嶋氏にお話を伺いました。
前編では、田嶋氏のこれまでの経歴や事業立ち上げの経緯、また社員への思いなどについてお聞きしました。(前編/全2回)

ゲストプロフィール

株式会社オネックスグループ代表取締役・株式会社ホットハウス取締役会長兼CSO 田嶋 祐介氏
約10年間、地元札幌にて営業職や会社役員を経験した後、株式会社エニシィングを設立。2009年に設立した株式会社ホットハウスを含む6社を有する、オネックスグループ代表取締役に就任。趣味はゴルフ、バスケ、食べ歩き、仕事。

目次

仲間達と一緒にアドベンチャーを体験する会社をつくりたい

――まずは田嶋会長ご自身についてお聞かせください。なぜ会社設立に至ったのか、過去から紐解いていきたいと思います。

田嶋会長:学生時代を振り返ると、遊ぶことが大好きで(笑)、仲間にだけは恵まれていました。将来のビジョンを持たないまま学生を終えて、社会人になって、サラリーマンとして建築現場で働いていましたが、ひょんなことから営業職に就いてみたら非常に面白くて。常に仲間といたことで、コミュニケーション能力や空気を読むスキルは鍛えられていたのでしょう。それまで社会で評価された経験があまりなかったので、営業成績やお客様からのお礼を通じて、初めて承認欲求が芽生えました。

そのまま営業職のサラリーマンとして過ごし、設立から関わった会社の取締役兼営業本部長になったのですが、社長から会社をこれ以上急速に大きくする意志がないことを告げられて。そこで、もう少し大きい夢に向けて走りたいと、29歳の時に現オネックスグループのグループ会社の一つであるエニシィングを設立しました。

エニシィングを設立して4年目の時期に、10年来の先輩・後輩関係にあった金澤(現:株式会社ホットハウス代表取締役社長)から、地元の不動産企業を辞めて独立したいという決意を聞き、私もかねてから不動産事業に興味があったので、一緒にやることになりました。私には業法も含めた不動産業の知識はありませんが、逆に言うと部屋を借りたり家を買ったりするユーザーの目線は持っています。加えて、今でいうDXの経験値もあったので、ICTの知識を注入しながら、自分たちが儲かるためよりもお客様に評価していただくために、旧態然とした不動産屋を脱して不動産業をやろうと創業したのがホットハウスです。

――既に成功を収められていたにも関わらず、チャレンジや変化を余儀なくされる不動産業界に身を置かれた原動力はどこにあったのでしょうか。

田嶋会長:20代前半の体験に遡るのですが、中学校からの仲間の1人が24歳で仕事中に頚椎を損傷する大怪我を負いました。最終的には助かりましたが、集中治療室にいる彼のお見舞いに行った時に、「自分だって明日こうなる可能性はゼロではない」と、自分は何をすべきかを初めて強く自問自答しました。

何をもって生きた軌跡とするか、社会の一員としてすべきことは何かを深く考えた結果、子供の頃からそばにいた仲間達のような存在を社会につくりたいなと思いました。となると、社会におけるコミュニティをつくらなければならないと考え、会社をつくろうと思い至ったのです。30歳までに会社を起こして、賛同してくれる仲間をどんどん乗せて、一緒にアドベンチャーを体験することから始めようと。役に立ちたかった気持ちもありますし、原動力として一番大きいのは承認欲求かもしれません。

未来に向けて、利益はとにかくICTへの投資に

――ゼロから短期間で賃貸仲介、不動産賃貸管理、売買の3本柱を現在の規模まで成長させられていますが、さまざまなご判断による転機があったと思います。この12年を振り返って、会社を成長させる上で意識されていた点を教えてください。

田嶋会長:創業時からお話しますと、金澤と山田(現:株式会社ホットハウス専務取締役兼賃貸事業部 部長)と最初に約束したのは、我々が引退した後も存続する会社をつくるという大前提です。最初の基盤がしっかりしていないと長くは続かないので、初期の頃に一番意識したのは、多くの時間を創業メンバーと過ごし、夢や将来像を語ることでした。次のフェーズで人が入ってきた時に、創業メンバーの誰に聞いてもほぼ同じ回答が返ってくる状態をつくりたくて、売上よりも自分達の向いている方向が1ミリたりともずれていないことが大事だと伝えていましたね。毎日仕事が終わったら食事を共にし、一緒に夢を復習する。それが創業時に意識したことです。

次に必要になってくるのは仕組みです。創業時は気合と根性でなんとかしていた部分に、ICTを活用しようとしていたのが創業から3年目の頃です。会社の未来のための投資として、3期目以降からの利益はとにかくICTへの投資に回していました。また、賃貸仲介の部門に関しては業界出身者を入れないという方針を採っていて、創業3年目で新卒採用を始め、教育にも投資していきました。

――中盤までのお話の中でお伺いしたいのですが、事業を走らせながら基盤をつくっていく時に、田嶋会長、金澤さん、山田さんの3人は具体的にどのような役割分担だったのでしょうか。

田嶋会長: 会社をどう大きくしていくかという戦略は、すでに経営者として経験があり外部とコミュニケーションの多い私がある程度プランを描いて、金澤・山田の2人には、それを軸にしながら不動産業のプロとして事業を執行する、現場に近いプレイングマネージャーになってくれるようにお願いしました。

大前提として、ホットハウスは現在12年目を迎えていますが、決して私の力だけで成長している会社ではありません。創業時に不動産管理業界としては異例のスキームだった、私の描いたある種異次元の戦略で、金澤と山田、他の主要幹部がプレイングマネージャーとして事業を執行してくれていたことが大きくて。さらに、私の経営者としてのアドバイスやユーザー目線をうまく掛け合わせたことで、現在のホットハウスがあります。行ったことのない場所にたどり着こうとした時にナビゲーションだけがあっても車がないとダメですし、馬力のある車だけあってナビゲーションがなく道に迷っていたら目的地には付けない。そんなナビゲーションと車の様な絶妙な関係性が、私と金澤・山田の間にはあったと思います。

会社をスケールさせる為の一つの役割(職種)として、それぞれが会長・社長・専務となっていますが、役割分担であって地位の話ではないと思っています。私は主に戦略戦術を担当しますが、これも時代とともに私以外に適任者がいればどんどん継承して、企業の存続寿命を延ばしていきたいと考えています。
TikiTokを触ったことのない私はすでに古い人間で、その私が戦略を描くことは賢明ではないかもしれません(笑)。

また、ホットハウスでは、売買でどんなに稼いでも評価しないという基本指針を貫いています。評価しないということは、その部門に人を増やさないということです。ホットハウスは創業以来、金澤と山田しか売買に携わっていませんし、売買に関する成功は彼らの評価の対象に入りません。どんなに大きいディールをまとめてきても、それはホットハウスの未来のための軍資金に変わるだけなのです。売買で売上をつくるのではなく、売買をいつかやめてもスケールし続ける不動産管理会社にしたいと思っています。

人とテクノロジーの分業をどう進めるか

――あえて目の前の果実に手を伸ばさずに、戦略戦術として管理仲介業務に注力するご判断をされたのですね。中盤戦を経て、管理戸数が増え、道内でも零細から中堅~大企業に成長された後半は、どのようなことを意識されてきたのでしょうか。

田嶋会長:後半は、世の中の流れもあり、採用に苦戦し始めた時期でした。新卒採用を腐心してきましたが、私達の生きた時代の教育やモチベーションの上げ方は、今の若い子達には一切通用しません。採用の壁にぶち当たったことで、人のパワープレイで会社を大きくする様な、私が社会人になった平成前半時代の組織のつくり方や在り方は機能しないという結論に至りました。一方で、夢に向かう速度は諦めたくないので、それならば半分は人で、人でなくともいい部分はテクノロジーを使うことにし、具体的にどう進めるかを考えることが、後半で意識していたポイントです。

社会全体が直面している採用における難しさは、コロナ後も抜本的に解決されていません。そもそも働く人が少ないですし、働いてもらう方法を経営層がいかに彼らに合わせられるかが鍵になってきます。彼らに合わせるという事は、未来に合わせていくということで、サービス展開も含めて次世代型になっていきます。一方で、時にはパワープレイも必要で、完全にオートメーション化してはいけない部分もあるので、どこからどこまでをテクノロジーで代替すべきかを、幹部と分析して悩みながらやってきたのが後半戦ですね。

――なるほど。地方の会社様のスケールを大きくするためのソリューションとして、都会への進出は成長する上で一つの選択肢になるケースが多いように感じます。田嶋会長のように、地域にフォーカスし、売買にも手を出さず、管理に絞るという戦略を貫くのは並大抵のことではないと思いますが、葛藤はなかったのでしょうか。

田嶋会長:葛藤はあまりないですね。というのも、地域で3本の指にも入らないうちに都会に出ていけば叩きのめされるだろうと思っていたので、外に出て商売を拡大することは一切考えていませんでした。札幌は約200万人の人口がいるので、他の地方都市に比べてマーケットが恵まれた点もあるかもしれませんが、まずここで3本の指に入って、3本の指に入る為に使った武器や工夫を持って他の地域に出ていかないと。瞬間的なラッキーパンチはあるかもしれませんが、それでは再現性がないですし、長続きしないでしょう。ですから、まず地域できっちり根付くことを目指します。そもそもニューノーマル時代では、攻めたいマーケットエリアにリアルに進出するという概念自体がなくなるかもしれませんね。

後編へ続く

撮影協力:the Fourth Place

インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

株式会社ホットハウス

本社所在地 札幌市中央区南8条西4丁目422番地5号 グランドパークビル3階
取締役会長兼CSO 田嶋 祐介
代表取締役社長 金澤 寿治
主な事業内容
不動産の売買・賃貸・仲介及び販売代理業務
アパート、マンション、駐車場並びに貸ビルの経営、管理及びメンテナンス業
一般建築工事の設計、施工及び管理
建築、建物設備のリフォーム工事の設計、施工及びコンサルタント業務
各種損害保険及び小額短期保険代理店業務
全各号に付帯する一切の業務

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社ホットハウス 榮(さかえ)
Mail:sakae@e-hothouse.jp

WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com

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