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2021.03.01

特別対談企画(前編)明和住販流通センター塩見氏に聞く、不動産管理業界への思いと賃貸不動産経営管理士制度誕生のストーリー

「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第5回は、昨年より日本賃貸住宅管理協会会長に就任された、株式会社明和住販流通センター代表取締役の塩見紀昭氏にお話を伺いました。
前編では、塩見氏の生い立ちから不動産業界に入られたきっかけ、管理会社として独立された経緯、不動産業界におけるデジタル化の課題についてお聞きしました。(前編/全2回)

ゲストプロフィール

株式会社明和住販流通センター 代表取締役 塩見 紀昭氏
東京都渋谷区出身。マンションデペロッパーに営業職として入社。1987年に独立し、不動産賃貸管理・仲介に従事する傍ら、米国のプロパティマネジメント(PM)の概念に出会い、そのシステムを学ぶ。米国最大の賃貸管理業団体IREM(Institute of Real Estate Management:全米不動産管理業協会)が認定するCPM(Certified Property Manager:公認不動産管理士)を日本で初めて取得。2020 年9月から公益社団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)の会長も務める。趣味は仕事に加え、絵画鑑賞と美味しいお店の探求。

目次

高校生の時に遭った大事故が人生の転換

――まずは塩見代表ご自身についてお聞かせください。業界で知らない人はいない塩見代表ですが、今回は過去やお人柄にも迫らせていただきたいと思っています。

塩見代表:生まれは渋谷区の神宮前で、小中高時代は代々木上原に住んでいました。父が画家でずっと借家住まいでしたので、賃貸不動産の世界に入るルーツになっているかもしれませんね。この頃の人生の転換期は、高校生の時に遭った大事故です。買ってもらったばかりのホンダのバイクに、通学には使わないという父との約束を破って、保険すら適用される前に二人乗りして学校に向かっていた途中、トレーラーに挟まれて右腕の骨が飛び出るまでの大怪我を負いました。

運ばれた救急病院の医師は今すぐにでも右腕を切断すべきだと主張しましたが、飛んで来た父が医師と喧嘩までして、自分で手配した救急車で知り合いの整形外科の名医のところまで運び込んでくれ、なんとか切断を免れました。入院生活を1年送って、高校も結局1年遅れで卒業しました。病院食のお味噌汁をストローで飲んで、ワカメが詰まった経験は忘れられないです(笑)。両親は既に他界していますが、当時二人に言われたのは、神様が生かしてくれたのだからいい気になるなと。生き延びた命を人の為に使わなければと漠然と感じたことは、今でも心に残っています。

――まさに九死に一生を得た体験ですね。

塩見代表:当時はセカンドオピニオンという概念すらありませんでしたから、咄嗟の判断で病院を変えてくれた父には頭が上がらないですね。高校を無事に卒業した後は大学へは行かずに就職しようと、色々なことに挑戦しました。これには父の教育方針も少なからず絡んでいて、父は子供も二十歳を過ぎたら親と対等だと考える人でしたので、小遣いも一切渡されなくなりました。風変わりなところもありましたが、「今死んでも良い人生を送れ。自分自身も今死んでも全く悔いがない」と常々言う様な、非常にかっこいい人でした。もう一つ父からよく言われていたのは、「小さな空間でも良いから、誰も入ってこない空間をつくれ」。誰もタッチできない、自分だけの空間を持つことの重要性を教えてもらいました。

自分の道を模索する中で、ある時はコックになりたくて、代官山の小川軒出身のシェフが四ツ谷でやっている隠れ家レストランで修行していました。仕事の延長線上に趣味が生まれてくるのは昔も今も変わらず、当時は勉強も兼ねてフレンチの第一線で活躍するシェフのレストランに行くことが趣味になりつつありました。1回の食事代が1ヶ月の給与の約半分に相当する様なレストランに出掛けて、そのシェフの究極の一皿をオーダーする若造の私に、どのシェフも同業者だと気が付くとわざわざテーブルまで来てくれました。若い人を潰すのではなく、「自腹で勉強してえらい。頑張れよ」と言ってくれる。良い世界だなと思いましたね。自信があるからこそ、企業秘密と言わずにレシピもすべて教えてくれました。後述しますが、こうした学び合える世界は、まさに日管協の三好勉日管協元会長が管理業界に対して描かれていたもの。しっかりと受け継ぎ、不動産業界でも実現したいですね。

弟の勧めで料理業界から不動産業界へ


――料理業界から不動産業界へ移られたきっかけは。

塩見代表:きっかけは自慢の年子の弟です。弟は私とは真逆のタイプで、高校卒業後は迷わず不動産業界へ飛び込みました。こうした彼の実行力と継続力は今でも尊敬しています。彼が不動産を選んだ理由は明確で、端的にいうと稼げる業界だから。何か良いことや好きなことを思い立った時、挑戦を担保できる資金を持てる様に業界を選んでいました。結局弟は不動産業界の中でも一番厳しい会社を探し出して、電話営業に就きました。今でも彼は毎朝6時半に出社しますが、それはこの頃からの習慣で、そうやって毎日努力して、二十歳そこそこで最年少の課長になりました。

そんな弟と、お正月に母も誘って彼の行きつけの鮨屋に行ったときのことです。兄貴ですから「ここは払うよ」とお会計を持とうとしたら、弟が払ってくれたのですが、その時に見えた彼のお財布の中身が同年代の若者が持つ金額ではないので、びっくりしたわけです。ちょうど私は結婚を控えていて、将来進む道に迷いが生じていたこともあり、弟に不動産業について聞いてみたら色々と教えてくれた上で、「兄貴は不動産をやった方が良い」と言ってくれました。「兄貴は友人も多いし、人の世話も好きだし、不動産業に向いている」と。

なぜだかその時はとりあえず1年間はやってみようと自然と心が動いて、右も左もわからない状態で、新宿にある不動産会社の門戸を叩きました。すると、面接したその場でマンションの電話営業に回されて。名前と電話番号が並ぶ名簿に定規を当てて、定規を一行ずつ下げながら電話をかけていくんです。正直こんなことでマンションが売れるわけないと思いました。ところがですね、2,000〜3,000件かけると売れるんですよ。

――2,000〜3,000件ですか…。

塩見代表:でもつらいとも思わなかったですね。どうすればお客様に話を聞いてもらえるかを常に考えていました。コックをやっている時に、お客様の喜びを肌で感じていたことが役に立ったと思います。電話のかけ方にもコツがあって、まずはお時間を取らせてしまったことのお詫びから入るとか、話題を見つけて広げていくとか。楽しんで創意工夫を重ねるうちに、「声が良いわね」とか「あなたも大変ね」と言ってもらえる様になって、また楽しくなって(笑)。「マンション売れているの?」「いや、売れてないですね。アポも取れなくて大変ですよ」といったやり取りから、会ってもらえたこともありました。今私が頑張れるのは、その時期の地道な経験があるからだと思います。

真っ白な状態で賃貸管理の世界に

――そうした経験は糧になりますよね。不動産業のサラリーマンをしばらく続けてから、お父様が仰っていた様にご自身の城というか会社を構えたのは、どういった経緯があったのでしょうか。

塩見代表:弟が先に独立して、投資目的のワンルームマンションの売買を始めていました。ただ、売ることにかけては一流ですが、管理はできない。そこで、弟から「兄貴が管理をやってくれないか」と頼まれたのです。大きい志があったわけでもなく、突然賃貸管理の世界に入ることになりました。

これまで私自身も売買しかやってきていませんので、全くの素人。代々木のワンルームで私とパートタイマーの方と2人、真っ白な状態からスタートしました。でも逆にそれが良かったのだと思います。弟が売買する中古物件を管理していたのですが、複数ある契約書も今の様に整備されていないので、弟の会社の弁護士のところに通い詰めて何でも質問していました。一から勉強したことで、売買と比べて賃貸は業界として遅れていることも分かりましたし、未整備な賃貸の世界に矛盾を感じていました。

この時にほとんどの管理業務を自ら経験したからこそ、今の管理会社はアウトソースに頼り過ぎている様に思います。何もかもが便利になった結果、我々の実力が削がれていることを危惧しています。また、当時から問題視しているのは、管理会社は結局滞納や問題を起こす入居者の為に大切な経費を使って動いていて、逆に適切に住んでくださっている優良入居者に対してはほぼ何もしていないという矛盾です。本来は良い人に良いサービスを提供するべきで、我々が使っているすべての経費が入居者の家賃、サブリースの差額や更新料から支払われていることを、原点として絶対に忘れてはいけないと思っています。

デジタル化の推進に必要とされているのは「つなぎの部分」

――他業界に比べると、不動産業界はデジタル化が遅れている側面もあるかと思います。塩見代表は日管協の会長としてもデジタル化を推進されていらっしゃいますが、賃貸管理業界全体としての今の流れをどの様に見ていらっしゃいますか。

塩見代表:一言でいうとカオスで、まさに変革期を迎えています。経営陣はデジタル化の必要性を認識していますし、取り残されるという危機感も共有していますが、何をどうしたら良いのかが分からないという状況です。デジタル化に向けた商品やサービスも世の中に用意されていますが、それらを自社にどう導入・活用すべきか、そうしたつなぎの部分が欠けていると言えます。

また、賃貸管理ソフトの導入に億単位の資金を投じてもうまくいかなかったという例も聞きます。私たち管理業にとっては、億というのは何万室を何年も管理してようやく到達できる額です。そうした残念な結果に終わってしまうということは、商品の提供側と管理会社の信頼関係がまだ築けていないということなのでしょう。個々の企業のITリテラシーも幅がありますので、良い商品をニーズのある場所に最適化した形で届ける仕組みをつくることが、今後ますます重要視されると思います。

――商品やシステムを開発・供給する側もすべての業務に精通しているわけではないので、ある領域ではソリューションとして機能しているものが別の領域で必ずしも機能しないという問題はありますよね。確かに「つなぎの部分」は非常に重要な視点だと思います。

以下、後編につづく

インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

株式会社明和住販流通センター

代表取締役社長:塩見紀昭
本社所在地:東京都世田谷区若林3-4-11第7明和ビル
事業内容:賃貸物件管理事業
賃貸仲介事業
売買仲介事業
相続コンサルティング事業
マンスリー事業
損害保険代理業

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社明和住販流通センター
Mail:info@meiwa-g.co.jp

WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com

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