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2021.06.11

特別対談企画(後編)ニッショー加治佐氏に聞く、キャリアチェンジの過去と地域に根差した不動産管理会社の変遷そして未来


「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第9回は、東海地区の賃貸住宅管理および仲介の“第一人者”として、地域に貢献できる価値づくりを進める、株式会社ニッショー常務取締役 加治佐弘氏にお話を伺いました。
後編では、今後の事業承継に向けた想い、管理部門の人材の定着に向けた工夫、ニッショーグループのこれからの目標についてお聞きしました。(後編/全2回)
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ゲストプロフィール

株式会社ニッショー 常務取締役 加治佐 弘氏
愛知県稲沢市出身。高校卒業後、自分の腕一つで自立したいと清掃業者に就職。2001年、26歳で清掃会社を立ち上げ、独立。2010年に父が社長を務めるニッショーグループへ入社。趣味はゴルフ、渓流釣り、犬の散歩。最近はサウナや料理(特に酒の肴)にも熱中。

目次

会社を受け継ぐのではなく、人を受け継ぐ

――10年を経て、これからの事業承継に向けて、どの様にお考えでしょうか。

弊社は完全なるサービス業であり、社員の力が企業の成長に繋がっています。商品は社員、技術は社員の姿勢やスキルですから、彼らが働きやすい環境やモチベーションが上がる仕組みをつくっていくことがこれからの私の仕事だと考えています。事業承継とは、会社を受け継ぐのではなく、人を受け継ぐことなんですよね。社員からも次の社長として認めてもらう必要があり、色々な人のサポートを受けながら、なんとかやってきている状況です。
弊社には長く勤めてくれている社員も多くおり、定年退職を迎える時には「ニッショーで働いて良かった」と、社員本人が思うのみならず、社員の家族からも言ってもらえる組織を目指しています。定年でなくとも、不動産会社や事業会社といった家業を継ぐ前に弊社に勤めている者も多いので、彼らにも「ニッショーで成長できた」、「ニッショーで学んだ」と思ってほしいですし、ニッショー時代の経験を次の場に活かしてほしいですね。50年近くかけて醸成してきた「ニッショーらしさ」を、今の時代に合わせて今後もつくっていきたいと思っています。

社員の一番のモチベーションはお客様からの感謝


――御社は新卒から長く働き続けていらっしゃる方も非常に多いですよね。管理に話を絞ると、管理業はどうしても日常的にクレームを受けるといった、苦しくて厳しい側面もありますので、人材の定着に苦しんでいらっしゃる管理会社様も多いと思います。御社が人材の定着において工夫なさっているポイントを教えていただけますでしょうか。

管理課から管理部、管理事業部へと組織も大きくなり、今では新卒から勤めている社員が部長やブロック長といった幹部に育ち、人材の育成や定着も進んできました。おっしゃる通り、管理業はクレームやリクエストの対応、入居者様とオーナー様の間の調整が仕事の中心。入居者様の意見とオーナー様のお考えは異なることが多いですから、苦労は絶えないと思いますが、管理部門の社員はそこをまとめる喜びを知っているからこそ、続けられるんですよね。最終的に入居者様とオーナー様に感謝していただけることを生きがいにして働いてくれています。その意味では、お客様からの感謝の言葉、それによる達成感を組織で共有できる体制にすることもポイントかもしれません。弊社では30年以上前からお客様アンケートを実施しており、お客様の声が直接社員に届く様にしています。売上や給料はもちろん大事ですが、人の役に立ったと感じられることは、人間にとってはやはり大事。お客様からの感謝は社員の一番のモチベーションになります。
とはいえ、まだまだ外から見ると「お部屋探しのニッショー」というイメージが強いので、新卒で入社してくれた社員に希望の部署を聞くと、返答の9割は仲介ですね。賃貸不動産経営管理士が国家資格になったので、これから賃貸住宅管理という概念がもっと一般化することで、管理を希望する社員が増えていくことを期待しています。仲介希望の新入社員が管理に配属されることもありますが、入社して半年経つ頃には、管理業務の楽しみを現場で体感して、生き生きとした顔をしています。入社時点では「不動産=仲介」と思っていても、実際に働いてみると不動産業界には様々な業務があって、それぞれが支え合って業界が成立しているという事実を知って、管理業で成長していく社員も多いですね。
弊社は仲介と管理の両輪で事業を営んでおりますが、かなり昔は部門間に軋轢があったと聞いています。そこで、両部門の幹部社員を集める会議や機会をつくるなど、社内の融和といいますか、部門間の溝をなくす努力もしてきました。社員が自分の所属する部門にも社内の他の部門にも誇りを持てる組織づくりも大事だと思います。

増やすべきは管理戸数よりも、ニッショーのファン


――なるほど。現場で、組織内で、管理の楽しみや誇りを見出していける体制になっているということですよね。コロナ禍やデジタル化に伴い、マネジメント体制の変化はありましたでしょうか。

弊社は店舗を運営していますし、管理は特に現場に出向かないと分からないことも多くあるので、どうしても完全なデジタル化は難しいところがありますね。仲介では来店よりもオンラインを希望されるお客様もいらっしゃるので、オンラインのやり取りでも来店時と情報の提供量が変わらない様に、ネット上の説明に加えて電話でもフォローさせていただくなど、工夫しています。人と人とのコミュニケーションを大事にするという会社の原則に沿いながら、お客様が望まれる形でサービスを提供する為に知恵を絞っているところです。
趨勢の変化への対応という意味では、「アパートニュース」を休刊したタイミングで、「アパートニュース出版株式会社」を「株式会社ニッショーjp」と社名変更し、「ニッショー.jp」という自社ホームページの制作・コンテンツマーケティングの会社に再編成しましたが、大手ポータルサイトと比肩する反響数と60%に迫る反響来店率の実現など、“地域密着型物件検索サイト”として、ようやく東海地区のお客様のお役に立てる様になりました。コロナ禍においては、このポータルサイト構築の仕組みを流用してオンライン接客のシステムなども短期間で自社開発することができ、時代の流れにもなんとか追いつく様に努力している最中です。

――管理戸数や拡大エリアに関して、今後チャレンジされたいことやご方針を教えてください。

1年でも2年でも早く10万戸を達成したいとは思いますが、弊社は堅実をモットーにしていますし、単純に管理戸数を増やすというよりも、オーナー様や入居者様の中で弊社のファンを増やすことが一番大事だと考えています。数字ばかりを追いかけて一気に管理戸数を増やしても、社員が回せずにオーバーワークになってしまったら何の意味もありませんので、社員の成長と管理戸数の数は比例させたいですね。お客様に選んでいただける仕組みづくりやブランディングにも注力して、「ニッショーに任せておけば安心」と言っていただける様にしたいのです。
今のところは、東海地区外への進出は考えていません。まだまだこのエリアでできることがたくさんありますし、ニッショーのカラーを維持することが大事だと思っています。特に当社は管理物件の99%以上が自社付けですので、自分たちで責任を持てる範囲で商売をすることにこだわっています。競争の激しいエリアに進出すれば、そのエリアのやり方がありますし、これまでの弊社の堅実なやり方で仕事を取れないかもしれません。そこを変えてしまうと、何の為にやっているのか分からなくなってしまいますよね。もし今のオーナー様や社員の為になるのであれば、エリア外の進出も考えたいと思いますが、今はまずはこの東海エリアを守っていくことが大事だと考えています。

――本日はありがとうございました。

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インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

株式会社ニッショー

代表取締役:加治佐 健二
本社所在地:名古屋市北区城見通2丁目10番地1
事業内容:宅地建物取引業として主にアパート、コーポ、マンション、貸家、貸店舗、貸事務所の仲介業務、及びこれに関わる一切の業務。宅地建物の総合管理業務、退去立合業務、営繕業務。入居者募集に関して、ニッショー.jpその他各種広告取扱業。損害保険代理業務。

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社ニッショー 営業企画課
電話番号: 052-912-1001
Mail:b10011@nissho-apn.co.jp

WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com

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