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2022.10.14

特別対談企画(後編)会社員時代の賃貸営業の経験が、エンドユーザーを軸にビジネスを展開する発想の原点に


「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第17回は、北海道札幌市で企画・設計、施工、内装、管理まで、包括的な不動産サービスを提供する株式会社ナインホールディングス 代表取締役 高橋宏弥氏にお話を伺いました。
後編では、ナインホールディングス様のDXの進め方、100名超の社員との関係性をつくるための工夫、不動産管理業界の変革についてお話しいただきました。DXについては、株式会社ファクター・ナインサービス 取締役営業部長 村本修氏にもご登場いただき、実例を語っていただきました。(後編/全2回)

ゲストプロフィール

株式会社ナインホールディングス 代表取締役 高橋宏弥氏
北海道出身。札幌地場の不動産会社での勤務を経て、より魅力的な物件の企画開発・販売を目的に、2001年に株式会社ファクター・ナインを立ち上げる。創業から20年目の2021年、ファクター・ナインをはじめとする事業会社5社による総合不動産事業を展開するべく、持株会社として株式会社ナインホールディングスを設立。顧客視点に立った包括的な不動産サービスの迅速な提供を目指す。趣味は、ゴルフ、麻雀、競馬、旅行、赤ワイン。大切にしていることは、期待を裏切らないこと。最近、『ゼビウス』のハイスコアを更新することにはまっている。

目次

社内の業務の中に滞りや負荷がある部分をリストアップすることから開始

――後編では、グループ内のDXをリードされているファクター・ナインサービスの取締役営業部長である村本さんから、実例も交えて語っていただきます。高橋社長がDXに舵を切ることを宣言されたとはいえ、実際に現場業務をDX化していくのは相当大変だったのではないかと思います。今でこそさまざまなサービスをご活用されていますが、どのように推進してこられたかを具体的にお伺いできたら。

村本氏: 管理事業会社であるファクター・ナインサービスは、業務を担う人数も取り扱う情報もグループ内で一番多く、代表からDXの号令を受ける少し前からアナログで走り続けることの難しさは感じていました。現時点の管理戸数は約9,500戸ですが、約5,000戸までは口頭やメモによる情報共有が行われており、オーナー様と担当者のコミュニケーションもスムーズとは言えない状況だったんです。そうした現実的な課題がありましたので、まずは我々がDXを率先して実践し、グループ内に情報を共有していくことになったのです。

担当者としてアサインされた私自身がDXの言葉の意味も取り組み方もわからない状態でしたが、まずは社内の業務の中で何をマンパワーでこなしているのか、どの部分に滞りや負荷があるのかをリストアップすることから始めました。そもそも弊社の業務やデータベースにフィットするか、DXの号令後に防犯・コンプライアンスの観点から採用を決めた社内の基幹システムと連携性があるかを踏まえながら、どんなツールやシステムを導入したらよいかをベンダーに相談して、一つ一つ選定して、最終的に手間のかからない形になるように組み合わせていきました。

DXでホールディングス全体に横串を通し、事業の拡大に貢献したい

―――非常に丁寧に進められてきたのですね。最初に取り組まれた業務の実情の可視化はかなり難しかったのではないでしょうか。

村本氏:それまではマニュアルすらない状態で、スキルや知識も属人化しているところがあったので、各部署の社員にヒアリングを行い、何が効率性を妨げているのかを客観的に整理していきました。また、お付き合いのある他の管理会社様に伺い、担当者の方に過去の事例を教えてもらったりもしました。そこから最終的な導入の判断をベンダーと行い、導入後に実際に楽になったかを社員に再度ヒアリングし、その結果をまた反映させるという地道なコミュニケーションの繰り返しでしたね。知識がゼロからのスタートでしたが、このままではオーナー様の満足度を維持できないことは自明でしたし、札幌における率先的なDXの導入が我々の強みになることがモチベーションになっていました。

――高橋社長自らが強い意志で決断されたDXが、現場で検証と実践を積み重ねながら進められていることがよく理解できました。これから村本さん、そして高橋社長がDXを通じてチャレンジしたいことについても教えてください。

村本氏:道半ばではありますが、管理のみならずホールディングス全体のDXを通じて、横串組織にしていくことで、事業の拡大に貢献できたらと思っています。事業会社同士が横断的に連携できている組織の方が、お客様にメリットをお届けできますよね。

また、お客様に対して弊社が導入したシステムを押しつけることなく、あくまでも使っていただくことのメリットを丁寧に訴求した結果として、弊社の業務が圧縮できることを目指したいと考えています。

高橋氏:村本をはじめとする幹部や社員のおかげでようやくシステムが導入され、走り出したところですが、紆余曲折もありながら楽しみながら進めてもらっています。これから磨きをかけて、不動産業界のDXを活性化させていくプレーヤーの一社になっていきたいですね。

最終面接にはすべて同席。会社の軸となる考えを社長自らが語る機会をつくる

――まずは背中を見せて、方法論を確立してもらい、成功体験を積んでもらうという高橋社長の前職時代のマネジメントスタイルが、DXの推進にも健在していましたね。現在は事業会社が5社になり、社員数も100名を超えていますが、社員との接点はどのようにつくっていらっしゃるのでしょうか。

高橋氏:実は、DXの号令を出した際には当然賛否両論があり、反対する役員とは一対一で話す機会をつくり、それでも賛同してもらえない場合は、組織を去ってもらうという決断をしたことがありました。会社の未来のためとはいえ、元々はご縁があって入社していただいたのですから、私にとっても非常に苦しい決断となりました。だからこそ、これから入社してくれる従業員の最終面接には、雇用形態や職種を問わず立ち合おうと心に決めました。会社の軸となる考えを私自らが語る機会をもらうと同時に、理解した上で入社を決めてもらいたいという気持ちからです。組織がさらに大きくなれば難しいかもしれませんが、今のところは続けられています。

最終面接だけでも立ち合えることは、私にとっても会社にとっても収穫が大きいんですよね。例えば、転職組には前職から移りたい理由を聞くのですが、履歴書や建前では表現しきれなかった生の想いを知ることができます。採用後の働き方にも反映できますし、社員とも接しやすくなるのはメリットですね。

――社員の方からしても社長と入社前に会える機会があるのはうれしいですよね。
すべての事業会社の社長も務められており、多忙かつプレッシャーのある日々において、リラックス方法などはありますか。

高橋氏:実は会社の自分とプライベートの自分を切り替えるスイッチはなく、ずっとこのキャラクターですね。これまでの20年間、変化に尽きなかったおかげで、仕事を楽しめているんです。デジタルの仕組みもそうした変化の一つで、まるで別の業種の仕事をしているかのように感じられ、ストレスがありません。もちろん苦労はありますが、それ以上に楽しさが勝っています。

頑張れば評価される仕組みをつくることが、管理業界を変えていく一歩になる

――苦労やリスクを伴いながらも変化を楽しむことができる高橋社長だからこそ、今のナインホールディングス様があるのだと思います。最後に、不動産管理業界へのメッセージをいただけますでしょうか。

高橋氏:「日の目を浴びない」と表現される管理事業にどのように日の目を当てていくかは、トップの課題でもあると思います。我々の管理会社の採用面接でも、転職組は「頑張っても評価されてこなかった」ということをよく口にします。大切なのは評価なんですよね。トップは管理業界がクレーム産業となっている現状を理解し、仕事を適切に評価し、本人に感謝を直に伝えることが大事です。それだけで、管理業界にいる人間のマインドは変わると思います。

管理事業は時にクレームも受けますが、オーナー様の資産の構築にコンシェルジュのように携わる仕事でもあります。弊社では管理事業を細分化し、「オーナーコンシェルジュ」という役割を可視化させたことで、不動産を管理するだけではなく、お客様の重要な資産に関するご提案も目指していく意識が浸透してきました。そのように管理業務の意義を言語化し、しっかりと評価する仕組みをつくることが、管理業界を変えていく一歩になるのではないでしょうか。

――本人に直に評価や感謝を伝える文化をつくることは、業界の変革に向けた一つの解ですね。仲介営業、開発から管理まで携われた高橋社長の言葉だからこそ、胸に響きます。本日はありがとうございました。

前編はこちら

インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

株式会社ナインホールディングス

代表取締役 高橋宏弥
札幌市中央区南2条西25丁目1-2 factor9ビル
会社ホームページ: https://www.9hd.co.jp/

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社ナインホールディングス
Contact: https://www.9hd.co.jp/form/contact_input.html

WealthPark株式会社 広報担当
Mail: pr@wealth-park.com

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