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2023.02.16

特別対談企画(後編)「このまちのために、私たちは何を残せるのか?」平田不動産代表が見据える空き家問題とその未来


「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第19回は、福井県小浜市で地域密着系の不動産管理業を展開する株式会社平田不動産 代表取締役社長 平田氏にお話を伺いました。後編では、空き家問題、経営者に必要な素質、次世代へのバトン継承などについてお話しいただきました。(後編/全2回)

ゲストプロフィール

株式会社平田不動産 代表取締役社長 平田 稔氏
福井県小浜市生まれ。京都府の美術学校を卒業した後、石川県金沢市に本社を構える不動産会社へ入社。賃貸仲介として金沢駅前店に配属され、日夜顧客対応に勤しむ。小松店で仲介はじめ管理業務を経験した後、2006年5月に平田不動産へ入社。2018年10月に代表取締役社長に就任し、平田不動産二代目社長となる。趣味は日光浴。夏には高浜町の海辺で、息子と真っ黒に日焼けするまで遊びまわる。

目次

所有者に放置され続けた空き家はおばけになる

――空き家問題について、詳しく教えてください。

平田:空き家には「まっくろくろすけ」がいます(笑)家財を処分し、修繕を行い、風を通すことで、空き家は資産になります。
また、空き家はオバケとも言えます。相続人が供養(人が共に養う)しなければ、空き家は無責任化し、オバケのまま放置されてしまいます。

居住用不動産は高額です。全世界の資産の48%が不動産で、その3分の2が居住用不動産と言われています。高額であるため、転勤や子の独立などのライフスタイルが変化しても、長期間に渡り不動産を所有しなければいけません。所有権とは、使用・収益・処分ができる権利。使用もせず、賃収益化せず、売却しなければ、あっという間に時間が経ってしまいます。マイホームは、空き家になる仕組みがあるということです。

――平田不動産にも空き家に関する情報や相談は届きますか?

平田:はい、さまざまな相談がよく寄せられます。小浜市の空き家率は約20%前後ですが、空き家所有者20人のうち1人は、空き家をどうにかしたいと考え、我々の元にご相談に来てくれます。その方が、実際に商品として売買できる不動産は2件に1件。要するに、空き家が商品化されるまでには、個別事情を含む沢山の障壁がある訳です。

一等地が手に入らないのなら、自分たちでつくればいい

――平田社長自身、空き家問題についてはどのように考えていますか?

平田:物件毎に事情が異なるため、抜本的な解決策が出ていない問題です。でも、僕の中では「共有できる資産は価値がある」という考えがあります。空き家の所有と使用の分離を進めていくうえで、物件を手放す意志決定をされる人が出れば、それを活用できる人がいます。こうしたプロセスから、僕らはお客さんを見つけられますし、管理業務を通してフォローすることもできます。何より、ポイントは土地だと思っています。

――ポイントは土地というのは、どういうことでしょう。

平田:良い土地というのは、中々、手に入らないからです。以前、著名な税理士の先生から「一等地を持つ人は絶対に手放さない」と教えていただきました。所有者が土地を手放さないのなら他の人は一等地を買うことはできません。それなら、「僕らが未来に渡る一等地をこれからつくればいいんだ」と想うようになり、実現に向けて少しずつ動いております。

――えっ、一等地を自分たちでつくるのですか?

平田:はい、そうです。例えば、公園や小・中学校が近いエリアに土地を購入し、子育て世帯が住みやすいように景観や街並みを設計していきます。定期借地権を使い、建物価格だけで取得できるようにすれば、購入価格が圧縮できます。

さらには、子育てが終わったら売却する、賃貸するなど可能です。地主のセンスが良ければ、土地の価値は必ず上がるということですね。
空き地問題の方が、空き家問題よりも、企画と資金が必要なため、長期的かつ困難な事業といえます。地域の魅力を高めながら着実に進めていく、金融の手法含め、今後チャレンジしていきます。

管理に強く、数字を読める経営者がこれからは伸びる

――経営を通し、社会課題に向き合っている姿を強く感じました。小浜市のようなコンパクトシティにおいて、より自社の効果を発揮するにはどうしたら良いのでしょうか?

平田:一つは、プロジェクトをどんどん打ち出すこと。例えば、エリア課題を可決する家づくりなどを打ち出し、関わる人たちでコラボレーションしていきます。

二つは、「自分の会社に投資をする」ということ。「ふるさと投資」のようなものを作り、ステークホルダーからお金を集め、フィードバックしていく。他人事にしないまちづくりが、課題解決に繋がっていると信じています。

――経営者に求められるのはどのような素養だと思いますか?

平田:長期的な視点に立つこと。時流を把握し、変化し続けること。そして、数字に強いこと。意外ですが、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)が読めない経営者は、多くいらっしゃいます。経営の原理原則は時間をかけて学ぶべきであると思います。

――では、組織づくりにおいて大事になることは何でしょう。

平田: 一人一人の可能性を余すところなく発揮してもらうために、組織はどうあるべきか。答えが無い階段をずっと登り続けています(笑)

価値観を認められる環境が必要なのではないかと考えていますし、女性のヘルスケアなど、僕自身も自分が知り得なかったなかったことを学び、向き合うことによって人の可能性を開花させていけるのではないかとも感じています。

――平田社長がこれらを行うにあたり、日頃から意識していることがありましたら教えてください。

平田:僕が日頃から気にかけているのは、「あきらめない」ということです。もともとのんびりした性格なので、まぁいいか、としがちです。しかし、自らが貢献していくためにはそれではいけない。「心を配れているのか?」を問いかけ、関係者の目となり景色を観ていく。例えば、弊社を辞めたスタッフが「今頃元気にやっているのかな?」とか、そういう気持ちを持っているのか、問い続けています。

今を生きる僕には、次世代の小浜市に何かを残す責任がある

――ここまでのお話を伺い、平田社長は心から小浜市で暮らす人々のことを考えている様子が伝わりました。

平田:僕は賃貸管理というビジネスモデルが好きです。一方、仲介は売って終わり。例えば、物件を手放す人は責任なし、取得した人が今後の責任を持つ、これが法律の世界です。そうであれば、その場しのぎになりがちで、誰かが犠牲者になります。その点で、賃貸管理は取引が始まってからがスタートというところが大好きです。

あと、「次の世代にどうつなげていくのか?」ところに関心があります。
僕たちは今を生きるだけでは無く、未来に繫ぐ責任があります。インディアンの教えで「どんなことでも7代先のことまで考えてきめなければならない」というものがあります。事業も長期的視点に立つことが重要です。平田不動産は、曾祖父の勧めで父が創業しました。それを継いだ私も、曾孫の代の人々が、より良い暮らしをしていけるように精進努力していかないといけないと思っています。

――まさに小浜で暮らすからこその想いですね。

平田:僕は、小浜というこのエリアに生まれたことに意味があると思っています。不動産の規模ではなく、サービスの質であったり、地域への貢献であったり、そうしたことの組み合わせで小浜ならではの独自の不動産ビジネスモデルをつくっていきたいです。ここで頑張ったことが、他のエリアのケーススタディになれれば、幸せだなと考えています。ローカルが世界を変える、本気でそう考えています。

――平田社長から管理会社で働く皆様へメッセージをお願いします。

平田:管理というのは「報告」が全てだと思っています。感じたことを発するから「感謝」。私たちは、常にオーナー様の目となり、手足となり、頭脳となっていかないといけません。そのために何ができるかを常に考え、顧客以上に顧客のことを考えていくこと、それがポイントだと思っています。

また管理を行うにあたり、自分なりの立ち位置を言語化することも必要でしょう。「不動産とは何か?」「管理業とは何か?」「自分の役割は?」など、管理に携わる皆さんは自問自答しながら仕事に向き合うことで初めてお客様に貢献ができるように感じます。こうした積み重ねによって、将来何をしたいのかが見えてくるはずです。

――平田社長、ありがとうございました。

前編はこちら

インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

株式会社 平田不動産

代表取締役社長 平田稔
福井県小浜市 四谷町 9−18
会社ホームページ: https://www.hiratafudousan.com/

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社 平田不動産
Contact: https://www.hiratafudousan.com/inquiry/

WealthPark株式会社 広報担当
Mail: pr@wealth-park.com

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