東急住宅リース株式会社
受領請求書電子化プロジェクト
WealthParkでは「世の中の不動産体験をアップデートする」をミッションに掲げ、不動産業界のDX推進に取り組んでいます。当社のDXコンサルティングサービスでは、不動産会社が直面する経営・事業課題に対し、戦略立案から実行まで一気通貫で伴走。テクノロジーと業界知見の両面から、クライアントの変革を支援しています。
不動産管理業務では、請求書をはじめ日々多種多様な書類が行き交います。なかでも受領請求書は、工事・修繕、オーナー対応、会計処理など多岐にわたる業務の結節点となる重要情報でありながら、部門ごとの運用差や紙・手作業の残存により、全社最適が進みにくい領域のひとつです。では、この難題にどう切り込めばよいのかーー。今回は、当社DXコンサルティングサービスをご利用いただいている、東急住宅リース株式会社の田中様・下平様・神原様に、受領請求書電子化プロジェクトの立ち上げ背景から推進上の苦労、当社サービスへの率直な評価、そして今後の展望までを伺いました。

ゲストプロフィール
東急住宅リース株式会社 DX推進部 DX推進グループ スペシャリスト 田中伸子様
2018年中途入社。DX推進部にて当プロジェクト推進の他、テレワークプロジェクトの推進、DX人材育成、RPA導入などを担当。東急住宅リース株式会社 財務部 経理グループ マネージャー 下平貴之様
2017年中途入社。財務部にて経理・会計業務に従事。2023年より経理グループマネジャーとして経理業務に加え、当プロジェクトを担当。東急住宅リース株式会社 賃貸会計部 PM・法人会計グループ マネージャー 神原映美様
東急コミュニティーに入社後、2015年に賃貸会計部に異動し、本部統括を経て現職。
インタビュアープロフィール
WealthPark株式会社 執行役員 DXコンサルティング事業部 事業部長 村上 朝一
コンサルティング会社、外資製薬企業、ロボット製造販売会社などを経て現職。データドリブン経営の実現、新規事業企画、顧客体験設計、業務改革、システム刷新などを支援。WealthPark株式会社 DXコンサルティング事業部 ディレクター 大西 武
アビームコンサルティング、デロイトトーマツコンサルティング、MSOLなどにて、事業企画や事業戦略、市場開拓、海外現地企業の立ち上げ・事業マネジメントなどに従事。2024年WealthPark入社後、大手賃貸管理会社の業務システム導入におけるプロジェクトマネジメント支援(PMO伴走支援)に従事WealthPark株式会社 DXコンサルティング事業部 マネージャー 渡部 志織
三井住友信託銀行株式会社にて個人向けファイナンシャルプランニング業務に従事。株式会社ライナフでは不動産管理向けIoT製品の海外の新規顧客開拓やマーケティング、PdMに従事。WealthParkでは不動産会社における業務改革の企画から実行を支援
目录
DXを加速させた外的要因
村上:本日はお忙しいなか、お時間をいただきありがとうございます。早速ですが、請求書電子化プロジェクトを始められた背景や、社内での位置付けについてお聞かせください。
田中様:請求書電子化の構想が動き始めたのは2020年頃です。直接のきっかけは、コロナ禍によるテレワーク推進でした。以前から紙のやりとりの多さに課題意識はあったものの、なかなか着手できていませんでした。コロナという外圧が、背中を押した形です。テレワークを進めようにも、不動産管理業はもともと紙帳票が多い業態です。社内に大量の紙が流通しており、在宅勤務の大きな障壁になっていました。そこで、まず社内の帳票処理全体を見直す方針が立ち上がりました。
しかし「全帳票」を対象にすると範囲が広すぎます。そこでボリュームと重要性の両面から「契約書」と「請求書」にテーマを絞り、段階的に電子化を進める方針としました。
初年度は、テレワークのルール整備やTeamsの利用マニュアル作成などからスタートしました。帳票の洗い出しに本格着手できたのは二年目のことです。プロジェクト名も「テレワーク推進」から「DX推進」へ改称され、効率化・生産性向上へとテーマが進化していきました。
村上: 最初は「テレワークの実現」という課題が起点だったのですね。当社は2023年から支援させていただいていますが、それ以前はどのような取り組みをされていましたか?
田中様:初期段階では、請求書の発行・受領それぞれの課題整理や対象業務の洗い出しに多くの時間を費やしていました。発行側は一部電子化が進んだものの、受領側は苦戦しました。背景のひとつが、取引先側の事情です。紙からデータへの切り替えを前提に仕組みを設計しても、実際には各社が独自システムで請求書を発行しており、特定プラットフォームへの一本化は想定ほど進みませんでした。そこで、紙をなくすことに固執しすぎず、OCRの活用も視野に入れながら、受領から社内処理、基幹システム連携までを含めた全体像を再設計し、プロジェクトは実行フェーズへと移行しました。そうしたなか、2024年に入り、会社として「より早く、より大きな効果を出す」方向へ大きく舵が切られました。これを機に、受領請求書電子化プロジェクトは一気に加速することになります。
最短で業務の“幹”を見極める
村上: 多数の部門を跨ぐ全社横断プロジェクトであり、経営からの期待も大きく膨らんだわけですね。プロジェクトの加速にあたり、特に意識されたポイントや直面した課題を教えてください。
田中様:すべての業務を丁寧に分解して理想形を描く、というセオリー通りの進め方では到底間に合いませんでした。だからこそ、あらゆる業務に共通する「絶対に外せない核=幹」を短期間で見極められるかが勝負でした。属人化した現場オペレーションの中から共通項を抽出し、標準化できる業務の骨格を見つけ出す。それがこのプロジェクトの本質だったと思います。難しかったのは、請求書があらゆる業務の出口に位置していたことです。物件収支に関わる請求書だけに絞っても、実質的には全社の広範な業務が対象に入ります。しかも現場では、部門ごと、場合によっては同一部門内でも担当者ごとにやり方が異なり、業務が極めて属人化していました。
神原様:部門ごとに”自分たちのやり方が正解”という認識があり、それが見事にバラバラでした。まずAs-Isの正解を見定めること自体が困難で、部門間の違いだけでなく属人化も深かったため、現状業務を紐解く作業に相当な時間を割きました。
下平様:重要かつ「やりたかったこと」だったので、これを機にやりきろうという意気込みはありました。ただ、OCRやRPA、複数の業務システムなど検討対象が多岐にわたり、自分にとっては未知の領域も多かった。この人数で本当に調整しきれるのかという不安は正直ありました。

外部パートナーに期待するのは「当事者意識」と「実行力」
村上: 現場ごとに”正解”が異なる業務を全社横断で標準化する。並大抵の苦労ではなかったと思います。外部パートナーである当社に、当時どのような役割や成果を期待されていましたか。
田中様:当社の社員と同じくらいの当事者意識を持ち、自ら手を動かしてくれること。それが一番の期待でした。上層部の説得、現場のヒアリング、ベンダーとのやりとりなど、すべてが同時並行で進むなかで、少人数の体制では到底対応しきれません。だからこそ、逐一指示しなくても自走して並走してくれる存在が必要でした。
下平様:SalesforceやOCRなど専門外のテーマが多かったので、技術的な観点を踏まえた客観的な意見や知見を提供してもらえたのは非常に助かりました。
神原様:今のやり方をそのまま残すのではなく、「業務を再設計する」という視点でアドバイスをもらえたのが大きかったです。業務側とシステム側の間に立ち、現場の実態を踏まえながら標準化の方向へ導いてくれたと感じています。
田中様:たとえば、受領請求書の管理基盤を何で構築するかという判断。スピードやコストの観点で別案もあり得るなかで、支払い情報の正確性、入力統制、将来の分析や拡張性まで見据えると、Salesforceを選ぶべきではないか。そうした判断に迷ったとき、WealthParkの渡部さんが相談相手になってくれました。AかBかで悩んでいるときに、AダッシュやBダッシュ、あるいはまったく別のCという選択肢まで含めて提案してもらえた。それは非常に大きかったです。
データが繋がって見えてきた正解
村上:実際に運用が始まった今、当時の判断を振り返ってどう感じていらっしゃいますか。
田中様:当時は難しい判断ではありましたが、すでに一部導入していたSalesforceを使うことにして良かったと思います。今後、請求書が発行されるに至った「元の業務」とデータを紐付けることを考えると、やはりSalesforceしかありませんでした。
神原様:分析軸が生まれたのも大きな収穫です。本導入後の運用が安定すれば、より精緻な分析ができるようになるイメージが湧いています。会計現場の視点でも、手入力によるミスの発見や確認がしやすくなり、今後の改善に向けた土台が整いました。
下平様:感覚的な議論を排除できるようになったことも見逃せない成果です。Salesforce上で案件や請求書情報を管理することで、支払い状況や処理の滞留、エラーの傾向などをダッシュボードで把握できるようになりました。従来は感覚で語られていた課題を、事実ベースで議論できる。「実は全体の数パーセントに過ぎない話なのか、それとも本当に深刻な問題なのか」をデータで説明できるようになったのは大きいですね。

村上:本当に難しいご判断を経てプロジェクトが進み、テストフェーズからは弊社大西も参画しました。
大西:システムとしては複数サービスが連携する構成だったため、後工程の変更が上流工程に波及する場面も多く、ウォーターフォール型でありながら一部はアジャイル的に調整し続ける必要がある、非常に難度の高いプロジェクトでした。単なるテスト担当ではなく、御社の一員として課題を解決するという姿勢を大切にしていました。
田中様:こちらが細かく説明しなくてもテスト仕様書が上がってきたのは助かりましたね。スケジュール厳守が至上命題のフェーズで、ベンダー間連携の不具合など予期せぬ問題が浮上した際も、解決に向けて粘り強く取り組んでいただきました。社内の人間でさえ、他部署の業務を「自分事」にするのは難しいものです。ましてや社外の方が当事者として手を動かしてくれた。判断の連続、時間もリソースも限られるなかで、大きな支えになりました。
下平様:部門展開の際に、説明の仕方や押さえるべきポイントをアドバイスいただけたのも助かりました。実際、ポイントを漏らしていたら現場は混乱していたと思います。
田中様:請求書業務は止められない業務です。だからこそ、受入テストではなく、全社を巻き込んだ”リハーサル”として準備を進めました。システムだけでは吸収しきれない運用ルールを現場と一緒に詰めるため、準備委員会も立ち上げています。
下平様:現場の巻き込みには苦労しました。本部長クラスを巻き込んでトップダウンで推進していただく工夫をしました。
神原様:現場の自発性を尊重する部分と、強く推進する部分のバランスは、今も試行錯誤を続けているところです。
見える化の先にある、これからの挑戦
村上:これからの展望や、変革に向けた想いをお聞かせください。
神原様:ようやくスタートラインに立ったところで、ここからが本番です。最も大きく業務が変わった部門でも「楽になった」と全員が実感できる段階まで持っていきたいと思います。
下平様:効率化の余地はまだ大きいですが、土台はできました。また、この規模でシステムと業務の両方をここまで入れ替えるプロジェクトは、当社でもおそらく初めてです。今回やりきれたことで、全社横断の業務改革をどう進めるか、その”成功モデルの原型”をつくる取り組みにもなったと感じています。
田中様:正直に言えば、本来のゴールである効率化にはまだ到達していません。ようやくゼロからイチへ、あるいはマイナスからゼロになったくらいです。「見える化」ができた今、ここからさらに各業務に踏み込んでいく必要がありますし、何が目的で、何がゴールなのかに常に立ち戻ることが大切だと思っています。振り返れば、迷ったとき、判断しきれないときほど基本に帰ることで次の一歩が見えてきた。これからもその姿勢を大事にしていきたいです。
村上:改革の道のりは続きますね。引き続き「圧倒的な当事者意識」を持ち「手を動かす」支援をさせていただきます。本日はありがとうございました。
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