2020.04.28
CEO Kawada’s Column Vol.1 | Connect Value
“生き馬の目を抜く“という形容詞に象徴されるかのように、世界中から人と資金を集め続ける都市であるニューヨーク。中でも、北米随一の市場規模を誇り、資本市場の在り方を表現し続けてきたマンハッタン。そこで今、『テクノロジー』に端を発し、様々な領域で人の生活や価値観が大きく変わろうとしている中で、『不動産』にも新しい時代が胎動しつつあります。
そして、その変化の兆しに引き寄せられるかのように、出自を問わず数多くの個人や企業が、古くて新しいアイディアと巨額な資金を背景に、過去に類を見ないスピードで、苛烈な新陳代謝を繰り返しながらも、次代のサービスと価値観を生み出すチャレンジを継続し、実を結びつつあります。
WealthPark社は、計7回に渡り本紙に寄稿をさせて頂く機会を頂いたことから、この『テクノロジー』によってもたらされる『不動産』のあり方・価値観の変化を、『Connect Value, 繋がることによって生まれる価値』、という観点から紐解くことで、その息遣いの一端をお伝えさせて頂きたいと考えております。
第1回目の寄稿として、『NYC Real Estate Tech Week 2019』の模様をお届けさせて頂きます。
冬の訪れを告げて久しい11月のニューヨーク。風光明媚なセントラルパークを終着点に、毎年恒例となっているNYマラソンの沿道の声援をかき消すかのように、街中で忙しなく開発がなされており、1部屋数十億円を下らない眺望優れたハイグレードマンション、夜を彩るクールなBar、テック企業の入居を想定した大規模ビルまで、実に多くの『WIP, 開発中』という看板を掲げた場所を見ることが出来ます。
そんな中、毎年この時期になると『不動産×テクノロジー』をテーマに、1週間に渡って『NYC Real Estate Tech Week』の冠の下、各種イベントが開催をされており、世界70か国から2,000名を超える参加者を集めることから、世界最大の『不動産テック』イベントと称されております。なお、日本からも120名(※1)を超える関係者が参加しておりました。
本取組は、Metaprop(※2)が中心となって運営し、個別に設けられたテーマに沿って大小12のイベントで構成され、参加者は、投資家やデベロッパーは勿論のこと、管理会社、銀行、ファンド、大学、スタートアップ、そして自治体に至るまで、多岐に渡っていました。そして、その中核イベントたる『MIPIM(※3) Proptech New York』は、毎年多くの関係者を集めることで知られ、本年は2日間に渡って、GoogleもNY本社を構え、不動産関連のスタートアップも多く集まるChelseaエリアにあるMetropolitan Pavilion&Altman Buildingという会場で開催されました。数々のプロダクト紹介ブース、100名を超える登壇者、そして、スタートアップコンペティション等が催され、時雨による寒さを忘れさせる熱気で包まれていました。
▼NY不動産テックウィークの様子
一般論として、米国においても、『テクノロジー』が『不動産』に果たす役割は、急速にその領域を広げ、関与の度合いを深めています。都市行政、貧困対策、都市計画、建設工期短縮、建物管理、エネルギー効率管理、IOT活用、スペースの効率的利用、空室率改善、そして、働き方の変革に至るまで、あらゆる分野に及び、『テクノロジー』の活用によって、『不動産』の生産性を高めることで収益性・効率性を高めていくという概念は、確かな潮流となっています。
一方で、とかく議論の片隅に追いやられ、おざなりになることの多いポイントとして、“結局、その『テクノロジー』、利用者は必要としているの?”、という疑問が常に頭を擡げます。そしてこの点もまた、米国においても同様の傾向にあり、供給者側の論理が優先され、多額の予算、人員と年月を投下しながらも、日の目を見ないサービス、普及に至らない取り組みが無数に存在していることが、議題として持ち上がっておりました。
他業界に比べ、地域性・個別性が強く、『俗人化』することで最適化を図ってきた『不動産』業界において続く、『カスタマイズと囲い込み』。その結果としての普及しきらない個別サービス。ジレンマを抱えながら現実と格闘する姿は、日本における業界構造の、まさに相似形と言えるものでした。
▼FifthWall(※4)のCo-founder兼Managing partnerであるBrad Greiweと、VTS(※5) のCEO 兼 Co-FounderであるNickのパネルディスカッションの様子
“分かる、その悩み。でも結局、解決難しいよね”
“どれも意外と良さそう。でも、とりあえず、まだ今のままでいいや”
“効率的にしたい。だけど、やっぱり不動産は無理だよね”
尽きない悩みと迷い、漂う諦めの中で、次回以降の連載では、米国が『テクノロジー』を通じて『不動産』にどのような変革をもたらそうとしているのかを特集して参ります。『オープンイノベーション』という、あらゆる業界で米国の成長を支え続けてきた概念が、揺り戻しを繰り返しながらも『情報の非対称性による歪み』を是正し、『知る権利』と『利便性』を提供する礎となってきました。再現性に課題を残しつつも、根底にある概念に支えらえて、『テクノロジー』が、『不動産』に何をもたらそうとしているのか、人の生活をどのように変えていくのかを、『協業』、『起業家』、『オープンネス』及び、『エコシステム』というキーワードを伴って、迫って参ります。
また、WealthPark社が考える『Connect Value, 繋がることによって生まれる価値』が、『不動産』における欠かせない概念であることも併せてお伝えして参ります。
ご意見・ご要望お待ちしております。
pr@wealth-park.com 担当:山地・近藤
執筆者:
川田 隆太 WealthPark株式会社 Founder & CEO 東京工業大学卒。日系証券会社にて投資銀行業務に従事後、女性向けアパレルECサイト運営会社にてCFO・CEOを歴任。現在は、資産管理・運用プラットフォームであるWealthPark事業を展開。東京・ニューヨーク・上海・香港に拠点を構え、11カ国で投資用不動産の管理・管理システムを提供
注釈:
1.イベント主催者からのヒアリング。登録人数ベース
2.ニューヨークを拠点とした不動産分野特化したスタートアップへの投資・支援を専業で行うベンチャーキャピタル。コロンビア大学と連携し、事業インキュベーションに向けたアクセラレータープログラムも展開
3.パリに拠点を構え、30年以上に渡ってカンヌをベースに世界各国で不動産イベントを主催するReed MIDEM社の運営イベントの名称。日本では2015年に東京・大阪で開催
4.ロサンゼルスを拠点とする世界最大の不動産分野に特化したベンチャーキャピタル。ニューヨーク、ロンドンにオフィスを構え、今後アジアでも積極的な投資をしていくことを表明している
5.REITs、私募ファンド、ファミリーオフィス並びに、金融機関等に、資産管理・コミュニケーションシステムを提供する、『ユニコーン』企業
※本稿はWealthPark株式会社による全国賃貸住宅新聞社様への連載寄稿です