2020.05.14
CEO Kawada’s Column Vol.3 | Overseas PropTech Boom & Transformation (Part 2)
前回は日米のマクロ環境について比較させていただきましたが、今回は、日米のみならず世界中でその重要性が語られて久しい「データ」について、米国の実態に触れてみたいと思います。
“米国は、MLS(*1)があるから日本と違ってデータが揃っていて羨ましい!“
“米国は、データに基づいて不動産ビジネスが出来ているのだよね!?”
不動産に関わる多くの方が、こういった言葉を色々な場面でお聞きになるのでは無いでしょうか。確かに米国は、日本に比して開示データの質・量ともに充実した環境ですが、では本当にそのデータを基に「公平」かつ「効率的」に、テクノロジーが活用されて不動産業界が成り立っているかを検証してみます。
(表.1)2019年10-12月のマンハッタンにおけるコンドミニアムの販売動向(*2)
表.1は、2019年10-12月のマンハッタンにおけるコンドミニアムの販売動向の公表値で、現地の老舗企業やソフトバンクビジョンファンドの投資先といった各社・団体から発表されているものです。表の数字をご覧いただくとよく分かるように、“同じ「データ」“から導かれたはずの数字が全く違う結果を示しており、狭いマンハッタンの中ですら、規制団体が存在してもなお、販売在庫数・成約件数についておよそ20%、面積単価に至っては30%以上の乖離が出ており、トレンドの捕捉を見誤る可能性すら秘めています。そしてこの傾向は過去の数値を確認しても同様で、
1.ポケットリスティング(日本で言うところのレインズ未登録販売・非公開物件)及び、非公開販売が横行している
2.結局、データの登録がルールに基づいてなされておらず、正確な情報は誰も把握していない
という実情を示しており、実は日本と似通った状況にあるのが実態です。不動産における「データ」の整備・活用は容易ではなく、日本同様、ここに「アイディア」と「テクノロジー」の活用と飛躍のヒントがあると言えるのではないでしょうか。
注釈:
- Multiple Listing Serviceの略。州・群・地域毎に、不動産ブローカー及び傘下のエージェントが作っている自主規制団体で、日本における「レインズ」に相当
- 各社のIR及びPR資料等より弊社作成
- NY州ではMLSの力は弱く、不動産業者はREBNY(Real Estate Board of NewYork)という独自団体に参加、独自のデータプラットフォームが運用されている
- MLSから独立し、データを独自収集しているポータルサイト。時価総額で米国最大の不動産ポータルZillowグループ傘下
- 期中の平均売買価格
執筆者:
川田 隆太 WealthPark株式会社 Founder & CEO 東京工業大学卒。日系証券会社にて投資銀行業務に従事後、女性向けアパレルECサイト運営会社にてCFO・CEOを歴任。現在は、資産管理・運用プラットフォームであるWealthPark事業を展開。東京・ニューヨーク・上海・香港に拠点を構え、11カ国で投資用不動産の管理・管理システムを提供
※本稿はWealthPark株式会社による全国賃貸住宅新聞社様への連載寄稿です