2021.08.27
特別対談企画(後編)日本エイジェント乃万氏に聞く、管理会社二代目社長の奮闘と伝えたい思い
「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第10回は、愛媛県と東京都に拠点を持ち、管理戸数14,000戸を突破する、株式会社日本エイジェント代表取締役社長 乃万春樹氏にお話を伺いました。
後編では、世界を見据えた事業展開やデジタルネイティブ世代の才能を発揮させる社内制度について、また業界に向けたメッセージをお聞きしました。(後編/全2回)
前編はこちら
ゲストプロフィール
株式会社 日本エイジェント代表取締役社長 乃万 春樹氏
大学卒業後、インテリアメーカー、東京の不動産会社に勤め、2010年日本エイジェント入社。各種プロジェクトの立ち上げ、採用、『人財』育成など組織づくりに幅広く従事。2013年に東京事業部、2017年に国際事業部を設立し、デジタルマーケティングにも注力する。「Big(巨大企業)よりGood(一流企業)」をビジョンに掲げ、常にチャレンジングな取り組みを行なっている。プライベートでは、毎月家族や社員と、時にはソロで、趣味のキャンプを楽しみ、「バーベキューインストラクター」の資格も所有する。
TOC
目指すのは「世界が思わず応援したくなる企業」
――東京での展開も実現し、デジタルを活用できる企業風土も醸成されてきた今、これから力を入れていきたい領域を教えてください。
1つ目は、愛媛のマーケットにおいて、群を抜いた存在になることです。40年に渡って賃貸管理業を行なってきたからこその基盤をさらに強化したいですね。管理戸数を伸ばすことは、弊社の至上命題であると捉えています。2つ目はDX。業務効率や一人当たりの生産性を上げ、ワークライフバランスやテレワークを推奨し、デジタルを活用した新しい働き方を提示していきたいと考えています。3つ目は、「世界が思わず応援したくなる企業」を目指すこと。例えば、「wagaya Japan」は、当初は外国人マーケットの拡大を見据えた差別化戦略であり、システムも自社内で開発してきました。しかし、取り組んでいく中で、これは他社とも手を取り合って解決すべき業界の問題であり、日本の社会問題でもあると認識が変わっていき、使命感が芽生えてきました。そこで、自分達が培ったノウハウやつくりあげたシステムを公開し、「wagaya Japan」のサービスを業界内で展開し始めました。こうしたことを地道に続けた結果として、世界の視点で日本を見た時に、この会社があるお陰で日本に来やすくなる、住みやすくなると思っていただける様な、リーディングカンパニーになれたら良いなと考えています。
――地域での圧倒的な地盤を固めて東京に進出、さらにDXでパワーを加速させていく先に見ていらっしゃるのは、世界に浸透できる会社ということなのですね。今後、外国人も遅かれ早かれ日本に戻ってくることが想定されますし、日本側の事情としても、少子高齢化で外国人を受け入れていく必要がありますよね。「wagaya Japan」で取り組みたいことや次の構想も考えていらっしゃるのでしょうか。
継続してやるべきことは、全国の不動産会社様にノウハウを提供するだけではなく、既に取り組まれている企業様に対しても、小規模での「マナビバ」という形で勉強会を開催しており、こうした取り組みをもっと強化・拡大させることですね。次の構想としては、外国人オーナー様や外国人投資家様を対象とした売買や管理のサポートを提供し始めたので、この部分へも注力していきたいと思います。
こうした事業展開は今の時代だからできることで、不動産事業は地域密着型ビジネスという捉え方が大半だった20年前であれば、私も愛媛にとどまっていたかもしれません。しかし、今はどこでも仕事ができて、世界中の人と繋がれるので、やらない手はないと思うんです。愛媛は本丸としてしっかり維持していく一方、世界から見た日本の窓口である東京でも勝負し、世界に発信していきたい。もしかしたら20歳の頃に留学したことや、その時に感じていた世界への憧れも、私のこうした発想に影響しているのかなと思います。
本質的な合理性は一見非合理な戦略の中にある
――なるほど。非常にロジカルな戦略の中に、乃万社長の原体験や熱い想いが垣間見られるところが面白いですね。
実は、私は経験欲が人一倍強く、知識よりも経験を大事にしています。まずは自分で挑戦して、その体験を自分の口で熱を込めて話すことで、初めてそれが物語になり、他人に対しても説得力を持つのではないかと考えています。持論ですが、二代目は自分で経験してきていない分、理論でカバーしようとし、結果的に経験を軽視しがちなところがあるかもしれません。でも理論に傾けば傾く程、人はついてきてくれないんですよね。
理論で固めた合理性はその時の耳心地は良いかもしれませんが、一見非合理な戦略の中に本質的な合理性があることも多いと思います。弊社の「レスQセンター」なんて、一般的な視点からすると非合理の極みですよね。入居者のクレームの対応を外注することなく、自社のスタッフで人件費をかけて対応しています。ただ、このサービスも長期的スパンで見ると弊社にとっては合理的なのです。例えば、夜中に女性のお客様から「ドアノブにカマキリが止まっていて、部屋に入れない。」というお電話を受け、「レスQセンター」のスタッフが家まで伺ったことがあります。これは象徴的なストーリーで、管理会社のあるべき姿としてお客様の記憶に残り、次の物件を選ぶときも弊社が管理しているものを選んでくださる可能性が高くなります。その場ではお金にならない作業かもしれませんが、一つのブランディングになるのです。
ただ、ここで重要なのは、アナログとデジタルのバランスです。心の通い合いを大切にされたいお客様もいらっしゃる一方で、自分で解決できる方が楽だと感じられるお客様もいらっしゃいます。そうしたお客様には、入居者専用アプリを提供し、自動応答で自己解決できる仕組みも取り揃えています。
――確かに人が生活を完全に自動化したいのかというと、そうではないんですよね。人間らしさを守りながら、テクノロジーを使って暮らし方や働き方をより良くすることに真摯に向き合っていらっしゃる乃万社長の想いが伝わってきました。少し先の話になりますが、次の5年、10年、そして事業承継に向けて、どの様にお考えになっているかも伺いたいです。
次の事業承継を考えるには、私自身がまだ社長に成り立ての状態ですが(笑)、これから30年、70歳を迎えるまでは社長として最前線でやっていきたいと思います。同時に、将来の幹部候補の育成といった、『人財』育成や教育にも力を入れています。権限移譲も積極的に行なっており、私が社長に就任するタイミングで、私のこれまでの仕事の一部を部下に任せてみたのですが、私よりうまく進めてくれることも多くて。まずは自由に任せてみるというスタンスにしています。
新しいことに挑戦できる人達を歓迎したい
――幹部候補の育成に加え、常に先進的な取り組みにチャレンジされている御社では、新しい世代への教育や制度も充実されているのではないでしょうか。例えば、地元の大学を卒業して御社に入社される新入社員の方々は、デジタルネイティブ世代ですが、彼らに対して会社としてどの様なビジョンや方向性を示されているのでしょうか。
チャレンジしたい業務に自ら手を挙げることができる「キャリアチェンジ制度」を導入しており、一人一人の社員が自分で自分のキャリアをデザインすることを支援しています。その上で、今期はデジタルやSNSを活用したプロモーションを担当するデジタル戦略室やDX推進チーム、デジタルマーケティング室を立ち上げ、デジタルネイティブの新しい感性を活かしてもらえる機会をつくりました。彼らがプロジェクトチームの中心になって働けるチームもありますので、こうした場で活躍してもらうことを期待しています。また、せっかく東京にも拠点がありますので、「Tokyo 2years Challenge制度」をつくり、希望者は東京で2年間勝負ができる様にしています。うまくいかなければ愛媛に戻っても良いし、気に入れば東京事業部での勤務を更新することもでき、地元愛を持ちながら東京でも挑戦してみたいという若手の想いを汲み取れる仕組みになっていると思います。
――それは素晴らしいですね。最後に、御社の160名の従業員の方々、また賃貸管理業務に従事されている方々へのメッセージをいただけたらと思います。
管理会社は今後の10年で二極化し、デジタル化を積極的に取り入れて先に進んでいく会社と、現状に固執して変化を恐れている会社に別れていくと考えています。弊社は新しいことに挑戦できる人達を歓迎しますし、業界全体も変わっていく必要があります。もちろん一社の力だけで業界を変革することはできません。だからこそ、色々な会社が手を取り合いながら、ノウハウを共有できる業界にしないといけないと思います。
インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太
株式会社日本エイジェント
代表取締役社長:乃万 春樹
本社所在地:愛媛県松山市湊町1丁目2番地
会社ホームページ:https://www.nihon-agent.co.jp/
レスQセンター:https://www.resqcenter.com/
wagaya Japan:https://wagaya-japan.com/jp/
<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社日本エイジェント
電話番号: 089-921-1567
WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com