2021.09.17
特別対談企画(前編)明光トレーディング松木氏に聞く、独立からの歩みと DX の先に見据える不動産業界の未来
「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第11回は、安心の賃貸管理で30年以上にわたりお客様の資産形成を支え、またYouTubeチャンネルを通じて不動産に関する情報発信を実施するなど、様々なチャレンジを実施されている、株式会社明光トレーディング 代表取締役 松木正一郎氏にお話を伺いました。
前編では、起業のきっかけ、創業からこれまでの30年の変遷、「資産運用」を前提とした事業構想についてお聞きしました。(前編/全2回)
ゲストプロフィール
株式会社明光トレーディング代表取締役 松木 正一郎氏
1985年より不動産業界に従事し、賃貸管理・賃貸営業・売買仲介・投資用不動産(主にマンション)・居住用マンションのリノベーション事業に携わる。その後、前身である彩和通商を譲り受け、1994年に社名変更と共に株式会社明光トレーディング取締役に就任。1995年、代表取締役に就任。趣味は仕事、ゴルフ、ジム。
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創業時から重視していたのは、会社として物件を「所有する」という観点
――まずは、松木社長が明光トレーディング様を起業するに至るまでの経緯を教えていただけますでしょうか。
高校を卒業して、単純に「稼ぎたい」というモチベーションから不動産業界に入りました。起業のきっかけはバブルの崩壊ですね。私が勤めていた不動産会社には私を慕って入社してくれた社員もいたので、責任を感じて。それなら自分でビジネスを立ち上げようと、周囲の協力を得て、3人の仲間と独立しました。前職の先輩の紹介で安く貸していただいた六本木のマンションの一室からスタートし、今でもその前を通ると目頭が熱くなります(笑)。
――当初はどの様な事業領域でスタートされたのでしょうか。
当時はバブルが崩壊したばかりで、ファミリー向けやワンルームの中古物件を買い取って、リフォーム、今で言うリノベーションをして、再販していました。あとは、売主様からの依頼を受けて仲介業も行っていました。現在では事業範囲がさらに広がり、不動産売買業、マンション企画、賃貸業、不動産管理、資産形成や相続のコンサルティング等も行っています。
創業時から将来を見据えて重視していたのは、会社として物件を「所有する」という観点です。不動産会社に勤めていた時から賃料という安定した収入はいつの時代にも強みになると思っていましたが、バブル崩壊によりむしろその考えが深まりました。
――買取再販で会社を大きくしながらも、自社でも物件を所有され、安定的な賃料収益を基盤とされていらっしゃったということですね。バブル崩壊後に起業されて、2000年代に入ると今度はITバブルとその崩壊、金融緩和政策、リーマンショックが立て続けに起きるという激動の時代の中で、事業や組織はどの様な変遷を経ていらっしゃったのでしょうか。
その当時は既にかなりの数の物件を自社で所有して返済も進んでいたので、時代の苦悩を経験することなく、実はこの規模の会社にしては割と早くに開発資金を受けることができたんです。また、弊社の事業の軸はあくまで「資産運用」ですので、ITバブルやファンドバブルの状況下での土地や物件の仕入れにしても、ディベロッパーや販売会社との価格競争に入っていくことはしませんでした。お客様に「資産運用」としてご提案させていただくことが前提ですので、金額の変動に関わらず新築を購入し続けなければならないという考えは頭から除いています。もちろん目線が合えば購入できる金額も上げていきますが、自分達の経済に収まらないものに対して無理はしないんです。例えば、景気が良い時は、価格が上がり過ぎて弊社の目線に合う開発案件が減ってしまうので、取引物件の大半が中古になります。逆にITバブルが崩壊した時は、中古70%、新築30%といった様に割合が変わりました。我々はプロですので、プロがその時の市況を踏まえた判断で商品化したものを提供することが、お客様にとっても価値になると考えています。
――なるほど。軸をぶらさずに、安定的な経営を維持しながら資本や実績を蓄積して、事業規模を確実に成長させてきたのですね。
周囲や付き合いのある金融機関からは、良い時も悪い時も売上が変わらないとよく言われます(笑)。あまり褒められたことではないかもしれませんが、その時その時の自然な決断を下していくことを大事にしてきました。「自然な決断」という意味では、この30年の間、特別なことは何一つやっていないかもしれません。組織のDX化、IT化は常に進めていますが、基本的な経営方針や経営判断の中身を変えたことはなかったですね。
一方で、コロナという危機によって先例のない課題を突きつけられた結果、昨年の秋口からは考え方を抜本的に変えることになりました。これは良い機会で、30年続けていればあらゆることが古くなり、自分の中でも変わらなければならない部分が出てきましたので、ある意味でのリスタートですね。意識的に目線を広げて新たなスタートを切っていかないと、時代に置いていかれてしまいますから。
方針を決めて、時間をかけて浸透させた後は、安心して現場に任せる
――そうした社長のビジョンやお考えは、社員の方達にどの様に浸透させていらっしゃるのでしょうか。例えば、先ほどおっしゃっていた様な「新築を購入し続けなくても良い」という社長のご方針を、仕入担当側にも納得してもらい、共通認識として持ってもらうには難しい側面もあったのではと推測していて。創業者の理念と現場のチームのバランスをどの様に取っていらっしゃるのか、ぜひ教えていただきたいです。
そうですね。ここ数年は経済の流れから中古物件の割合が高くなっていましたが、転換期を経て最近はまた新築物件も増えてきており、逆にこれからは新築の時代になっていくと考え始めました。昨年の秋口からこの方向性で進めていますが、おっしゃる通り、こうした方針の浸透には時間がかかります。私の仮説ですが、今後は中古は仲介で販売し、商品化の中心は新築に移っていくと推測しています。これはサブリース等による業界の構造的な問題で、お客様に提供できる数の中古物件を商品化することや見合った利益率を確保することも難しくなってきたからです。弊社の場合は新築案件のノウハウも養ってきたので、開発案件に舵を切りながら、商品化できる中古物件があれば積極的に購入していきたいと考えています。
一方で、仕入れも販売も事業部のメンバーの社歴が長く、例えば価格や仕様に関しては私よりも彼らの方が厳しい判断基準を持っていますので、方針を決めて、時間をかけて浸透させた後は、安心して現場に任せられる体制になっています。社員のフットワークも軽く、方針を変えても対応していけるところは弊社の強みだと考えています。また、現時点では弊社の社員は中途採用がほぼ100%ですが、今後はコロナ前に準備していた新卒採用もスタートさせたいですね。
――なるほど。それは素晴らしいですね。社歴が長くなると、新築から中古、売買から仲介といった様に方針や担当業務が変わること、つまりはマインドセットを変えていくことへの抵抗もあると思いますが、御社の場合は柔軟に対応されていらっしゃるのですね。
ただ、正直な話、そこはものすごく苦労しますよ(笑)。これからの中古物件は仲介でお客様にご紹介していく数が増加するでしょうし、仲介になると今までは扱えなかった他社のサブリース物件も扱える様になります。必然的にボリュームが増えるので、担当部署の増員も必須になってきます。伸びしろのある中古物件の仲介に注力する為には社内の移動も行わざるを得ません。また、管理部門に関しても、販売後の委託管理ではなく、独自で新規受託をすることで、利益を上げていくことを目指す様に方針を変えましたが、そうした組織の転換期はやはり苦労を伴いますね。
お会いして実際に肌で感じていただくことをこれからも大切にしたい
――コロナ禍において、リモートの環境はどの様に整えられていらっしゃるのでしょうか。対お客様、対業者様、対従業員様で、松木社長はどの様に捉えていらっしゃるのか、ぜひ伺いたいです。「DX」という言葉が一人歩きしているところもありますが、究極的には従業員や経営陣の認識の改革ですよね。
お客様との接点という観点では、これまではすぐにアポイントを取ってお会いできていたことも、コロナ禍では難しくなりました。これにより、アポイントの前にウェブ面談というステップを踏むことになり、営業の成功率が上がったことはメリットの一つです。ただ、お会いして実際に肌で感じていただくことは、やはり今でも大切にしたいと考えています。オーナー様に対しても、弊社や弊社開催のセミナーにいらしていただいたり、会食にご招待させていただいたりしていましたが、そうしたネットワーキングの機会を一切つくれないことはデメリットだなと感じています。チャットやメールは便利ですが、実際にお会いした時のコミュニケーションは全く別の性質を持っていますよね。不動産は高額な商品ですので、最終的にはそこが一番重要なんじゃないかなと思います。
インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太
株式会社明光トレーディング
代表取締役:松木 正一郎
本社所在地:東京都渋谷区恵比寿4-17-3 カゲオカビルディング3F
会社ホームページ:https://www.meiko-trading.co.jp/
<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社明光トレーディング
電話番号:03-3440-7201
WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com