2021.09.28
【イベントレポート】不動産分野の収益アップのためのDX推進の苦労と解決法(後編)DX推進における「壁」と「成功事例」
2021年9月、WealthPark株式会社は、株式会社スペースリー、イタンジ株式会社、リーウェイズ株式会社および不動産テック協会を含めた3部構成のオンラインイベントを開催しました。
この記事では、第3弾として、「不動産DX推進における苦労と解決方法」と「不動産事業におけるDX推進における成功事例」に関するトークセッションを不動産事業者様をお招きし開催しました。大変ご好評頂きましたのでその様子を文字に起こしお伝えします。
是非、最後までご覧下さい。
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不動産DX推進における苦労と解決方法DX推進における苦労と解決方法
藤原:ここからは、私スペースリー藤原が「不動産DX推進における苦労と解決方法」というテーマのトークセッションの進行役を務めさせて頂きます。
本日は、2社の担当者の方にご登壇頂きます。宜しくお願い致します。
藤井:こんにちは。福徳不動産の藤井と申します。宜しくお願い致します。
福徳不動産は、長崎・福岡を中心に事業を展開しております。そのうち長崎大学駅前店では、2020年の2月・3月の営業実績が前年を大きく上回り、2021年も同数を維持しました。これらの要因についてお話しを進めていければと考えています。
藤井:当社では、元々DXツールの導入について具体的なゴール設定ができておらず、社内的にツールの導入が中々進んでいない点に課題を抱えていました。
そのような課題を解決すべく、スペースリー様とイタンジ様のツールを具体的なビジョンを設定した上で導入し、業務効率化に成功。スタッフの時間に余裕ができたことで、一人一人のお客様にしっかり接することができました。そのような取り組みが、結果として実績の成長に繋がったと感じています。
藤原:現在利用しているイタンジ様の「nomad cloud」の導入以前はどのような管理をされていたのですか?
藤井:当社では、支店が点在しておりますので、売上の進捗管理や契約の進捗管理などを全てバラバラのシステムで行っていたので、データの打ち込みや収集にスタッフが膨大な時間を費やしていました。
そのような状況下で、当社では、現場スタッフからも役員からもそれぞれツール導入の提案があり、現状を改善するために「nomad cloud」を導入。
社歴が長いスタッフなどは、新しいツールの導入に対して抵抗感を示す場合もありましたが、「いつまでには新しいシステムへ移行します」という具体的な期限を設けることで、ツール導入が迅速に進むように手配しました。
藤原:ちなみに各ツールを導入する際のリーダー的な存在が社内に在籍していたりするのでしょうか?
藤井:そうですね。当社では、各店舗からツールを導入する際の担当をアサインしてDX推進チームを作り「勉強会」や「ミーティング」などの機会を設け、ツールがスムーズに導入されるように工夫しました。
チームを編成する際の声がけなどは、主に現場スタッフが主導的に行うことが多いように感じています。現場からの声に対しては、本店が内容を精査し、意思決定を行っている状況ですね。
藤原:福徳不動産様では、現在セールスフォースも利用されてるとのことですが、CRM導入にあたって投資するフェーズなどどのように決めたのでしょうか?
藤井:はい。当社では、セールスフォース導入に関しては、代表が前向きに決断した点が大きかったと思います。当社では、ツールを導入する際に、現場からも要望や意見をたくさん集めたうえで導入に踏み切っています。この手法は結果として成功に繋がりました。
ツール導入の際にストレスを感じるスタッフも多かったと思いますが、要望や意見に対して迅速に応えることで、現場のストレスはかなり低減できたのではないでしょうか。
藤原:ありがとうございます。経営者の姿勢みたいなところは非常に重要なポイントですよね。続きまして、 SUMiTASの吉田社長にお話しを伺います。
SUMiTAS様は、北海道で不動産売買のフランチャイズ展開をされている企業です。
また、吉田社長は、愛媛県でアート不動産という不動産会社の経営もされております。
本日は、経営者目線でのお話しを伺えるとのことで非常に楽しみです。
宜しくお願い致します。
吉田:ありがとうございます。当社SUMiTASでは、以下のようなツールを加盟店様向けに提供しております。導入の有無に関しては、基本的に加盟店様自身にご判断頂いている状況ですが、加盟店様のニーズに応じて柔軟なサポート体制を構築しています。既に、加盟店様の基幹システムとのAPIも進めておりますが、今冬からは、LINE連携にも着手する予定です。
藤原:加盟店様にツールの導入や運用をして頂く際に様々な苦労や、導入してもらうための工夫が必要になって来ると思いますが、SUMiTAS様では具体的にどのような取り組みをされていますでしょうか?
吉田:そうですね。当社では中長期的なビジョンとして、不動産賃貸業務と売買業務のシステムによる融合を目指しており、双方の事業部の方からもご理解をいただけるよう、わかりやすい実績を作ることに注力しています。
昨今では、新規のお客様を新たに獲得することが非常に難易度が高くなっておりますので、「初め賃貸でご利用いただいたお客様に、将来的には売買でご利用頂く」ような「生涯顧客化」を目指しており、このようなスタイルは今後業界のキーワードになってくると実感しています。
藤原:愛媛県のアート不動産様では、電子マネー「デジコ」を活用し、アンケートを行うことで、賃貸顧客に売買顧客への入り口を提供するという興味深い取り組みが行われているようです。この取り組みのきっかけをお伺いできますでしょうか?
吉田:はい、この取り組みは、これまであまり活用されていなかったLINEで繋がっているお客様に賃貸契約後のアプローチを行うことを趣旨とした取り組みです。
この手法は、先ほどお伝えした「生涯顧客化」を最終的なゴールに定めており、一度接点を持ったお客様に末長く当社サービスをご利用頂くことを主な目的としています。
藤原:ありがとうございます。ちなみに数あるツールの中からサービスを導入する場合は、どのような基準で選択されておりますでしょうか?
吉田:そうですね。ツールの機能面は重要ですが、やはり「どれだけそのツールを浸透させやすいか」「どれだけ利用を徹底できるか」という点を非常に重視していますね。
機能面だけ良くても、浸透させられるビジョンが見えなければ、導入には前向きにならないような気がします。
藤原:ありがとうございます。そうですね。
ツールの「浸透させやすさ」「使い勝手のよさ」は、非常に重要なポイントだと思います。
吉田社長は、ツールをうまく活用して、一人のお客様との接点を末長く継続させる「生涯顧客化」のビジョンを明確に持たれていることが非常に印象的でした。
非常に勉強になりました。
「不動産事業におけるDX推進における成功事例」DX推進における成功事例」
増田:それでは、ここからはイタンジ株式会社の増田が「不動産事業におけるDX推進における成功事例」と題したトークセッションのファシリテーターを務めさせて頂きます。
本日は、3名のゲストスピーカーをお招きいたしました。
それでは、ナミキ株式会社の朝倉様から一つ目のの質問である、社内で不動産DXに向けた取り組みの有無とその内容についてお伺いしたいと思います。
朝倉:はい。当社で不動産DXの取り組みを始めたきっかけは、主に電話対応の効率化と紙ベースでのコミュニケーションの削減が目的でした。特に紙ベースでの管理は、管理工数の増加によるトラブルにもつながりかねないため、DXツールの提案を受けた際は即座に導入を決断しました。今後は、法改正による電子契約が解禁されるので、その対応に向けた準備をしている最中です。
紙ベースのやりとりからWeb上でのやりとりへの切り替えに関しては、身構える業者様も多いかもしれません。しかし、エンドユーザーからしてみれば個人情報をWeb上に入力する機会は現在非常に多いと思います。実際のところ、ユーザー様には抵抗なく利用して頂けるのではないでしょうか。
増田:ありがとうございます。逆にツールを導入するフェーズで難所になったポイントなどはございましたでしょうか?
朝倉:そうですね。ツールの導入当初は「今まで通り、紙媒体を利用したやり方でお願いします」という要望は実際にありました。しかし、そこで従来のやり方に戻してしまうと社内へツールの利用はなかなか浸透しません。
新しい方法で契約をお願いするのには苦労しましたね。今は、だいぶ浸透したので、かなり楽になりました。(笑)
増田:ありがとうございます。次の質問です。「会社として不動産業界のDXは今後どうあるべき?」であるとお考えでしょうか。
朝倉:はい、ありがとうございます。不動産業界は、他の業界と比べてどちらかといえば古くさい考えが未だに根付いている業界だと思います。
しかし、これまでの考え方が「果たして顧客にとって有益なものなのか?」ということを今一度見直す必要があるのではないでしょうか。
捨てるべき慣習は捨てていかなければ、いつまでも業界は変わりません。
「顧客が求めているサービスとしてDXを進めていこう」という考え方に切り替えることができれば、うまくDX化が進んでいくと思います。
DXツール導入にあたっては、取引先にご負担をおかけすることもあるかと思いますが、ぜひご理解いただき、業界をよりよくしていきたいですね。
増田:ありがとうございます。
では次に、アンビション・エージェンシーの平塚様・鈴木様、お願いいたします。
鈴木:こんにちは。アンビション・エージェンシーの鈴木と申します。弊社では、昨年よりオンライン内見を社内で進めさせて頂いており、ようやく組織として形になってきました。また、週に2-3回実施する社内向けの研修は、フルリモートで実施しており、対面業務の多くをリモートに切り替えました。さらに、RPAツールを導入することで、これまで手作業で行っていた入力作業を30分に1件から、30分に20件まで大幅な効率化に成功しています。
顧客対応に関しても、現在、接客業務の20-30%が非対面接触による対応となっており、社内では徐々にDX化が浸透している印象です。
イタンジ様の「nomad cloud」もフルカスタムで利用中ですね。(笑)
増田:ありがとうございます。非対面接客の割合が20-30%ということは、非常に割合が高いなと感じましたが、完全にweb上で接客業務が完結するというイメージでしょうか?
鈴木:そうですね。私自身も実際にかなりリモートでの接客を行っています。非対面での接客は成約率などに支障が出るイメージが先行してしまうかもしれませんが、私の感覚としてはむしろ逆ですね。
非対面接客を希望されるお客様は、それまでご自身でかなり入念に部屋を調査されている傾向が強く、引っ越しに対する意欲が高いことが特徴です。結果として、成約につながりやすいというのが私の感覚ですね。
各社様、DX化は難しいと考えがちかもしれませんが、実際は、通常業務の延長線にすぎません。ユーザー様のご要望をカタチにしているだけなので、実際に取り組んでみると新しい発見があって面白いと思います。
増田:ありがとうございました。続きまして平塚様、次の質問への回答をお願いいたします。
平塚:はい、かしこまりました。この質問に関しては、色々な観点があると思いますが、私からは「今後どのような会社が業界で生き残っていくのか?」という観点でお話させて頂きます。
不動産DXそのものは、今後否応無しに進んでいくものとしてして認識しています。
そうしたなか、業界で生き残っていくためには「スピード感」と「システムへの信頼」が重要です。
特に、営業マンの方は、職人気質な方が多く、テクノロジーの利用やAIによる査定に抵抗感を持たれる方も一定数いらっしゃると思います。しかし、そのような考え方は一旦捨てて、一度テクノロジーに寄り添うことが重要なのではないでしょうか。
テクノロジーを手段の一つとして使い倒すという感覚を持つことで、業務が効率化され、一人一人のお客様により密に接する機会が増加します。
それは、営業マンとしての価値向上にもつながりますよね。そして、営業マン個人の価値向上は、業界としての権威性の向上にもつながると考えています。
増田:ありがとうございます。私が大学院に通っていた頃、アクセンチュアの講師の方から、「いくらテクノロジーやAIが発展しても、その部分とヒトを繋ぐ役割は代替できないため、営業の仕事はなくならない」という話を聞いたことがありました。
それを、今、平塚様のお話を聞いて思い出しましたね。
ちなみに、御社でDXを推進する上での「スピード感」を上げるために何か取り組んでいることはありますでしょうか?
平塚:そうですね。現場目線ですと「従業員が何を求めているのか」「お客様もニーズは何か」という点を常にヒアリングし、受け止めた内容をスピード感を持って遂行することが重要だと思います。
当社では、代表が「新しいことはまずやってみよう」というスタンスなので、新しいことを受け入れる環境は構築させていると考えています。組織としても若いので、チャレンジ精神を持って、今後も業務行っていきたいですね。
増田:ありがとうございます。スピード感を持つためには、やはりチャレンジできる風土が社内にあることが重要ですね。
平塚:そうですね。当社は、不動産業界全体の権威性を高めることをミッションに掲げております。業界のDX化を進め、業務を最適化し、人間にしかできない点に注力して日々の業務に集中することは、当社のみならず、業界全体を盛り上げるために必要ではないでしょうか。
増田:ありがとうございます。
イタンジとしてもツールを導入いただいた業者様だけでなく、エンドユーザーの方の体験価値が上がるような仕組みを今後も構築していきたいです。
まとめ
不動産DX推進における苦労と解決方法DX推進における苦労と解決方法
—株式会社福徳不動産 藤井様
- 「DXツール導入までの具体的期限を設ける」「各店舗からDX戦略担当をアサインする」ことでツール導入をスムーズに進めることができる。
- 現場の要望や意見に迅速に対応することで、ツール導入に伴う現場のストレスを低減させることが可能。
—株式会社SUMiTAS 吉田様
- DXツールを導入し、既存顧客の「生涯顧客化」を目指すことで、お客様に末長く自社サービスを利用して頂く取り組みを行っている。
- ツールを選択する場合は、「どれだけそのツールを浸透させやすいか」「どれだけ利用を徹底できるか」という点を非常に重視している。
不動産DX推進における社内での取り組みDX推進における社内での取り組み
—ナミキ株式会社 朝倉様
- 電話対応の効率化と紙ベースでのコミュニケーションを削減するため、DXツールを導入。新しい方法が浸透させるために苦労はしたが、従来の方法に戻さないことを徹底し、現在は業務が大幅に効率化した。
—株式会社アンビション・エージェンシー 鈴木様
- 現在、接客業務の20-30%が非対面接触による対応であり、社内では徐々にDX化が浸透している。DX化は、顧客満足度向上という観点でも有効な施策であり、実際に取り組んでみると新しい発見があって面白いと思う。
不動産業界のDXは今後どうあるべきか?DXは今後どうあるべきか?
—ナミキ株式会社 朝倉様
- DXツールの導入に踏み切れない場合は、これまでの考え方が「果たして顧客にとって有益なものなのか?」と考え直す必要がある。「顧客が求めているサービスとしてDXを進めていこう」という考え方に切り替えることができれば、うまくDX化が進んでいくのではないだろうか。
—株式会社アンビション・エージェンシー 平塚様
- 不動産業界のDX化が否応無しに進むなか、生き残るためには「スピード感」と「システムへの信頼」が重要。従業員やお客様のニーズを常にヒアリングし、受け止めた内容をスピード感を持って遂行することが、業界全体の発展にも繋がるのではないだろうか。