2021.09.28
【イベントレポート】不動産分野の収益アップのためのDX推進の苦労と解決法(中編)不動産テック事業者が感じるトレンド
2021年9月、WealthPark株式会社は、株式会社スペースリー、イタンジ株式会社、リーウェイズ株式会社および不動産テック協会を含めた3部構成のオンラインイベントを開催しました。
この記事では、第2弾「不動産テック事業者が感じるトレンド」として、不動産テック事業を運営する各社の報告の様子を文字に起こしお伝えします。
是非、最後までご覧下さい。
TOC
はじめに
巻口:こんにちは。私、本日進行役を担当させて頂きます、リーウェイズ株式会社の巻口と申します。
不動産DX事業を運営する各社の担当者さまに「不動産テック事業者が感じるトレンド」というテーマでお話し頂きたいと思います。
本題に入る前に、最近、不動産DX界隈で話題となっている「2025年の崖」について簡単に説明します。これは「2025年まで不動産業界でのDX戦略が進まなかった場合、約12兆円の経済損失が発生する」という指標です。
特にコロナ禍による「不確実性増大」の中、DX戦略は対顧客業務だけでなく、経営にも大きなインパクトを与えると多くの方が感じていると思います。DX(デジタルフォーメション)とは、トランスフォーメーションという言葉の通り、経営や業界全体に大きな「変革」を与え得るものです。
本日は、不動産DXのトレンドについて、分野別にそれぞれDX事業を推進されている企業の担当者の方にお話し頂きます。
自己紹介
巻口:では、各社様のプレゼンに移行させて頂きます。まずは簡単に自己紹介をお願い致します。
初めにイタンジの増田様、宜しくお願い致します。
増田:こんにちは。イタンジ株式会社の増田と申します。イタンジでは営業の責任者を務めさせていただいております。私は、元々、不動産業界とは異なる業界の出身ですが、近年どの業界のお客様もDX戦略に課題を感じていると実感しています。本日は、少しでも皆様のお役に立てると幸いです。宜しくお願い致します。
鳥谷:こんにちは。WealthPark株式会社の鳥谷と申します。現在は、CS部門の責任者として既存のお客様のサポートをさせて頂いております。昨今、現場で感じている気づきを皆様に共有できたらなと感じています。宜しくお願い致します。
藤原:株式会社スペースリーの藤原です。現在は、西日本営業部の統括を務めさせて頂いております。本日は宜しくお願い致します。
巻口:では最後に、私の紹介をさせて頂きます。不動産テック協会代表理事、リーウェイズ株式会社代表の巻口と申します。本日は、トークセッションおよびファシリテーターを務めさせて頂きます。私は、27年前から不動産業界に関わらせて頂いており、8年前にリーウェイズ株式会社を立ち上げました。現在、当社では、DXツールの提供の他、不動産コンサルなどを運営させて頂いております。本日は宜しくお願い致します。
賃貸管理分野のトレンド
巻口:それでは早速、各企業の担当者の方から、賃貸分野における不動産DXのトレンドについてお話し頂きます。
初めにイタンジの増田様からお願い致します。
増田:イタンジの増田です。当社では、ミッションとして「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」を掲げており、
- 不動産管理会社様に向けたBtoB間での取引を効率化するDXツール「ITANDI BB」
- 不動産仲介会社様に向けたBtoC間での顧客管理や営業サポートを行うDXツール「nomad cloud」を運営させて頂いております。
それでは、「イタンジの考える賃貸業界のDX」というテーマでお話しを進めさせて頂きます。
以下のスライドをご覧ください。これは、DX化以前の不動産賃貸業者様の業務フローを図式化したものです。これまで不動産会社は、入居者(消費者)に向けの対応も、取引先(仲介会社等)に向けた対応も電話やFAX、郵送によって行っており、全て人の手が介在していました。
一方、現在では、デジタル化やSaaSツールの導入によって少しずつ業務が自動化されてきました。そうしたなか、皆様が課題として感じていることは「それぞれのツールの役割が独立してしまっているため、業務が一気通貫になっておらず、依然として作業工数が思うように効率化されていない」点であると考えています。
以下の図が、当社が考える将来的なDXの全体像になります。イタンジが考えるDXとは、将来的にそれぞれのツールがつながり、業務が一元化されることで、エンドユーザーの顧客体験が向上する状態です。
巻口:ありがとうございます。今、増田様がお話しされた通り、不動産DXにおいての最終的なゴールは「エンドユーザーの顧客体験の向上」であると言えるのではないでしょうか。
次に、WealthParkの鳥谷様から資産管理分野でのトレンドについてお話し頂きます。
よろしくお願いいたします。
資産管理分野のトレンド
鳥谷:はい、ありがとうございます。WealthParkでは、不動産オーナー向けの資産管理アプリの開発・運用を行っております。約100名の社員のうち半数がエンジニアの、不動産DXスタートアップ企業です。不動産オーナー様と管理会社様のコミュニケーションの効率化・最適化をミッションに日々業務に取り組んでおります。
具体的には、
- オーナー様が所有する不動産資産の可視化
- オーナー様と管理会社様の間で発生するオペレーションのデジタル化
- オーナー様に対する資産運用の提案の最適化
3つが当社の主な取り組みです。
当社が実感している「DX現場から見る変化」についてご紹介します。
当社のオーナーアプリ「WealthPark ビジネス」は不動産分野における資産管理用のアプリとして開発されており、多くの地主様・不動産オーナー様に対応可能なアプリです。
スマホの普及やコロナ禍による顧客価値観の変化に伴い、DXツールでありながら、ご高齢のお客様にも積極的にご利用頂いております。
「管理会社とのやりとりが楽になった」「定期的に来る管理会社からの連絡が楽しみだ」など嬉しい声も頂戴しております。
近年では、オーナーアプリを対顧客業務に利用するだけでなく、オーナー様とのやりとりが組織内で可視化されることで、「オーナー対応の品質向上」や「部門間連携」に利用されています。これは、オーナーアプリが対オーナー様だけでなく、組織にもDXをもたらすという事実を示しているのではないでしょうか。
これまでのオーナーアプリの役割は、「オーナー様とのコミュニケーションのスピードの改善」と認識されていました。
しかし、最近では、発信した情報やオーナー様から得た情報を分析し、組織内で共有がなされることで、「オーナー様の体験価値の向上」に焦点が当てられるようになったと実感しています。
今後は、顧客データを集約するプラットフォームとしての役割を担うことで、オーナー様へ提供する「体験価値」の差別化の源泉になりうるのではないでしょうか。
巻口:ありがとうございます。やはり、「顧客体験の向上」は、DXにおける肝の一つであると思います。
査定/分析分野のトレンド/分析分野のトレンド
では次に、私から査定/分析分野でのトレンドについてお話しさせて頂きます。
巻口:リーウェイズは8年前に創業した、不動産テック企業であり、「Gate.」と呼ばれる「不動産ビックデータ」を活用したAI分析ツールを提供させて頂いております。
通常、不動産のAI査定ツールは、今取引した場合の資産価値を査定するツールが多いと思います。一方、当社のツールの特徴は、「この不動産が生み出すキャッシュはいくらか?」を査定できる点です。ボタンひとつで50年先までの不動産収益を査定できる仕様となっており、家賃の下落率や空室率が簡単に掲載できる設計となっております。
また、「Gate.Market Survey」という市場分析ツールも提供させて頂いており、複数の駅を比較し、世帯の数や年齢層、今後建設予定のビルの情報をエリア別に比較することが可能です。
不動産の自動査定ツールは、アメリカでは既に一般的なサービスとして普及していますが、近年、日本でも徐々に浸透しつつあり、競合プレーヤーも増えてきているサービスです。
一方、冒頭のアンケートにもあった通り、多くの企業様は「DXを推進できる人材の確保」に課題を抱えているため、本当の意味でのDXにはまだ至っていないことが現状であると思います。
そのような現状を踏まえ、当社では、ツールの提供に加え、不動産コンサルティングサービスも提供することで、各社様のDX推進をサポートさせて頂いております。
それでは、最後にスペースリーの藤原様から、VR/IoT分野のトレンドについてお話し頂きます。宜しくお願いいたします。
VR/IoT分野のトレンド分野のトレンド
藤原:はい、ありがとうございます。スペースリーは、東京都渋谷区に本社を構える360度VRの技術を利用したSaaSツールを提供している企業です。
元々、当社のサービスは、VR機能によって撮影される画像を物件サイトに掲載することで、サイト上位表示に役立てるツールとして各社様が導入されていました。
しかし、現在では、「来場促進」や「来場の歩留まり率の改善」「内見なしでの契約」などに利用されており、営業改善ツールとしてのご活用頂いております。
当社のツールは、多くの機能を実装しており、特に「AI空間設計」機能が大変注目されております。この機能を利用すると、VR上で実際に家具や家電を配置できるため、誰でも簡単に空間設計のシミュレーションを行うことが可能です。
さらに、AIが空間を自動で把握し、家具や家電を配置する機能も実装しているため、実際に内部をデザインした状態でのシミュレーションを公開することができます。これらの機能は、来場促進や歩留まり改善、さらにはオーナー様に向けたご提案に役立てて頂いております。
「市場環境の変化」から当社のビジネスを考察しますと「VR画像を使ってオンラインで物件を紹介できたらいいよね」という段階から「VR画像を使って来場率などのコンバージョンを改善したい」と顧客の要求がよりシビアになった点が近年の大きな変化だと感じています。
当社では、このようなご要望にお応えするため、日々画像の品質向上や機能の追加などの改善を行っております。
最近では、コロナ禍を経てテレワーク専用の部屋がある物件などのニーズが急速に高まっています。「AI空間設計」などの機能をご利用頂き、実際の家具の配置などをVR上でシミュレーションすることで、顧客満足度の向上に寄与していきたいですね。
巻口:皆様、ありがとうございます。それでは、このパートの最後に下記のご質問につきまして皆様のご意見を一言づつ頂戴したいと思います。
パネルディスカッション
増田:コロナ環境で不動産会社様による弊社ツールの導入は非常に増加しました。
最近では、不動産会社様だけでなく、入居者様などエンドユーザーの顧客体験の向上にも繋がったとの声を頂いているので、この動きは今後加速していくのではないかと考えています。
鳥谷:海外ではツールとツール同士の繋がりなどAPI連携によるデータやシステムの統合が進んでいると感じています。
一方、海外の業者様も段階を踏んでこのようなDXによる変化を起こしていると思うので、着実に一歩ずつDXに向けた取り組みを進めることが重要であると考えています。
藤原:先ほど、DXツールを導入した場合の費用対効果についてお話しさせていただきました。このようなツール導入の結果が求められる一方、私は「どれだけ従業員がワクワクしながらツールを使っていけるか?」など目に見えない部分も効果も重要であると考えています。
そのような可視化できない部分の効果も見ていただくことで、業界全体が活性化していくのではないでしょうか。
巻口:皆様、貴重なご意見ありがとうございました。