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2020.04.24

CIO鈴木の連載記事 | 新型コロナウイルス: 家賃滞納可能性のある入居者が使える補助金・金融機関の対応


今後、Wealth Parkのアプリをご使用される皆様に少しなりとも役立つ又は理解が深まると思える情報を配信していきたいと思います。

今回は、新型コロナウイルスの影響により家賃滞納といった局面が想定される中、①家賃滞納のおそれがある入居者が活用可能性のある補助金とは何か、また、②新型コロナウイルスを鑑みた金融機関の既存債権及び融資に対する対応はどのような状態にあるのか、弊社が理解している限りで共有させて頂きます。

目次

1.家賃滞納のおそれがある入居者が活用可能性のある補助金とは

米国ニューヨークにおいて賃貸契約している市民の4割が4月分の家賃を支払えず、5月は更にこれが増加すると報じられている中、現状日本国内においてどの程度家賃滞納状況が生じているか、生じる見込みかの統計データは無いが、今後新型コロナウイルスを背景に家賃滞納が増加することは避けられないと思われる。
そのような中、新型コロナウイルス対策として様々な角度から補助金等が公表されているが、家賃滞納のおそれがある入居者が活用可能性のある補助金等としては「住居確保給付金」がある。

当該給付金は「離職等により経済的に困窮し、住居を失った又はそのおそれがある者に対し、住居確保給付金を支給することにより、安定した住居の確保と就労自立を図る」ことを目的としたものであり、支給対象者・支給要件等を充足すれば原則3か月間の間、(東京都特別区の場合)単身世帯であれば53,700円、2人世帯であれば64,000円の家賃が支給されるというもの。

この点、今次新型コロナウイルス対策として支給対象者・支給要件等について緩和がなされている。
具体的には支給対象者につき申請日において65歳未満という年齢要件が撤廃されると共に、支給要件のうち収入要件については申請日の属する月で収入要件を超えていても翌月には収入等減少により収入要件を充足する場合翌月に申請があったものとして取扱う等で緩和がなされている。(令和2年3月9日)

また、令和2年4月20日施行で、更なる支給対象者の緩和が予定されており、具体的には、これまでは対象者は「離職・廃業した日から2年を経過していない方」としていたが「給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職又は廃業に至っていないがこうした状況と同程度の状況にある方も支給対象に含める」こととなっている。

従って、家賃滞納のおそれがある入居者は当該給付金を含め活用可能な給付金等が無いか調べることができる。

表1:厚生労働省「住居確保給付金の概要」

2. 新型コロナウイルスを鑑みた金融機関の既存債務及び融資に対する対応

次に、新型コロナウイルスに関連して家賃滞納が起きた場合を含め既存債務に係る返済や融資に対しては、金融庁は金融機関に対して下記の通り要請している。(令和2年3月6日付「新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた事業者・個人の皆様の支援に係る金融庁の施策について」より抜粋)

  • 既往債務について、事業者の状況を丁寧にフォローアップしつつ、元本・金利を含めた返済猶予などの条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること
  • 新規融資について、各金融機関の緊急融資制度の積極的な実施(担保・保証徴求の弾力化含む)に加え、政策金融機関や信用保証協会によるセーフティネット貸付やセーフティネット保証等の活用も含め、事業者のニーズに迅速かつ適切に対応すること

実態面として、既往債務に係る条件変更手数料・条件変更がどのようになされているかについては当然ながら、金融機関によって異なるが、例えば北洋銀行はアパートローンにつき、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、生活に影響を受けた個人のお客様に対し、返済条件変更手数料を免除することを公表済。

その他、新型コロナウイルス対策として各行短期的に被害・影響を受けた法人・個人等に対し特別に貸出の仕組みを提供している。(表2)

表2:全国銀行協会「新型コロナウイルスに関する会員行の対応について」

尚、金融庁が金融機関に対し、新規融資について政策金融機関のセーフティネット貸付やセーフティーネット保証等も活用し事業者にニーズに対応することを要請しているが、基準利率での貸付であるセーフティーネット貸付を提供する日本政策金融公庫は新型コロナウイルス対策として更に利息で優遇される「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を提供(表3)。

当該貸付は、コロナウイルス感染症の影響を受け、業績悪化を来している方の業績回復を目的とした設備資金及び運転資金が資金使途である為、純粋な新規物件購入資金としての活用は認められない可能性が高いが、詳細は同庫に確認されたい。

表3:日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要」

以上、①家賃滞納の恐れがある入居者が活用可能性のある補助金とは何か、また、②新型コロナウイルスを鑑みた金融機関の既存債権及び融資に対する対応はどのような状態にあるのかを弊社が理解している限りで共有させて頂きました。

今後、様々な観点で米国等海外事例等も含め、情報配信させて頂きますので、ご質問、ご要望、ご意見等ございましたら、ご連絡頂ければ幸いに存じます。

【参考資料】

  • 厚生労働省住居確保補給金の概要(平成27年9月14日)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0914_shiryou03_1.pdf

  • 厚生労働省住居確保補給金に係る要件緩和(令和2年3月9日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000605807.pdf

  • 厚生労働省住居確保補給金に係る改正予定(令和2年4月7日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000620018.pdf

  • 新型コロナウイルスを鑑みた金融庁から金融機関への要請(令和2年3月6日)

https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/06.pdf

  • 日本政策金融公庫新型コロナウイルス感染症特別貸付

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html

  • 全国銀行協会新型コロナウイルスに対する会員行の対応について

https://www.zenginkyo.or.jp/topic/covid19-jbamembers/

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