CIO鈴木の連載記事 資産として保有するアート

2020年6月の記事において個人富裕層人口と資産構成をグローバル不動産コンサルタント会社ナイトフランク(本社英国)のWealth Report 2020を基に概観し、金融商品・不動産に加えて、ウイスキー・クラッシックカー・コイン・アート・ワインといった実物資産も資産構成の一定割合を占めているということをご紹介させて頂きましたが、今回はアートに焦点を当てたいと思います。

世界のアート市場規模は7兆円程度と言われている中、日本においては美術館を訪れる方は多いもののアートを実際に購入し、資産として保有される方はそれ程多くない為、世界の市場規模に対し日本の市場規模は3%にも満たないとも言われています。

このような中で、世界のアート市場のメイン市場はニューヨーク、パリ、ロンドン、香港であり、分野で特に市場規模が大きく、成長している市場は現代アートです。印象派等の高額アートについては既に美術館に収まっているということもある中で、現代アートに注目が集まっているというのは全世界共通でトレンドであり、日本においても同様と理解しています。

個人がアートを購入する機会としては、画廊・ギャラリー、百貨店、オークション、アートフェア等があり、画廊・ギャラリーが出展するオンライン販売等もありますが、オンラインのみでの販売は日本においてはまだまだ少なく、画廊・ギャラリー、百貨店が特に活用されているチャネルであり、オークションが続くものと理解しています。

概観は上記の通りですが、足許の新型コロナウイルスはアート業界にどのような影響を及ぼしているかについて、ナイトフランクArt Market ResearchのSebastian Duthy氏、Veronica Lukasova氏は「新型コロナウイルスの影響によりアートの売買は即座に大幅減となったがオークション運営会社は素早くオンライン閲覧を導入」、2大オークション会社であるSotheby’sは5月にコンテンポラリーオークションを開催し落札率96%を達成、Christie’sも4月末にコンテンポラリーオークションをオンライン開催し落札率100%であったと述べています。

また、同氏らは今後のアート市場への影響として、オンラインで購入する人が増加することにより、アートコレクターはより高いリターンを期待する他、オークション運営会社はより新たな形式での魅力的販売機会を提供することが求められるとしています。

Sotherby’sは2020年3月1日から5末までの間でオンラインオークションを世界で50以上開催、2020年5月末時点で2019年1年のオンライン販売を超えたそうですが、2020年7月上旬の香港におけるSpring Saleでは総落札規模220億円規模(うち奈良美智さん、白髪一雄さん、草間彌生さんの作品も3億円超で落札)に上り、また7月下旬のロンドンでのSummer Saleは総落札規模200億円規模で複数のライブ会場を繋いで行ったそうです。

Christie’sについても2020年7月には香港、パリ、ロンドン、ニューヨークと続くライブオークションChristie’s ONEを実施、総落札額420億円規模(うち山口長男さん、草間彌生さんの作品は2億円規模で落札)を達成しています。

アートを含めた実物資産は6月の記事で取り上げました通り、長期で見た場合、資産として保有して価格が上昇するといった結果に繋がるものも有ります(図1)し、現代アートの中でもAndy Warhol、Jean Michel Basquiat、Keith Haring、Damien Hirst、Julian Opie、Jeff Koons、Roy Lichtensteinや日本の現代アートにおいても上述の日本人アーティストに加えて、村上隆さん、杉本博司さんを含め世界中の方が求め、価格が近年上昇しているアーティストの作品も実際あります

図1 実物資産の過去10年間及び過去1年間の価格上昇率(2019年12月末) (出所:ナイトフランク)

wealthpark

とは言え、短期での投資的な意味合いでの価格上昇を期待して資産保有するというよりは、そもそも短期間で価格が上昇するというものでは一般的にはないですし、そのようなことがアーティストやアート業界に与える影響も必ずしも良くない中で、「保有することそのものにより満足度が上がる」「保有することにより更に当該資産に関心を持ち知見を深めるきっかけとなる」といったことを前提に保有されている方が世界においても多いものと理解しています。

世界においてもアートをより資産として保有し易くすることに繋がっている事例として、アーティスト・作品・ギャラリー紹介がわかり易く並べられたインターネットサイト(Artsy等)、1つの高額なアートを皆で共有する機会を提供する会社(Masterworks等)、アートの理論価格を提供する会社(Artprice等)など様々あります。

日本においても必ずしも世界と同様の取組である必要は無いと思いますが、情報・真贋性・保管等を含めアートを保有することへのハードルが下がり、安心してアートを保有する機会がより増えてくると、展覧会に行くといったことのみならず、保有を通してアート市場がより活性化され、日本のアーティスト・アート関係者にとっても良い循環が生まれるのではないかと考えております。

【参考資料】

The Knight Frank Luxury Investment Index – Art update

https://www.knightfrank.co.uk/research/article/2020-05-21-the-knight-frank-luxury-investment-index-art-update

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