Articles

2020.12.10

特別対談企画(後編)ホットハウス田嶋会長に聞く、地方エリアならではの不動産管理会社の進化

「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第2回は、北海道で先進的なテクノロジーによってオーナー管理や物件売買をされている、株式会社オネックスグループ代表取締役・株式会社ホットハウス取締役会長兼CSOの田嶋氏にお話を伺いました。
後編では、ホットハウスの独自サービスの詳細や同社の目指す目標と世界観、そしてお客様への思いについて詳しくお聞きしました。(後編/全2回)
前編はこちら

ゲストプロフィール

株式会社オネックスグループ代表取締役・株式会社ホットハウス取締役会長兼CSO 田嶋 祐介氏
約10年間、地元札幌にて営業職や会社役員を経験した後、株式会社エニシィングを設立。2009年に設立した株式会社ホットハウスを含む6社を有する、オネックスグループ代表取締役に就任。趣味はゴルフ、バスケ、食べ歩き、仕事。

目次

テクノロジーを使って「再現性」を強化する

――人や地域を変えても通用する「再現性」をより強化するために、御社はテクノロジーを活用されていますよね。テクノロジーの観点での取り組みを教えてください。

田嶋会長:地域からの評価を目指す上で、賃貸仲介業の範囲でイノベーションを起こしたいという思いは初期からありました。その中での弊社の代表的な取り組みは、「ミセクル」という移動店舗です。お客様のご希望の場所まで専用車両でお出迎えし、車内に設置されたオンラインシステムを通じてお部屋探しをし、気に入ったお部屋はそのまま直行して内覧できるサービスです。

再現性や効率化において、アナログでの接客は限界があります。不動産管理業界は、ベテランの社員でも、提案・接客スキルの低い社員でも、お客様は同じ対価を払います。しかしながら、スキルが成熟してない新人に、一生に数回しかないお客様のライフイベントを担当させることは、本来であればありえない話だと思うのです。移動店舗では、新人スタッフは運転手としてお客様をご案内します。先輩営業マンの接客を車内で聞くことができるので、人材育成プロセスとして機能するわけです。また、契約成立率が高い社員が現場まで行く必要がなくなるので、非常に効率的です。弊社は業界としては比較的早い段階で、仲介の現場の分業化に踏み切りました。基本的に事前に空室の説明が出来ていて、メリット・デメリットを明確に伝えられていれば、内見は現物を見て納得していただけるためのステップであって、内見中に話をするのが営業ではないと考えます。移動店舗を仕組み化することで、社内の効率化を図っていきたいですね。

また、何よりお客様にとって、選んでもらった我々が出向くという姿勢を表現するには移動店舗しかないと思っています。同業者で賛同して使ってくださる方がいれば是非使っていただきたいという思いで、この仕組み自体を外販する販売会社も立ち上げています。

――仲介業務に限らず、管理業務のオペレーションや分業をどう組み直すか悩まれている管理会社さんのヒントにもなりそうですね。もう一つのお取り組みも伺えれば。

田嶋会長: PM業務の中でどうしても効率化できない部分がいくつかあり、そのうちの一つが建物の維持管理です。いわゆる共有部のトラブルや異常が発生した場合に不動産は物を動かせないので、管理戸数の増加に比例して、担当者の数もどうしても増え、人材難の状況下で難しい分野になってきています。

トラブルには感情面が強く出ますし、いち早く解決するには入居者の方から連絡がきてすぐに、スタッフが現地に出向く必要性があります。これ自体が非効率で、札幌のようなサイズの都市では、管理部署から一番遠い物件まで、冬に雪が降ると片道1時間以上かかります。限りある社員のリソースで分担して管理するのは、非常に苦しいところです。かといって、距離で管理物件の対象を絞ることはしたくありません。札幌市内の物件を幅広く管理するためのソリューションを見つけなければなりません。

そこで現在、エコモット株式会社(https://www.ecomott.co.jp/)との取り組みで、AIが学習を繰り返してかなりの精度で物件の異常を見つけられるような仕組みづくりをしています。オーナー様に了承いただいた物件には定点カメラを設置し、カメラが静止画を録画してクラウド上に上げて、差分をAIが見ています。なかったものが置かれたり、またはなくなったり、AIが差分と認識すれば画像を担当者の元に自動で送るようになっています。これにより、クレームの前にこちらに情報が入ることになり、入電の前に問題を把握し、駆けつけることも可能になるのです。先手先手で動けることでこちらの都合で人が采配できるので、効率が上がります。現場も楽になりますし、現場での効果が確認できたら外販もしていきたいと思っています。

仲介管理業で働きたいと思える仕組みをつくらなければいけない

――管理という部門はどうしても日が当たらない傾向が強いといえますし、業務自体もルーティーンに陥りがちで、やらされ仕事になってしまったり、社員の方も夢が描きにくいかもしれません。田嶋会長から管理会社の社員の方々に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

田嶋会長:確かに、仲介も管理も不動産業の全体で括ると決して華やかなものではなく、開発のような分かりやすい部門が花形になりがちです。ただ、自身が誇りを持っていれば、世間から見た「日の目を見る」という定義は関係ないですよね。弊社の社員には、管理業は確かに地道な仕事だけれども、住まいという大きな括りの中で確実に一つの貢献をしているのだから誇りを持つこと、そして独身・既婚に関わらず、自分を家族から輝いているように見えるかが重要だと伝えています。

とはいえ、賃金や残業の問題を含めて、組織や業界自体が変わらなければならないこともあります。弊社は仲介管理をメインと謳う手前、売買部門を超える安定的な賃金体系をつくっていかなければならないと思っています。黙っていても実現しませんし、自分たちでつくっていかなければなりません。自分たちの周りや部下、後輩が、ここで働いて良かった、ここに入りたいと思える仕組みを、まさに仲介管理業に関わる人たちでつくっていかないといけないと思います。だからこそ雇われている側も色々なソリューションを活用して、自分たちの待遇は自分たちで改善する。引け目を感じることなく、仕事に対する誇り、そして業界や会社の未来を自ら変えていきたいという気持ちを持ってほしいですね。

「ありがとう」の集大成として、管理戸数2万戸という数を達成したい

――最後に、ホットハウス様の今後のチャレンジを教えてください。

田嶋会長:分かりやすい指標の一つとして、札幌市内の地域最大手の管理戸数は想定で2万戸強。弊社もその数字を目指しています。ただ、戸数という指標をトラックレコードとして得たいわけではなく、他社が追随出来ない良いサービスをつくり続け、オーナー様や入居者様からの「ありがとう」の集大成として、2万戸という数を結果的に達成させることが重要です。

私達のフィールドはまずは札幌市内なので、当然急激にマンションが建つ現状ではなく、他社のパイを取っていくことになりますが、安売り合戦ではなく良質なサービスを適正料金で提供することで取得したいと考えます。現に今は管理手数料の値引き交渉に応じていないにも関わらず、「アセットリッチ」といった新しい管理サービスを立ち上げた結果、管理受託件数は伸び続けています。

アセットリッチは、2016年8月にリリースした、日本で初めての管理手数料インクルード型原状回復費用保証サービスです。オーナー様の物件の利回り改善を考慮し、不動産投資の経費支出の中で最も大きな割合を占める原状回復費用を、オーナー様から頂いている家賃の5%相当の管理手数料にインクルードした形でサブスク的に弊社が負担し、オーナー様の収益の最大化を目指します。後発した同様のサービスの多くは「管理手数料+保証料」というスタイルが多い中、アセットリッチはコスト面でもご好評をいただいております。こうしたサービスの充実と更なる進化を通じて我々が2万戸を達成すれば、おそらく他社の戸数は減り、実質的に我々が札幌一になるでしょう。ですので、まず目指すべきところは2万戸と考えています。

そして、10年前に2万世帯を管理していた会社が使っていた人的リソースのうち、できれば2/3、欲を言えば半分、もっと言えば1/3の人員で2万世帯を管理し、減った分はテクノロジーへの投資や待遇の改善に充てていきたいと思います。人を減らして効率を図りたい背景には、社員を豊かにしてあげたいという思いがあります。豊かにする財源というのは基本的には利益からしか還元できないので、最小人数で最大利益を突き詰めて、地域ナンバーワンを取り、その過程の中で生まれてきたソリューションを外販したいと考えています。もちろん社外のサービスも活用しますが、私達の独自の仕事の中でソリューションを自前でつくり、結果的に2万戸を管理し、社員もハッピーで、また外販もする。これをやり続ければ業界も良くなっていくと思いますので、しばらくはそこに注力したいと思っています。

−−本日は貴重なお話をありがとうございました。

前編はこちら

撮影協力:the Fourth Place

インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

株式会社ホットハウス

本社所在地 札幌市中央区南8条西4丁目422番地5号 グランドパークビル3階
取締役会長兼CSO 田嶋 祐介
代表取締役社長 金澤 寿治
主な事業内容
不動産の売買・賃貸・仲介及び販売代理業務
アパート、マンション、駐車場並びに貸ビルの経営、管理及びメンテナンス業
一般建築工事の設計、施工及び管理
建築、建物設備のリフォーム工事の設計、施工及びコンサルタント業務
各種損害保険及び小額短期保険代理店業務
全各号に付帯する一切の業務

<本件に関するお問い合わせ先>

株式会社ホットハウス 榮(さかえ)
Mail:sakae@e-hothouse.jp

WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com

RELATED ARTICLES

  • Articles

    2023.10.02

    特別対談企画(前編)1つの取引が運命を変えた。サムティプロパティマネジメント植田社長の半生から学ぶ「管理会社代表のあるべき姿」

  • Articles

    2023.10.02

    特別対談企画(後編)1つの取引が運命を変えた。サムティプロパティマネジメント植田社長の半生から学ぶ「管理会社代表のあるべき姿」

  • Articles

    2023.08.29

    特別対談企画(後編)戦略的に、そしてストイックに。地元・長浜で活躍する葛川社長に尋ねた挑戦し続ける秘訣とは?

  • Articles

    2023.08.29

    特別対談企画(前編)戦略的に、そしてストイックに。地元・長浜で活躍する葛川社長に尋ねた挑戦し続ける秘訣とは?

  • Articles

    2023.04.18

    特別対談企画(後編)「無償から有償管理へ」広島の管理開拓者である良和ハウス代表が語る不動産奮闘記

  • Articles

    2023.04.18

    特別対談企画(前編)「無償から有償管理へ」広島の管理開拓者である良和ハウス代表が語る不動産奮闘記