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2020.08.28

CIO鈴木の連載記事 | 新築マンションの市況を概観する(2020年7月)

先月に引き続き、新築マンションについて、8月20日に株式会社不動産経済研究所が公表したデータからエリア別(東京都区部・東京都下・神奈川県・大阪市・大阪府下、計5エリア)に、①発売数に対して契約数・契約率がどのように推移してきたか(供給と需要度合い)、②発売平均価格・㎡単価がどのように推移してきたか、③価格帯別で見るとどのような価格帯が契約に至っているのかを概観したいと思います。

目次

1. 東京都区部の新築マンションの状況

① 新築マンション発売数・契約数・契約率

東京都区部の新築マンションは発売が過去一年の平均では月1,000戸程度で推移する中、新型コロナウイルスの影響もあり、発売戸数は2020年4月、5月は500戸を下回る水準となっておりましたが、7月は744戸と前年同月比19%減の水準に留まりました。発売月の契約率も6割を超過する水準となっており、6月と同等の水準となっています。(図1-1)

図1-1 東京都区部新築マンション発売数・契約数・契約率

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② 新築マンション平均価格・㎡単価

東京都区部の新築マンション平均価格は過去一年の平均では7,500万円程度ですが、2020年7月は8,031万円と前年同月比23%増の水準。㎡単価は過去一年の平均では120万円ですが、2020年7月は125万円と前年同月比17%増の水準となっています。前年同月比伸びているように見えますが前月と同水準です。(図1-2)

図1-2 東京都区部新築マンション平均価格・㎡単価

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③ 新築マンション価格帯別契約戸数

東京都区部の新築マンションにつき、契約された戸数の価格帯で見ると、4,000万円超8,000万円以下の価格帯がボリュームゾーンとなっておりますが、2020年7月時点の前年同期比で見ると8千万円以上1億円未満の物件契約数が大幅に増加しています。(図1-3)

図1-3 東京都区部新築マンション価格帯別契約戸数

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2. 東京都下の新築マンションの状況

① 新築マンション発売数・契約数・契約率

東京都下(区部を除く)の新築マンションは発売が過去一年の平均では月176戸である中、新型コロナウイルスの影響もあり、発売戸数は2020年4月、5月は50戸を下回る水準となっておりましたが、7月は266戸と前年同月比42%増の水準となっています。発売月の契約率は5割を下回る水準となっていますが、発売数が前年比でも多数である為、契約数も相応に多くなっております。(図2-1)

図2-1 東京都下新築マンション発売数・契約数・契約率

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② 新築マンション平均価格・㎡単価

東京都下の新築マンション平均価格は過去一年の平均では5,300万円程度ですが、2020年7月は5,814万円と前年同月比12%増の水準。㎡単価は過去一年の平均では80万円ですが、2020年7月は84万円と前年同月比12%増の水準と比較的高水準となっております。(図2-2)

図2-2 東京都下新築マンション平均価格・㎡単価

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③ 新築マンション価格帯別契約戸数

東京都下の新築マンションにつき、契約された戸数の価格帯で見ると、2,500万円超6,000万円以下の価格帯がボリュームゾーンとなっておりますが、2020年7月時点の前年同期比で見ると6,000万円超8千万円未満の物件契約数が増加しております。(図2-3)

図2-3 東京都下新築マンション価格帯別契約戸数

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3. 神奈川県の新築マンションの状況

① 新築マンション発売数・契約数・契約率

神奈川県の新築マンションは発売が過去一年の平均では月460戸程度で推移する中、新型コロナウイルスの影響もあり、発売戸数は2020年4月、5月は150戸を下回る水準となっておりました。6月も低水準でしたが、7月は554戸に上り、前年同月比53%増となっています。発売月の契約率は7割を超過する水準となっています。(図3-1)

図3-1 神奈川県新築マンション発売数・契約数・契約率

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② 新築マンション平均価格・㎡単価

神奈川県の新築マンション平均価格は過去一年の平均では5,200万円程度ですが、2020年7月は5,538万円と前年同月比5%増の水準。㎡単価は過去一年の平均では80万円弱ですが、2020年7月は79万円と前年同月比2%増の水準となっています。(図3-2)

図3-2 神奈川県新築マンション平均価格・㎡単価

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③ 新築マンション価格帯別契約戸数

神奈川県の新築マンションにつき、契約された戸数の価格帯で見ると、4,000万円超6,000万円以下の価格帯がボリュームゾーンとなっておりますが、7月もまさにこの価格帯が大幅に増加しております。(図3-3)

図3-3 神奈川県新築マンション価格帯別契約戸数

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4. 大阪市の新築マンションの状況

① 新築マンション発売数・契約数・契約率

大阪市の新築マンションは発売が過去一年の平均では月635戸程度で推移する中、新型コロナウイルスの影響もあり、発売戸数は2020年4月、5月は250戸を下回る水準となっておりましたが、7月は454戸の水準となりました。前年同月は970戸と平均で見ても大きい水準となっていた為、前年同月比では53%減となっていますがやはり回復からは依然として遠い水準となっております。但し、発売月の契約率は7割弱となっています。(図4-1)

図4-1 大阪市新築マンション発売数・契約数・契約率

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② 新築マンション平均価格・㎡単価

大阪市の新築マンション平均価格は過去一年の平均では3,700万円程度ですが、2020年7月は5,205万円と前年同月比4%増の水準。㎡単価は過去一年の平均では80万円であり東京都下や神奈川県と同水準ですが、2020年7月は96万円と前年同月比3%増の水準となっています。(図4-2)

図4-2 大阪市新築マンション平均価格・㎡単価

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東京都区部、東京都下、神奈川県と比較し、平均価格や㎡単価が月毎にばらつき度が大きいのは、データ元である不動産経済研究所によると、近畿圏は首都圏と異なり、市場規模が小さく1棟のインパクトが大きく影響する中、データに投資用マンション(ワンルーム等比較的面積が小さい)が含まれていることが背景にあるとのことです。

③ 新築マンション価格帯別契約戸数

大阪市の新築マンションにつき、契約された戸数の価格帯で見ると、2,500万円以下の価格帯が圧倒的ボリュームゾーンであり、2,500万円超6,000万円以下がこれに次ぐ水準となっておりますが、2020年7月も概ね2,500万円以下が大きく、6000万円以下がこれに次ぐ水準ですが、6,000万円超8,000万円以下の物件もやや多い水準となっています。(図4-3)

図4-3 大阪市新築マンション価格帯別契約戸数

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5. 大阪府下の新築マンションの状況

① 新築マンション発売数・契約数・契約率

大阪府下の新築マンションは発売が過去一年の平均では月250戸程度で推移する中、新型コロナウイルスの影響もあり、発売戸数は2020年4月、5月は100戸を下回る水準となっておりました。一方で2020年7月は201戸と平均に向けて回復しておりますが、前年同月が404戸と高水準であった為、前年同月比で見ると50%減の水準となっています。発売月の契約率は8割弱と高水準になっております。(図5-1)

図5-1 大阪府下新築マンション発売数・契約数・契約率

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② 新築マンション平均価格・㎡単価

大阪府下の新築マンション平均価格は過去一年の平均では4,400万円程度ですが、2020年7月は4,412万円と前年同月比5%減の水準。㎡単価は過去一年の平均では60万円程度ですが、2020年7月も61万円と同水準となっています。(図5-2)

図5-2 大阪府下新築マンション平均価格・㎡単価

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③ 新築マンション価格帯別契約戸数

大阪府下の新築マンションにつき、契約された戸数の価格帯で見ると、2,500万円超6,000万円以下の価格帯がボリュームゾーンとなっておりますが、2020年7月も同様の傾向となっております。(図5-3)

図5-3 大阪府下新築マンション価格帯別契約戸数

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今回は新築マンションに係る公表データを基に、市場概況のイメージ感を共有させていただく為、エリア別に①発売数に対して契約数・契約率がどのように推移してきたか(供給と需要度合い)、②発売平均価格・㎡単価がどのように推移してきたか、③価格帯別で見るとどのような価格帯が契約に至っているのかをご紹介させて頂きました。

全般的には発売戸数・契約戸数は新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言に伴い、2020年4月、5月と大幅減少していたのに対し、7月は回復傾向がみられており、特に東京都下(23区外)及び神奈川県は回復傾向にあるように見えます。

今後も皆さまのご理解に役立つデータを客観的データと共に共有させて頂きたく考えております。

【ご注意事項】

本記事については、筆者の私見を含んでおりますので、ご質問・ご不明点がございましたら、筆者宛にご質問頂ければ幸いに存じます。

本記事は如何なる投資に関しても勧誘や売買の推奨を目的とするものではなく、如何なる投資成果や投資収益を示唆・保証するものでもありません。また、当社は本記事に基づいて被った如何なる損害についても一切責任を負いません。

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