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2022.08.26

特別対談企画(後編)ヤマモト地所山本祐司氏・富貴氏に聞く、「地域、社員、家族との信頼づくり」の秘訣

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「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第16回は、高知県四万十市で地域密着の総合不動産業を営む、有限会社ヤマモト地所 代表取締役 山本祐司氏と常務取締役 山本富貴氏にお話を伺いました。
後編では、組織崩壊後の変革に向けた取り組み、仲介から管理へ事業をシフトされた経緯、まさに四万十市が最前線である人口問題についてお話しいただきました。(後編/全2回)

ゲストプロフィール

有限会社ヤマモト地所 代表取締役 山本 祐司氏
東京都中野区で生まれ、高知県四万十市で育つ。大学中退後は大阪・東京を拠点に、在学中に始めたバンド活動に没頭。その後、四万十市に帰郷し、2008年に父が創業した資産管理会社である山本地所に入社。同社で宅地建物取引業の免許を取得し、ヤマモト地所に社名を変更して不動産業を開業。『四万十市の住環境の向上に寄与し、地域の発展に貢献する。また、社員ひとりひとりが働きやすいと感じてくれる会社を創る。』をビジョンに掲げ、四万十市になくてはならない会社の創造を目指す。趣味は、旅行、グルメ、ゴルフ、宅トレ、サウナ。

有限会社ヤマモト地所 常務取締役 山本 富貴氏
高知県南国市出身。大学卒業後、高知県警に務める。赴任先の四万十市で祐司氏と出会い、結婚 。単身赴任で刑事を続けていたが、生き生きと不動産業を営む祐司氏の姿を見て退職を決意。宅建に一発合格した後、2010年にヤマモト地所に参画。賃貸、売買、管理、相続支援、スラム化したエリアの再生といった幅広い業務を担いながら、協会や行政のセミナーにおける講演やSNSでの情報発信などの対外的な活動にも積極的に従事。趣味は、グルメ、ゴルフ、サウナ、ピアノ。

目录

2017年から「働き方改革」を宣言し、組織の抜本的な変革をスタート

――最大のピンチである組織の崩壊を経て、組織のつくり方や社員への接し方はどのように変えていかれたのでしょうか。

祐司氏:それまでは私が方針を考えてみんなに指示を出していましたが、それで組織が崩壊してしまったのだから、抜本的に変えようと心を決めました。2017年1月から「働き方改革」を宣言し、「初任給20万円」、「残業なし」、「年間休日120日」という、当時の四万十市ではあり得ない待遇の実現を進めていきました。同時に、経営からの社員への関与も減らし、取締役の長岡くん、富貴ちゃん、私の3人で一緒に考える体制にしていきました。その結果、2019年の私の社長就任時までに、初任給は達成、残業も減り、年間休日も増えていました。ちなみに、弊社には朝礼がありません。朝礼があると私の性格的にどうしても偉そうなことを言ってしまうので、いっそのこと言える場所をなくしてしまおうと(笑)。今の組織は放任主義に近しいですが、このフェーズではそれでいいと思っています。

――組織が一度崩壊したという過去を伺ってから改めて御社のホームページの「スタッフ紹介」を拝見すると、胸に響くものがあります。働かれている社員の方々の「その人らしさ」が前面に出ていますし、トップダウンではない組織のあり方が表れていますよね。また、紹介順にしても、祐司さんと富貴さんの後は社員の方々が続き、ラストがオーナーであり会長であるお父様とお母様というのが御社らしくて。まず現場や社員にフォーカスされるという姿勢が込められていますよね。

祐司氏:ありがとうございます。そもそも私自身が組織づくりや旗振りを得意としない人間なんですよね。リーダーにもいろいろなタイプがいますが、私はモチベーターでもないし、自分の強みではないことは無理してやらなくてもよいと考えるようになったんです。周りを見渡せば、長岡くんともう一人、私よりよっぽど向いている若手社員がいました。それならば組織づくりは彼らに任せて、私は他の得意なことに専念しようと頭を切り替えました。

諸先輩方によって視界が広がったことで、仲介から管理へシフト

――とはいえ、トップやリーダーの立場で、できないことをできないと認めることは勇気がいりますよね。

祐司氏:もちろん最初は勇気がいりましたよ。でも一度認めたことですごく楽になりましたし、組織にとっても最良なステップでした。また、トップが自分の弱さを認めることは、心理的安全性を社内にもたらすことにもつながりますよね。

――そうして組織として変化を遂げていく中で、事業内容も変遷を経ていきましたよね。徐々に管理業にシフトされた経緯も伺えたら。

富貴氏:高知ハウスの故和田浅吉会長から「とにかく管理戸数を増やしなさい」と叱咤激励を受けたことがきっかけです。故和田会長と初めてお会いしたのは、2010年の全管協のセミナーでした。その頃は不動産業を始めたばかりで、夫婦二人で色々な勉強会に出かけていたのですが、会長はいつも私達のことを気にかけてくださり、不動産の楽しさや管理業の重要性を話してくださいました。会長との運命的な出会いによって、私達の視界が広がり、少しずつ管理受託を増やしていきました。
今の和田英知社長をはじめ、全管協の四国の先輩方は人格者が多く、不動産業について惜しげもなく教えてくれますし、引き上げてくださります。私のセミナー講演が実現したのも和田社長が全管協に推薦してくださったからです。

――富貴さんはセミナーの講演といった対外的な活動を積極的に行われていますが、和田社長や先輩方の後押しもあったのですね。

富貴氏:元来、私は表に出るタイプではないんですよ。ガチガチに緊張してしまうので(笑)。ただ、諸先輩方がくださるチャンスは逃さないと決めています。これまでの人生では、恥ずかしいといった理由で引き受けなかったことで後悔をしたこともあったので、今はチャンスをいただけたら掴むようにしています。

四万十は人口問題の最先端。ここでの試みを成功させ、業界に貢献したい

――続いて、人口問題についてもお伺いします。5年ごとの国勢調査で四万十市の人口を見ると、平成27年では34,000人だったのが令和2年には32,000人となり、2,000人弱の5%減を記録していました。一方で、世帯数は微増しているんですよね。日本全体としても、人口は毎年100万人ずつ減っているものの世帯数が減らないので、賃貸の文脈では楽観視されてしまいがちです。ところが、現実にはさまざまな地域で高齢化やインフラの老朽化が進んでいます。

お二人は不動産事業を営まれながら、子育て世代として地域に関わっていらっしゃいますが、事業対象としての地域環境、そもそも所属されている地域コミュニティや社会的な接点といった複数の視点を踏まえて、減っていく人口や老いていく街をどのように捉えて、立ち向かっていらっしゃるのでしょうか。

祐司氏:人口と世帯数の変化は常に追っています。これまでは人口が減っても世帯数は増えるか横ばいだったのが、世帯数も徐々に横ばい一色になり、いよいよ減ってくるのではと見ています。また、世帯数の横ばいもその中身を見ていくと、離婚の増加で単身世帯が増えているといった変化があるんですよね。

日本の最先端は東京のような大都市ですが、人口問題の最先端は地方にあります。ここ四万十では人口問題による課題がすでに随所に表出しており、弊社も前もって準備する時間もないまま、次々に対応している状況です。今我々が抱えている相続案件やオーナー様の認知症の増加、離婚率の高さによるファミリータイプ物件のニーズの落ち込みや、単身用物件の不足などは、これから日本全国で起こるでしょう。今の高知や四万十の人口構成を踏まえて我々が取り組んでいることを数年後に俯瞰して見たときに、何かしらのモデルができているかもしれません。ここでの我々の試みを成功させ、業界に貢献できたらと考えています。

――都会に住んでいると実感として持ちづらいものの、現に東京でも大阪でも人口減は起きています。日本の人口問題の縮図とも言える四万十で最先端の課題に対応されている御社の事例は、これからのモデルになるのではないでしょうか。

祐司氏:そうなるとよいですね。四万十では人口は減っていますが、50代〜60代の層は厚く、高齢者が働ける仕組みをつくることも必要になってくると考えています。近所に従業員が全員高齢者というコンビニがあるのですが、それこそが目指すべき形だと思うんです。というのも、四万十では20代の人口比率が低く、若い人の多くは市役所や銀行に就職するため、彼らの働き先の選択肢に中小企業やコンビニが入るのは難しいのが現状です。一方で、まだ働きたい意欲のある高齢者または40代後半の氷河期世代であれば、マッチングできる可能性があります。そのコンビニが意図していたのかはわかりませんが、結果的に高齢者だけで成立する仕組みをつくっていることが、最先端だなと。我々のような不動産業にとっても、必要なのは物覚えの早さよりもホスピタリティの心ですから、DXで仕事を仕組み化し、高齢者ばかりのヤマモト地所にシフトしていくのも一つのあり方ですよね。むしろそのような社会、会社にしていかないと、田舎は保ちません。弊社の採用の権限は社員に委譲しているので、こうした私の見解は社内でも伝えるようにしています。

まずはお客様の喜びに目を向けて、長期的なやりがいや達成感を味わってほしい

――現状の人口比率に即して社会や会社の形もアップデートしていくということですね。街のあり方の変化としては、過疎化が進むと駅前にマンションを建設して、コンパクトシティを目指されるケースもありますが、四万十市の行政の動向はいかがでしょうか。

富貴氏:四万十市でもコンパクトシティ構想は何年も前から打ち出されています。小学校や中学校の統廃合は急速に進んでおり、結果的に私達の商圏である4エリアにお客様が集まってきているという感覚はありますね。

祐司氏:社内では4エリアの物件を扱うことを推奨しています。実際に現場で営業する社員からすると少し離れたエリアの物件も扱ってみたいようで、多少は目をつぶっているところはあります。ただ、暮らしやすさを前提に考えると、基本的にはエリアを限定すべきだと思うのです。

――経営と街づくりの観点から商圏を定めることが、結果的にお客様の暮らしやすさにつながるのでしょうね。最後に、日々賃貸管理に向き合われている方々にメッセージをいただけないでしょうか。

祐司氏:私ばかり話しているので、最後は富貴ちゃんに締めてもらいましょうか(笑)。

富貴氏:不動産管理業を通じて「ギブ」の概念に触れ、私も何かを与える側の人間になりたいと思うようになりました。自分がこれまで培ってきた知識や経験によって、目の前で困っているお客様の課題を解決し、その方の利益を増やせることが喜びなんですよね。我々の利益がすぐに出ることがなくとも、まずはお客様に喜んでいただけることが大事。そこから信頼関係を築き、後から大きな仕事をいただくこともあります。不動産業に携わる方には、目先の利益よりも、まずお客様に喜んでいただけることに目を向けることで、長期的なやりがいや達成感を味わってほしいですね。

――不動産業が心から楽しいというお気持ちは、お二人の笑顔から伝わってきます。本日はありがとうございました。

前編はこちら

インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太

有限会社ヤマモト地所

代表者名 山本 祐司
高知県四万十市中村一条通3-4-10
会社ホームページ: https://yamamotochisyo.co.jp/

<本件に関するお問い合わせ先>

有限会社ヤマモト地所
代表電話番号: 0880-34-2305
Mail: yamamotochisyo@future.ocn.ne.jp

WealthPark株式会社 広報担当
Mail: pr@wealth-park.com

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