2021.04.09
KeyPerson’s VOICE (Part 1) Talk with Choei’s Mr. Nagata about Commitment of “Resident First” Property Managers to Future Generations
「不動産管理会社のいまを知る」をテーマに、業界をリードするゲストをお迎えし、貴重なお話をお伺いする連載企画。第7回は、創業以来管理を専門に事業を拡大し、管理センター「Bellevie(ベルヴィ)」を京都を中心としながら全国各地に構える 、株式会社長栄 代表取締役 長田修氏にお話を伺いました。
前編では、長田氏が不動産業界に入られた経緯やその背景にある人生観、組織をここまで成長させたリーダーシップについてお聞きしました。(前編/全2回)
ゲストプロフィール
株式会社長栄 代表取締役社長 長田 修氏
京都府出身。高校卒業後、松下電器(現パナソニック)勤務等を経て、1988年株式会社長栄を設立。京都府賃貸管理業連絡協議会(京管連)の立ち上げや、公益社団法人 全国賃貸住宅経営協会連合会(ちんたい協会)の理事を務める等、不動産管理業界に大きく貢献。また、京都ローカルラジオのパーソナリティーとしても活躍する。趣味はF1レース観戦。
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管理会社が求められる時代を見据えて、長栄を設立
――まずは長田社長について、お聞かせください。不動産管理業を始めるに至った経緯を伺わせていただければと思います。
長田社長:私は京都の農家の長男でしたが、段々開発が進み農地が少なくなっていたので、外で働くことを選びました。元々学歴がなく、基礎的なものの考え方や商売について学びたいと、20歳の時に松下電器(現パナソニック)に入社しました。ただ、頑張り過ぎて体を壊してしまい、7〜8年で退職することになりました。
もともと人生設計として30歳までに独立することを考えていまして、我々は農家ですので、不動産はたくさん持っています。ただ、不動産で何かをするにせよ、無知では失敗するので、勉強も兼ねて不動産会社に入り、3年間勤めました。不動産の世界で働く中で、これからの時代には管理会社が必要だと感じ、ご縁もあって不動産管理業に乗り出すことになりました。松下電器の退職金を資金にして、父が買ってくれたファックスとコピー機を備え、電話を一本引いて始めたのが最初です。
――特に当時の関西で松下電器に入社されたことはある種のステータスだと思いますし、学びも多くかつ安定もしている環境だったと想像します。30歳での独立を頭に描いていたとはいえ、成長している会社を辞めることを決断された27歳の長田社長の中には、どういった思いがあったのでしょうか。
長田社長:人間は生まれてきたからには何かを成さねばなりませんし、何かを残したいという本能を持っています。私の場合、「自分がどういう人間であるかを知りたい」という欲求も強いですね。未知の世界に足を踏み入れ、決断をしながら物事をつくっていく中で、これはできた、これはできないと、自分という人間を知っていくことが純粋に楽しいのです。また、私がなぜ独立できたかというと、実家が農家で食べるものには困らない環境だったということも大きいと言えます。境遇を活用することも大事です。食べていける環境があるなら、一度は一から自分でやってみようと思えました。起業してうまくいかなければ海外で農業をやろうと。
――どう生きるかという人生観から突き動かされている部分が大きいということですね。
長田社長:人間は霞を食って生きていくわけにはいかないので、必ず経済活動に寄り添います。ただ、私は稼ぐ為の努力もするけれども、それだけでは満足できなかった。不動産管理業を始めた頃は法律も整っておらず、体を張って死ぬかもしれないと思う様な経験もしましたし、気持ちが休まらないことも多かったです。しかしながら、誰もやりたがらない仕事だという気持ちと共に充実感もあって、面白かったですね。そうした経験を積んできたので、多少のことでは動揺しませんし、常に緊張感の中で仕事をしてきたことは今にしたらプラスだと思っています。
そのうちに社会の治安を守る為の法律等が施行されて、状況も落ち着いてきました。さらには、今年の6月から賃貸住宅管理業法も施行されます。法律のない時代、未整備の時代からコツコツ真面目にやってきましたが、法律ができることをずっと望んでいました。ここ数年の不動産関連の、いくつかの大きな事件や問題を発端に、政府が法整備に着手し、タイミング良く法律ができたと思っています。
大きな夢を語り続けることで、管理業に毎日向き合う従業員を引っ張っていく
――誰もやりたがらない裏方の仕事を選択されて、組織をつくりあげ、今では社会的価値を提供するところまで到達されていらっしゃいますよね。そこには「入居者ファースト」という長田イズムがあると思いますが、どの様に社内に浸透させ、どの様な形で受け継がれているかを教えてください。
長田社長:我々は入居者様、オーナー様との契約の世界で生きています。約束をした以上、必ず履行することが大切です。最初から「入居者ファースト」を掲げていたわけではなく、法律が整うにつれて、トラブル対処よりも、良い入居者様に我々が管理しているマンションでどれだけ楽しく住んでいただけるかに視点がシフトしていきました。入居者様に何か困ったことがあれば30分以内に駆けつけられる様に、現在京都市内の18箇所に管理センターを構えています。仕事を堅実に積み重ねていくことでお客様に感謝していただけることが非常に嬉しいですし、生きがいはそこにあります。
管理の仕事は掃除や修繕がメインで、そうした仕事に毎日向き合う従業員を引っ張るには大きな夢を語るしかありません。例えば40年前から「マンハッタンのビルをそのうち買うから」なんて話をしていました(笑)。初めはできるわけがないと思っている彼らも、繰り返し説いていると、段々実現できそうな気になってきます。今私が彼らに伝えているのは、10年後には年商を1000億にはできるだろうと。今の年商は90億弱ですが、始めた年の年商は120万円。40年経って7000倍になったわけです。ですから、今から10年で10倍程度にはできるだろうと言っています。努力さえすれば可能性には必ず近付けますから。
――労働集約的な側面やクレームも多い管理業においては、リーダーとして夢を繰り返し説き、実現に近付ける様に旗を振っていくことが非常に重要ですね。
長田社長:とはいえ、実は管理業に執着はしていません。一度始めたことですし、今は極めていく中で何かを見出そうと努力を続けていますが、特に管理業にこだわっているわけではないのです。弊社の従業員にも、稼ぐ為の手段として管理業に執着する必要はないし、自分たちで新規事業に挑戦したかったら投資するとも伝えています。ただし、誰かが喜ぶことに繋がる事業だったらやっても良いと。
我々は今でこそ管理業に従事していますが、出世魚の様に、時代に合わせて生きていく手段を変えても良いと思っています。何千年も前から同じことやり続けている人っていないでしょう。私の知人でも江戸時代は布団屋だった会社が今ではフェンスを作っていますし、富士フィルムもフィルムから薬品や化粧品、宝酒造も清酒からバイオと、もともとの事業と全く異なることにチャレンジしています。この様に時代が変われば事業も変えて良いと思うのです。うちは管理業を本線に置きながら、それ以外の事業も始めていますが、正常な進化だと捉えています。
駅伝の様に、次の世代、また次の世代にバトンタッチしていきたい
――管理会社として成功を収めていらっしゃるにも関わらず、決して延長線上で物事を考えないところに、長田社長らしさがありますよね。長田社長は、「適切な報酬水準を設定して、適切もしくはそれを上回るサービスを提供する」ということを方針の一つに掲げられていますが、金額交渉を求められることも多い管理業界でこの方針を貫かれた、考え方のプロセスを教えていただけますでしょうか。
長田社長:自分の仕事を安く売ることは、基本的にやってはいけないと思っています。我々の場合、サービスを提供しているのは人間で、給料を下げられません。100円の物を110円の価値で売る時に、その10円の価値がどこにあるかを見出すことが大事だと思います。お客様と約束したことは、どんな理由であろうと、泣き言を言わずにプライドを持ってやり抜く。その代わりに言うべきことは堂々と言う。そうすると見てくれる人は見てくれて、噂が立ちます。それが大事だと思いますね。
本音を言うと、弊社はまだスタートラインにも立っていないと思っています。まだまだ成長途中で、ここまで来るのに40年もかかったので、自分は能力が低いと思っているくらいです。仕事は永久不滅ですから、駅伝の様に次の世代、また次の世代にバトンタッチしていきたいですね。これを100年間やり続けて、100年後には卓越した会社になっていくことを思い描いています。
インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太
株式会社長栄
代表取締役:長田 修
本社所在地:京都府京都市下京区万寿寺通烏丸西入御供石町369 No.60京都烏丸万寿寺ビル
事業内容:賃貸不動産の管理業、自社保有不動産の賃貸事業、不動産の売買や賃貸の仲介、不動産開発業、リフォーム工事、宿泊事業、マンスリーマンション事業、レンタル事業
<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社長栄
代表電話番号: 075-343-1600
Mail:chuoc@choei-net.ne.jp
WealthPark株式会社 広報担当
Mail:pr@wealth-park.com