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2021.04.06

WealthPark代表取締役CEO 川田隆太インタビュー WealthParkのこれまで、今後目指すビジョン

25億円の資金調達を実施し、新サービス「WealthParkオルタナティブ」のリリースを発表したWealthPark。事業開始から約7年を経て、創業時から描いていた不動産やワイン、アートといった「オルタナティブ資産」の管理プラットフォームの実現に向けて、舵を切りました。
多くの方々からご興味いただくポイントを第三者の視点で深く掘り下げ、WealthParkの経営陣がなぜ「オルタナティブ投資の民主化」を目指すのかを紐解いていく、全4回のインタビューシリーズの第一弾です。

インタビュイー

代表取締役CEO 川田隆太
みずほ証券、ファッションウォーカーを経て、WealthPark事業を創業。国内外のテクノロジー企業および富裕層に豊富なネットワークを持つ。東京工業大学経営システム工学科卒業。

目次

「インターネットでモノを売ることがデファクトになる」と確信した前職での挑戦

――まずは、WealthPark以前のお仕事や、WealthParkを設立するに至った経緯を教えてください。

新卒でみずほ証券に入社し、主にM&Aのアドバイザリー業務に従事していました。4年程勤めるうちにこのまま続けていくことに違和感を感じながらも、特に他にやりたいこともなくて。そんな折に、クライアントが支援していたファッションウォーカーという、ファッション通販サイトを運営するベンチャー企業と繋がる機会があり、そこのCFOを引き受けることとなりました。

当時(2007年)はまさにガラケーの最盛期。インターネットで物なんて誰が買うんだ、ましてや服なんて試着もできないのに買う訳がないというのが一般的な認識でしたが、そこに切り込もうとしていました。ただ、夢こそ大きく描いていましたが、僕が参画した当初はめちゃくちゃな状態で、在庫が億単位で合わなかったり、存在しない社員の給与を払っていたり。今でも忘れられないのが、買付担当の社員に買付費用として数百万円しか渡していなかったのに、請求書を見たら数千万円になっていたこと。「これ、どうしたの?」と尋ねると、「可愛いかったので、あるだけ買ってきました!」と目を輝かせながら説明されて。

――桁の間違いではなかったんですね(笑)。

でも、それがあっという間に売れちゃったんですよ。ルールを守ることはもちろん大切ですが、消費者の気持ちは予算や計画とは違うところにあるんだなと気づかされました。ファッションウォーカーには4年半いましたが、非常に良い経験をさせてもらいましたね。毎年年末は倉庫で朝まで社員と福袋を詰めて、元日の福袋開始のタイミングで、当時はクラウドもないのでサイトのサーバーが落ちて奔走したり。若い女性がターゲットだったので、女性ファッション誌の編集長に会いに行ったり、モデル事務所やアパレル、SEO対策会社と交渉したり。そうした中で、モバイルやインターネットで物を売る、ひいては物を表現することが、デファクトになっていくという確証を得ていきました。

一方で、エントリーするマーケットの見定めが甘かったことも痛感していました。流通量やSKU(受発注・在庫管理を行う際に使用する単位)は多いものの、若い女性をターゲットにしていたので、競合他社と比較して扱っている商品の単価が圧倒的に安かったんですよね。結局規模の経済のメリットを実現できずに苦しんでいる間にリーマンショックが起こり、そのタイミングで会社の代表に就任しました。交代直後に、今度は東日本大震災があって、経済産業省から不要不急の流通に対してストップがかかりました。固定費や買い取りの買掛も払わないといけないし、会社の倒産を危惧して株主を回ったものの、資金援助をすべて断られて。そこで、唯一賛同してくれた1株主と、親、友人、先輩を回って借りてかき集めたお金で、エクイティ投資を行いました。

――経営不振に陥っている会社にご自身の個人的なネットワークを使って投資されるって、かなりの勇気がいることでは。

普通しないですよね(笑)。でも当時のメンバーと一緒にチャレンジしていくことに、不思議と迷いやためらいはなかったんです。結局は僕は運が良く、投資した後に大手アパレル企業に買収されて、30代そこそこの小僧が手にするには過分な額のお金を手にすることになりました。その後は競業避止もあり2年近く買収元企業をやめられず、ずっとプラプラしてました。そうなるとロクなことにはならないですよ(笑)。やっぱり世の中って因果なものですね。でも、この時期に酸いも甘いも噛み分けたお陰で、どんなにいい所に住んでも、どんなにいい車に乗っても、どんなに楽しく東京で遊んでも、満たされないと感じたんです。そこで、残ったお金で挑戦すべきビジネスを考え、インターネットと親和性がないモノをモバイルで売るという構想が生まれました。

Amazonや楽天で売っていないモノをモバイルで売りたい

ファッションウォーカーでの経験から、エントリーするマーケットの見極めが大事だと学びました。Amazonでも楽天でも売っていないモノの中で、まずは一番マーケットが大きくかつテクノロジーの介入が難しいであろう不動産から攻めようと決めて、ドメスティックよりクロスボーダー、一棟より区分、大都市中心より全国と、さらに困難な領域を求めていきました。基礎となるところからスタートしないと、本質的な価値を創出できないと思っていたので、外国人投資家が所有する日本国内の部屋をまず自分たちで管理するというアイディアに行き着きました。

――経験が全くない分野にも関わらず、あえて難易度が高いと思われる部分に焦点を合わせられた理由は。

キャピタルインテンシブな、資本の論理だけで成立するものだと挑戦しても勝ち目がないので、時間をかけて、汗をかくことで勝負できるものを探していたんです。途中は負けてもいいから最後に勝算があるゲームという観点で選んでいて。また、一番難しい外国人投資家向けの区分にテクノロジーを注入して成功すれば、他でもおそらく僕らがやろうとしていることは実現できるだろうと踏んでいました。

加えて、どう成立させるかという「ガバナンス」も慎重に考えました。当時(2012年)は不動産の価格も底を突いていたし、日経平均株価も低迷していました。ベンチャーキャピタルも今ほどアクティブではなかったですし、新興企業が資金繰りに苦労するのは当然理解していたので、新しい挑戦をするには単純にベンチャーでやるよりも、土台となる仕組みを入れた方がいいなと。たまたま事業承継を希望していたRJCリサーチという会社を譲って頂き、そこの新規事業部門という位置付けで、同社とは何の関係もないWealthParkのVertical事業(外国人オーナー向け日本国内不動産管理事業)をスタートさせました。

――そういうやり方もあるんですね。

通常は選ばない選択だと思います(笑)。ちなみに、こんな時から一緒にやってくれているのが、デザイナーの吉本(VPofDesign)です。彼とはファッションウォーカーの時からの付き合いで、センスが抜群。彼のデザインがあれば新しいチャレンジができると思っていたので、彼をカフェに呼びつけて、「一緒にやろうよ」って誘ったんです。そうしたら、詳細を話す前に「いいですよ」って即答してくれて。「それで、何やるんですか?」って聞くから、「不動産どう思う?」、「不動産すか。いいですね。てか、不動産って何ですか?」というのがその後の会話です(笑)。

吉本以外にも2人が参画してくれて、新規事業用のオフィスとして恵比寿のアパートの一室を借りて始めてみたものの、誰も不動産なんて知らないし、「クロスボーダーでやる」って僕が言っても、「クロスボーダーって何ですか?」って返ってくるレベル。宅建やTOEICを受験してもらうことから始めました。当時は週5〜6日は一緒に飲んでましたね。飲んだ後はオフィスの床で寝るメンバーもいました。


共同創業者の吉本さんと

その後、クロスボーダーで攻めるのだから外国人を採用しようとなって。RJCリサーチの新規クロスボーダー事業として募集をかけて入社してくれたのが、今はチームから卒業してしまったのですが、社内では伝説とも言えるカナダ育ちの香港人のメンバーです。彼女はトップコンサルティングファームでキャリアを積んで、ロンドンにMBA留学した後に日本人の方と結婚して、日本にやって来たというバックグランドの持ち主。さすがに来てくれないよなと思っていたのですが、幸運なことに採用できて。

中国語が話せる飛び切り優秀な仲間が増えたことで、僕も彼女と一緒に、台湾、香港、上海、北京にシンガポールと、文字通りアジア中を駆けずり回って、直接お客様に営業をしていました。その結果、台湾のある著名な方が保有する物件を初の管理として受託できて、僕らの構想がビジネスになると確信したのですが、テクノロジーを注入する肝心のアプリがないわけです。そこで、アプリ開発に向けて本格的に動き始めました。

アプリ作成と並行しながら管理物件を預かる刺激的な日々

エンジニアチームを組織する際も、外国人とビジネスをするのだから外国人で固めてみようと、日本人のプロダクトマネージャーの下に、インド人、中国人、エジプト人、フィリピン人のエンジニアを採用しました。その後に、今も社内で活躍するベトナム人のエンジニアを取引先から紹介され、アプリのプロトタイプをつくってもらったのですが、なかなか使い始めるところまでには進まなくて。その頃、僕の大学からの友人であり、現在ではNo2として会社を切り盛りする間瀬(COO)も参画して、入社してすぐに「話が違う。全然アプリできてないじゃん」って指摘されましたが、まさにその通り。アプリの完成前に700室も預かってしまっていて、営業しながら投資家対応をするスーパーウーマンであった香港人の彼女も、さすがに毎日泣いてました(笑)。そんな危うい時期もありながら、徐々にVertical事業を整備していきました。

そのタイミングで、自分たちが物件を管理する為に開発するソフトウェアを管理会社の方に使って頂くという次のステップにいよいよ移行を考えていて。Vertical事業の成長を加速させる為に体制を整えていた時期なのに、僕がSaaS事業も始めるなんて言い出すものだから、既にチームに合流して、今では人事からSaaS事業までを管掌し会社の中核を担う手塚(CBO)と鳥谷(カスタマーサクセス部長)からは「そんな場合じゃないですよ」って怒られました(笑)。でも結局は手塚の友人を介して、北海道のホットハウス様を紹介してもらい、システム自体はまだできていなかったのですが、構想に共感していただけて、契約していただきました。続いて契約してくださったのが、大阪の宅都プロパティ様です。

――なかなかの綱渡りですね(笑)。

今でもずっと綱渡りはしていますが、この頃とは比べものにならないですね。こんな挑戦は二度とできないし、振り返っても、またやりたい人は一人もいないかもしれません。でも、この時期がなかったら、底辺から価値を創出していくことは到底できなかったし、やりたいことを良い仲間とチャレンジできて、本当に楽しかったんです。その後、管理会社様に自分たちが開発したシステムを活用していただく中で、投資家のサポートにも恵まれ資金調達も出来て、チームも大きくして、オフィスの引越しもして、メンバーには感謝しかないです。その過程で、ベンチャーでは異例の形ですが、ニューヨークにオフィスを開設して、白崎(CFO)を迎え入れました。彼の加入も意義深く、現在のクロスボーダーのチャレンジの扉を開く大きな契機になりました。ですから、今が一番昂揚が高く、なんというか、その辺で轢かれて死んでも全く後悔ありません(笑)。

――現CXOの方々もそうですが、WealthParkには金融やネット業界で長年キャリアを培われた方が割と初期のタイミングで参画されていらっしゃいます。当時から皆さんご自身もオルタナティブ資産の管理プラットフォームの実現に夢を描き、川田さんと一緒に挑戦すると決意されたのでしょうか。

そうですね。アメリカの債権、アフリカのインフラ、絵画、そうした”モノ”をアプリを通じて買える世界を全員が描いていました。当時はブロックチェーンもSaaSも存在しませんでしたが、Amazonにも楽天にも売ってないモノが流通する時代が到来すると明確に思っていて。ただ、単純にクラウドファンディングの会社や投資会社をやるとか、システムをつくってSaaSとして売ろうとしてもまず使ってもらえないので、まず自分たちで不動産管理をやってみようということで、今に至っています。

投資は自分らしさや自分なりの人生をより表現できるもの

――以前、個人が気軽に投資をして夢を見られる社会を目指されているとおっしゃっていましたが、川田さんにとっての投資とは。

自分の時間を使っている行為すべてが僕からすると投資です。投資は、衣食住を経て残った“モノ”であり、自分なりの人生を語る行為と位置付けています。もっと具体的に言うと、ここで100円のジュースを飲むか飲まないか、この家に住むか住まないか、人はそうした選択の結果として残った資産を何かに投資していて、その結果が血肉となったり、アクセサリーや車や家にもなったり、思い出になったりしているわけです。お財布にあるお金をどう使うか、どこで働いて給与をもらうか、こうした選択的行為も、「投資」の一側面。一方、投資は自分らしさを表現できるものですが、もっと豊かに表現できる仕組みも世の中に必要だと思っています。例えば、不動産なり、ワインなり、アートなりにもっと簡単に投資ができて、そうした投資のポートフォリオによって自分なりの人生が表現され、それがアプリで簡単に可視化されれば、自分はこういう人間だったんだという気づきを得られるかもしれないし、それならこういう風に人生を変えていきたいと考えるきっかけになるかもしれないと考えています。

――お客様やWealthParkの参画を考えられている方へメッセージをお願いします。

メンバーや参画を考えてくださっている方に対しては、自分の人生だから自分らしく生きてほしいと願っています。成功も失敗もすべては自分次第。もちろん組織に帰属することによって、役割や義務は生じますが、それらを自分の人生として噛み締められる様な組織にしていきたいと思っています。弊社のメンバーのバックグランドは実に多種多様で、不動産事業の経験がない者も多いのですが、与えられた仕事に自分なりの意味と意義を見出してくれれば良いんです。メンバーそれぞれが生きたい生き方を貫きながら働ける組織にしていきたいですね。

弊社のプラットフォームを使用される投資家の方々に対しても、リスクテイカーの方にも安心安全を重視される方にも等しく機会の平等を提供すべきだと考えます。持たれている資金量も、投資スタイルやリスクの許容度も、人それぞれ全く異なりますし、自身の時間やお金を「投資」するか否かの選択自体は、お客様に委ねられています。僕たちがやろうとしているのは、それ以前の選択できないという状態をテクノロジーを活用することで解決していくこと。英語だから分からない、1億円からではないと投資できないとか、障害って結局そういうことですよね。そういう障害を取り除くことができるチャレンジを一緒にできたらなと思っています。

インタビュアー:飯田明

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