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2021.04.16

WealthPark 取締役副社長, COO, CPO 間瀬 裕介インタビュー | オルタナティブアセットプラットフォームへの転換とプロダクト構想

25億円の資金調達を実施し、新サービス「WealthParkオルタナティブ」のリリースを発表したWealthPark。事業開始から約7年を経て、創業時から描いていた不動産やワイン、アートといった「オルタナティブ資産」の管理プラットフォームの実現に向けて、舵を切りました。
多くの方々からご興味いただくポイントを第三者の視点で深く掘り下げ、WealthParkの経営陣がなぜ「オルタナティブ投資の民主化」を目指すのかを紐解いていく、全4回のインタビューシリーズの第ニ弾です。

インタビュイー

間瀬 裕介
WealthPark事業全体を統括。過去には投資銀行やプライベートエクイティ業務に従事。経営/財務戦略の策定および実行・資金調達・ M&A等に関する豊富な経験を有する。シアトル拠点のヘッジファンドでの勤務を経て、WealthPark事業に参画。London Business School MBA、東京工業大学大学院経営工学科卒業。

目次

自身で感じ取っていた社会変化の兆候とWealthParkの構想が繋がった

――まずは、WealthParkに参画されるまでのキャリアを教えてください。

WealthParkへの入社は6年前で、その前の約10年は投資ファンド・投資銀行業界にいました。最初のキャリアは川田(CEO)と同じく、新卒入社したみずほ証券。3 年程勤め、主にM&Aやストラクチャードファイナンスに携わった後、米系プライベートエクイティ(PE)ファンドのカーライルに移りました。PEファンドでは、投資家から集めた資金を未上場企業の株式に投資、経営に関与しながら企業価値を高め、最終的にはIPO(新規公開株)等を通じて得たリターンを投資家に配分するということを4年程やっていました。その後の2年間はロンドンにMBA留学して、実は手塚(CBO)はその時の同期です。留学後はシアトルのヘッジファンドで3年程勤め、投資業務に加え、投資先によっては経営にかなり深く関わる形で事業サポートしており、振り返ってみれば今の事業と類似性もあるB to B to C型の会社のDXをハンズオンで遂行していたりもしました。

――投資ファンド業界でキャリアを積まれた後に、ベンチャービジネスであるWealthParkにチャレンジされた理由は。

参画を決めた理由は大きくは二つありました。一つは「価値のアンバンドリング(分解)」、個のエンパワーメントの進化、さらにはテクノロジーの融合といった、自身の肌で感じ取っていた世の中の兆候と、2014年末に川田から聞いたWealthParkの構想が繋がったことです。例えば、僕がいた投資ファンドでは、メンバーは名だたるキャリア出身者から構成され、ある側面でみれば限定されたクローズドな箱に機関投資家を中心としたプロの投資家から膨大なお金が集まり、そこでしか扱えない投資機会にファンドとして投資をしていくといった事業モデル。こういった投資ファンドに投資ができる機関投資家・一部の富裕層が良い悪いということではありませんし、投資の良し悪しはその時々ですが、仕組みとしては、限られた人だけが”より広い機会へのアクセス”を享受できる、という形になります。そんな仕組みの中で働きながら、エスタブリッシュされたファンドといっても個々の人でその箱は構成されていて、その箱で創造される価値自体はより明確に個人に紐づくことも結構あるなという感覚がありました。
そんなことを考えながら、ファンドという箱に帰属する価値、個々人に帰属する価値、本当に価値があることがより明確になってくる、いわば価値の帰属がよりアンバンドルされてくる予兆を感じました。例えば、今ではそういったことが起きていますが10年以上前ではあまりなかった、投資家が投資ファンドという箱に対して手数料を支払うのでなく、ファンドマネジャー個人の価値創造により繋がりをもった取引をする、ファンドマネジャーも、自身の価値に共鳴してくれる投資家とより直接的に取引をする、といった形です。金融の世界で見てきたこうした個人の価値の顕在化は、ある意味では縮小図でもあって、その頃には個の力が社会全体で台頭していく気配を何となく肌で感じていました。投資ファンドに在籍していた頃から、会社としての価値、自分が本当に創れている価値は一体何なのかを常に考える癖があったので、価値を取り巻く社会の動きに敏感だったのかもしれません。これからはもっと本質的な価値を出している個人あるいは集団に焦点が当たっていく時代になるんじゃないか、と感覚的に思っていました。

もう一つの視点として、アメリカにいた時に、個人の目の前にモバイルアプリが普及していく、そのアプリが個人の思考をデータとして吸収しある意味では一番の理解者になる、そんな可能性を間近で見ながら、個の力とテクノロジーの融合の流れは不可逆なものになるとも考えていました。金融サービスは、極端まで単純化すると、その多くは裏ではエクセルで管理されていて、プログラマチックに提供されているサービス。個人の嗜好性や資産のデータを急速に吸収していき、個人の目の前に立つモバイルアプリにどこかのタイミングで抜かれるだろうし、価値も金融もアンバンドリングされテクノロジーと融合したら、個人がもっとエンパワーされる社会になると予測していました。”個としての価値とテクノロジー”、そういった事を多く考えるようになっていた2014年頃、川田から「不動産を含むオルタナティブ資産をアプリで管理できたら今までと違う形での価値提供が可能になる」といった事業コンセプトを聞きました。今でも変わりませんが、当時の僕の課題意識と彼が描くWealthParkの世界が重なったことが、参画の一つ目の理由です。

二つ目の理由は、グローバルに誇れるプラットフォームなり、会社なりをつくりたいという想い。ロンドンに留学するまで海外に住んだ経験はありませんでしたが、その後にアメリカでも働く機会があり、日本という国が世界から置いていかれていることを自分なりの尺度で強く肌で実感しました。今でも自分としての原体験になっていますが、ある種の”悔しさ”から、世界に対峙できる会社をつくりたいという腹落ちした思いが当時生まれていた中、WealthParkならそのチャンスがあると信じられたことは、僕にとっては重要な判断のポイントでした。自戒も込めて言えるのは、日本にいると何かに包まれている様なふわっとした安心感があり、そこに埋もれていく感覚があります。でも、目を閉じて、自分達の会社が世界レベルの競争に甘えなく晒された姿、AmazonやGoogleと一列に並べられている姿を想像した時に、自分達の会社は、そして自分はどこにいるのか。そこに対する本能的な警戒感を昔から強く持っていて、今でも繰り返し目を閉じて自分に聞いています。海外が日本がということではないかもしれませんが、臨界線が曖昧な何かに同化することなく、常にハングリーに、そして正直に自分の立ち位置をシャープにしておきたいという強い思いがあります。

今述べた二点が参画の主な理由ではありますが、川田とは大学からの10年来の付き合いで、本当に信頼出来る男だったというのはもちろん非常に大きい要因でした。正直、当時ほぼ何もないスタートアップの状況でアメリカから戻って参画するという判断でしたから、実際彼への信頼がなければこの判断はしなかったと思います。結構各方面からは反対もありました(笑) 。

「オルタナティブ資産のファイナンシャルケーブル」をつくりたい


オルタナティブ投資会社との商談後、LAにて

――「WealthParkオルタナティブ」を先日リリースされましたが、この新しいサービスはどの様な世界を見据えているのでしょうか。

不動産、PEファンド・ヘッジファンドへのLP出資、未上場株、インフラ、アート等といったオルタナティブ資産は、グローバルでは既に数千兆円のマーケット、低金利化で今後更に市場が拡大すると言われています。このマーケットでは、例えばですが、国内外の投資ファンドへの出資、著名スタートアップへの投資、NYの5番街の商業オフィス、数百万ドルのアンディ・ウォーホルの絵といったモノへの投資・売り買いが日常的になされていますが、これまでは機関投資家や一部の富裕層といった限られた層しかアクセスができませんでした。言ってしまえば、一等級の非常に美味しいワインがあっても、一部の人しか買えない・売れない・飲めないという状態です。

一方、株式投資は上場している会社であれば、それが日本のユニクロであろうが、米国のネットフリックスであろうが、国内外の会社の株を誰もがアプリで買うことができます。これは、これらを可能にするプラットフォームが既に構築されているからに他なりません。それぞれの会社が事業を営み利益を出す、財務の数値を共通のフォーマット・システムを通じ開示・共有する、投資家はその情報にアクセスし判断する、事業を営む会社と投資家の間でプラットフォームとしての証券取引所が機能しているからこそ、一般の人が簡単に会社・事業の”一部の持分”を所有できるわけです。僕らはこの株の仕組みと全く同じことを、この広大な、しかし決してデジタル化されてこなかったオルタナティブ資産の市場で実現させたい。渋谷の不動産2株、NYの5番街のビル3株、アート4株、ワイン2株といった様に、世界中の実物資産の一部を僕達のアプリで所有できる、投資家が資産を管理・提供している人達とつながることができる・思いを共有出来る、そんな世界を描いています。

この世界の実現には、株の世界で企業と投資家が共通の仕組みで繋がっている様に、渋谷の不動産を管理している人、NYの5番街の不動産を管理している人、絵画を管理している人、ワインの畑を守っている人といった、実物資産を提供する側と投資家が同じ仕組みの上で繋がる必要があります。WealthParkが今まさに創ろうとしているものは、この一番底の仕組み、いわばインターネットでいうインターネットケーブル、電話でいうと電話線です。僕自身は「オルタナティブ資産のファイナンシャルケーブル」と呼んでいます。オルタナティブ資産は実物資産なので資産に合わせたマニュアルな管理が必要かつ標準化が難しい、それが故に、巨大なマーケットにも関わらず、それを支える共通のプラットフォーム、いわば土台のケーブルがないまま今日に至っています。まだ誰も突破できていない領域だからこそ、一番深い位置でのプラットフォームをつくりたいんです。

また、WealthParkはグローバルファーストの理念で組織を創ってきたこともあり、クロスボーダーに強いので、僕らがつくるプラットフォームに、例えば海外の不動産管理会社が、アートのコレクターが、ワインの醸造家が直接乗ってくる、投資家がその資産・情報にアクセスし持分への参加ができるといった、これまで言語の問題で互いにアクセスできなかったオルタナティブ資産における海外の”モノ”と日本の個人を繋げることも積極的に推進していきます。

「投資機会の民主化」、つまり投資機会の平等は、ボーダーのない世界

――現時点では一部の人しかアクセスできないオルタナティブ投資という巨大なマーケットの開放を底で支えるケーブルを整備することが、WealthParkが目指す「投資機会の民主化」に繋がるんですね。

「投資機会の民主化」、つまり投資機会の平等は、境界のない世界の創造だと思っています。僕らのアプリを使う投資家が世界の資産にアクセスができる、プロ投資家が、あるいは海外から触れられる投資機会と、日本にいながら僕らのアプリを開いて飛び込める機会、そこに差分はなく、ボーダーレスな状態になることをイメージしています。もちろん投資する・しないは自分の判断、成功や失敗も自己責任です。でも、少なくともボーダーレスな情報にアクセスが出来、自分で判断して勝負ができるということが大事。本当の意味での機会が、情報へのアクセスがボーダーレスになったら、日本という国はもっと強くなると思っています。WealthParkを開いて、ヒリヒリするぐらいの境界のない情報に触れる、世界では当たり前にアクセスできているかもしれない投資の機会をリアルに感じる、そして判断して選択する。選択する・しない含めて全ては個人の自由です。でも、機会へのアクセスだけは創りたいなと考えています。

個人的には、境界線のない機会を提供する・逆にいうと色々なものに晒されることで、”ふわっとした安心感”に包まれてしまい埋もれてしまうことに対する警戒音を自分に鳴らしたい。大それた言い方になってしまいますし、これは完全に僕個人への意味付ですが、投資機会の平等化とは、どこかで閉ざされてしまった日本に対する自分なりのアンチテーゼなのかもしれません。

――アプリを通じて世界の投資機会に晒されていくことで、日本人のマインドセットすら変化しそうですね。今回リリースされた「WealthParkオルタナティブ」は、現在WealthParkのサービスを利用されている不動産管理会社様やオーナー様にとって、どういったメリットがあるのでしょうか。

WealthParkオルタナティブは、不動産管理会社様における小口化事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を主目的としています。案件募集から投資家様への期中管理までを横断的にサポートする一気通貫型のシステムサービスです。不動産管理会社様においては、現物不動産・小口化商品に係る全ての期中管理の一元化が、投資家様は一つのアプリで現物不動産・小口化商品のポートフォリオ管理が可能になります。不動産管理会社の方からは、これからはお客様に小口化商品を提供したいという声を聞くことも多いのですが、資金、人的リソース、テクノロジーを考えるとなかなか難しいのが現状です。我々のプラットフォームを活用頂き、不動産管理会社様が簡単に小口化事業の立ち上げ・DX化、そしてオーナー様にアプリ上で小口化商品を提供して頂けるようサービス推進をしていきます。

不動産管理会社様と一緒にマーケットをつくりたい

――オルタナティブ資産に投資する場合、間瀬さんならどの様なポートフォリオを組まれるのでしょうか。

例えばちょっと極端かつテクニカルですが、最近米国で出てきたステーブルコインのDeFiをストラクチャーして作り出されている金利3%程度の擬似的な預金口座にお金をプールしながら、6-12ヶ月償還の想定年利6-10%程度の米国不動産担保付シニアローンで短期運用、加えて米国でBlackstone出身の人が創業者で個人への開放をしている現在までの実績年利18%程度のNY不動産ファンドに投資、3-5年の運用期間で自分の好きなスタートアップへの未上場投資をしながら、あとは小口化されたアンディ・ウォーホル・バスキアといったアートの持分、エルメスのヴィンテージもののヒマラヤ・バーキン持分等への分散投資、といった感じでしょうか。そして何といってもWealthPark自身の株(笑)。

今話した米国不動産担保付ローンは、テクニカルな言い回しになってしまいますが、シニアローンといって比較的安全な資産、一方で米国金利ベースで6-10%程度の年利が通常の市場です。また、昨日調べていたのですが、アンディ・ウォーホルの作品はここ30年の実績値で、年平均12%、バスキアの作品は18%。エルメスのヒマラヤ・バーキンは、年間約14%値上がりしています。だからといって投資が必ず成功するなんてことはありませんし、投資は自己責任です。一方、こういった情報を知っている、アクセス出来た上で判断が出来るスタート台に自分が立てることが重要だと考えています。

朝起きるとこういった自分だけの資産ポートフォリオ・自分のコレクションがアプリで見れるなんて面白い世界だと思いますし、実際にこうした投資運用をプロの投資家や富裕層はこれまで行っていて、僕らには単純にまだアクセスがないだけ。数千兆円あると言われているマーケットですが、ほとんどはプロの投資家・一部の富裕層にしか開放されていません。知っているか知らないか、輪に入れているか入れていないかの話です。ここを変えていきたいと思っています。

――なんだか自分がかなり損している気がしてきました(笑)。最後に、WealthParkのお客様やWealthParkへの参画を考えている方にメッセージをお願いします。

我々は不動産管理会社様・パートナー様と一緒にこのマーケットを、意味のある投資機会へのアクセスを創りたいと思っています。WealthParkがつくろうとしているものはあくまでも土台としてのインターネットのケーブルで、不動産管理会社様・パートナー様に使っていただくことが前提です。不動産管理会社様・パートナー様が我々のプラットフォームを活用頂くことで自社の投資家様により深くエンゲージして頂くことが出来る、結果投資家様はより便利に投資機会へのアクセスを獲得できる、そんなサービスの利便性をより向上していきたいと思います。

一番大事な資産である不動産を管理されているのは、そしてオーナー様に日々向き合われているのは不動産管理会社様であり、彼らのお客様のことは不動産管理会社様が一番理解されていらっしゃいます。私達は一番土台となるプラットフォームとして、不動産管理会社様・パートナー様が投資家様と深いエンゲージメント・信頼関係を築けるよう、エンパワーし続ける存在でありたい。我々がB to B to Cの事業モデルにこだわっているのはそれが理由です。

WealthParkへの参画を考えられている方に対しては、誰も完成させていない、世界に通用するインフラをつくれるチャンスだということは言えると思います。人生において世界と対峙できる可能性のあるプラットフォームに携われる機会はあまりないと思いますし、今回資金調達もして、参画するには非常にチャレンジングでやりがいのある良いタイミングだと思いますので、ご参画を是非お待ちしています。


WealthPark NYC 2019にて

インタビュアー:飯田明

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