2023.11.01
WealthPark Investment 特別対談企画(前編)TAKUTO太田氏に聞く、資産価値向上のパートナーを実現するための組織づくりや人材育成
「Fintech x Business:“従業員コミュニティのあり方”」をテーマに、業界をリードする不動産管理会社の経営陣様をお迎えし、貴重なお話を伺う対談企画。今回は、「Create New Values」を掲げる、 株式会社 TAKUTO(旧 株式会社 宅都プロパティ)代表取締役社長 太田卓利氏にお話を伺いました。前編では、資産価値向上のパートナーへの昇華に向けた従業員の資産運用の推進、組織づくりや人材育成に対するビジョンについてお聞きしました。
ゲストプロフィール
株式会社TAKUTO 代表取締役社長 太田 卓利氏
和歌山県出身。大阪で働き始め、1987年に不動産業界へ。大手賃貸不動産会社を経て、30歳で株式会社TAKUTOを設立。趣味は釣りと筋トレ。愛犬家の一面も持つ。座右の銘は「質実剛健」。
目次
管理会社から「資産価値向上のパートナー」へ
ーー今回は、「TAKUTOを不動産管理会社から資産価値向上のパートナーに昇華させていく」という太田氏のお考えのもと、会社をさらに変質させていくためのチャレンジの一環として取り組まれた、従業員パッケージ(福利厚生)【不動産オーナー様と同じ投資家になるために、従業員の方々の投資をWealthPark Alternative Investments株式会社がサポート】を切り口にしながら、組織づくりや人材育成に対する太田氏のビジョンを掘り下げさせていただけたらと思います。
まず、非常に大きな成果として、約200名の従業員様のうち、実に90%近くの方が参加されていることが挙げられますよね。投資対象は自社開発・自社管理の物件(※貸付先ならびに物件の所有:WealthPark RealEstate Technologies株式会社)でありさらには将来的にお客様である投資家にも同様の仕組みや商品を届けていく構想があることからも、大きな一歩を踏み出したプロジェクトだったと思います。
NISA・iDeCoの参加率ですらまだまだ低い現状で、この90%という数字は極めて稀有な達成率です。TAKUTOという会社組織において、これだけの人が取り組みに賛同し、同じ船に乗れたということは、組織のリーダーシップに秘訣があるのではないかと。今回、どのような経緯や想いで導入に踏み切られ、このような成果に至ったかをご教示いただけますか。
太田氏: 今回の導入の目的は、従業員の金融・投資リテラシーの向上であり、結果として従業員一人一人に自分の仕事と私生活の両面で豊かに、また幸せになってもらうことです。
その背景は2つあって、1つ目は、日本に対する危機感とそれを良くしていきたい、という思いです。世界的に見ても日本人の金融・投資リテラシーは低く、「貯蓄から投資へ」を促す国の政策にも関わらず、「人生100年時代」に向けて老後資金についてしっかりと考える文化は日本にはまだあまりないでしょう。「国が守ってくれる」、「誰かが守ってくれる」という感覚を何となくお持ちの方が多いのではないかと思いますが、これからは自分で自分のことを守っていく必要があります。大半の方が「路上生活をすることにはならない」と思えることは、日本が豊かになった証でもありますが、将来にわたって豊かであり続ける保証はどこにもありません。だからこそ、今から何十年という時間をかけてコツコツと資産を積み立てていき、お金がお金を生む仕組みを活用してほしいのです。
弊社の従業員も決して例外ではなく、スマホ・IT・インターネットによって手軽に投資できる環境が整備され、国も投資を後押ししているにも関わらず、重要性や危機感を感じているようには見えないのです。毎日のようにニュースや新聞で日本の金融資産の現預金比率の高さを目にしながら、まずは社内でこの状況を打破することが日本の会社としての命題だと考えていました。
2つ目は、顧客属性の変化です。我々の事業のお客様には地主も含めた「個人投資家」も多いのですが、ファンド・事業会社・デベロッパーといった、いわゆる「プロ投資家」のお客様も増えてきました。これに従い、従業員の金融・投資リテラシーを高めることが喫緊の課題となりました。組織体制の見直しに伴う新生TAKUTOの誕生も、そういった状況を踏まえての決断です。
地主は、先祖代々受け継いできた土地に建物を建て、家賃収入を得ているので、簿価利回りが高いんですね。また、お金を儲けようというよりも、不動産をやむを得ず相続している方も多く、利回りや金利に対する関心が高くはない方もいらっしゃいます。
一方、不動産を投資目的で所有している投資家とビジネスをするためには、従業員自身が投資に対する価値観を深めていくことが、より一層求められます。そこで、個人的につながりのある証券会社の方に社内セミナーを開催してもらったところ、判明したのは70〜80%の従業員が証券口座を持っていないという事実でした。
ただ、弊社の役員や部長クラスの金融・投資リテラシーは高く、また、20代の新卒や若手社員はアプリなどで低額、気軽に投資できるサービスを活用していました。つまり、課題として浮き彫りになったのは、中堅層の投資に対する関心度の低さだったのです。
お客様の資産の最大化に向けて、まずは従業員の資産運用の土台を整備
ーーなるほど。TAKUTO様が「資産価値向上のパートナー」に昇華されるには、まずは従業員がお客様である投資家の気持ちを理解する必要がある。そこで、従業員が投資家の立場に立てる仕組みとして、投資機会の提供という発想につながっていくのですね。
太田氏: おっしゃるとおりです。投資家の考えていることを学ぶことは、我々の仕事にとって不可欠です。単に「不動産を売る・扱う」、「投資家の御用聞き」ということではなく、仕事の中で人間関係を育み、お客様から選んでいただく会社になるためには、お客様の資産を最大化していく考え方を理解していかなければなりません。
「お金で不動産を買う」、「お金でお金を生む投資をする」ことが従業員の腑に落ちていなければ、単なる不動産管理会社から脱却し、お客様の資産を最大化するためのパートナーに行き着くことは難しいでしょう。証券会社のセミナーや今回の従業員向けパッケージへの参加を通じて、お客様に対して寄り添い、資産を最大化していくための提案ができるスキルを身につけてもらうことを期待しているのです。
まとめると、「従業員の人生を幸せにすること」、「資産価値向上のパートナーへ昇華するために必要なこと」、この2つの課題感が見えてきたタイミングで、WealthParkさんから従業員パッケージのお話をいただき、導入に踏み切りました。これは、御社との対談だからというわけではなく、正直な気持ちです(笑)。
ーーありがとうございます(笑)。お客様の資産を最大化するためには、まず従業員の資産運用の土台を整えるという発想は、日本の今の経済状況において非常に重要なポイントだと思います。
デフレ経済の中で投資をしてこなくても、何とかやりくりして生活ができ、それなりに楽しく過ごせていたのがこれまでの日本です。
しかし、国が「老後2,000万円問題」を言い出したように、これからは今のままでは生活を支えきれず、年金もマクロ経済スライドを通して減っていきます。さらに、今後インフレがますます進んでいくことになれば、資産形成は誰しもが真剣に取り組んでいかなければならないことでしょう。
太田氏: そうですね。従業員にも伝えていますが、有効な資産形成のためには、日本だけを見ていてもいけません。例えば、アメリカでは金融引締政策がとられる中、日本は金融緩和政策を続けています。従業員には世界に目を向け、世界の潮流もしっかりと把握してもらいたいのです。
例えば、従業員パッケージのお話をただいた当時の円相場は約105円でした。当時、金融資産をすべてドル建てにしていた場合、円建てで考えると今頃は為替差益で資産が約1.4倍になります。また、私も個人で国内に投資用不動産を持っていますが、日本の銀行からローンを借り入れています。しかし、アメリカのように金利が上がってしまった場合、不動産価格も下がってくる可能性がありますし、不動産収入でローンの利息支払いができなくなる可能性もあるため、危機感を持っています。
もし弊社の従業員がこれらのことを理解していない場合、借入コストを考慮せずに不動産の利回りだけしか案内ができません。今後の金利見通しを自分なりに持つことや、金利上昇局面における提案、相続に関する提案など、一例ですがそういった考え方や提案などもできるようになってほしいと思っています。そのためには自分自身が経験することが一番で、だからこそ、自身で資産運用や投資にトライする必要があるのです。
ーー国債金利が上がれば物件の期待リターンも借入コストも上がってくるため、これまでとは、違う世界、違う市場になっていきますよね。
投資家にとっては、チャンスも広がりますが、リスクも出てきます。以前からそうした危機意識を社内で共有し、今回、会社としての存在価値を高める取り組みの一環として従業員パッケージを導入したことは、改めてすごいことですね。
太田氏: ありがとうございます。弊社は来期で25年目に入りますが、設立当初からそのような構想を持っていたわけではありません。事業の時代背景が刻々と変わるにつれて、私の考えも変化してきたのです。
TAKUTOという会社は、時代の変化に合わせて成長を遂げているという自負があります。例えば、海外の投資ファンドが日本の物件を大量に購入していた際、私はPM(プロパティマネジメント)業のニーズを見越して、いち早くPMレポートやリーシングレポートをファンドマネージャーに提供するための専用の部署を立ち上げ、勉強してもらいました。
そうした時代に即した方向転換を都度実施してきた結果、管理戸数が約3万3,500戸までに成長しました。そして今、会社が新たに舵を切ろうとしているにも関わらず、従業員が投資という概念を理解できなければ、我々の進化に中身が伴わなくなってしまうのです。
投資への一歩を踏み出すために、会社が全面的に支援
ーー今回、90%近い従業員の方に参加していただけたのは、会社として補助を実施したことも大きかったのではないでしょうか。会社への負担はありますが、従業員のこの先の人生設計を積極的にサポートされたことは、素晴らしいことだと思います。
太田氏: 補助を出してまで、従業員が投資への一歩を踏み出すための入口を整えたのは、10年、20年と社会人生活を送ってもいまだに証券口座を開いていない従業員に対して、ただ「やってみなさい」と伝えるだけでは不十分だからです。結局のところ、人の考えや価値観を変えるには、自身で経験してもらうことが必要なんですよね。そこで、会社が全面的に支援をして、まずは経験してもらうところから始めようと。
今回の一人一人の投資額は限られていますから、数ヶ月で投資のメリットを理解する従業員は少ないでしょう。しかし、複利の効果は年の経過とともに利いていきますから、3年ないしは5年と続けたときに、「あれ?増えている」と肌で実感すると思います。実感が伴えば、これからも投資をしようという気持ちが芽生えてくるのではないでしょうか。
また、長期的には、TAKUTOが企画・土地の取得・立ち退き・建築まですべてを担当した不動産の投資家に従業員がなるというビジョンを描いています。従業員が自分の仕事の中にある「投資」という部分を、より自分事として捉えてくれることを期待しているのです。
ーーそのための第一歩が今回だったと。運用開始から3ヶ月が経過し、今回従業員パッケージに参加された従業員の方は、分配金を受けていらっしゃるでしょう。
おっしゃるとおり、こうした3ヶ月の体験で劇的に価値観や人生が変わるというところまでいくのは難しいかもしれませんが、社内ではどのような反響がありましたか。
太田氏: 結局、数字にすると「2-6-2の法則」に収束されるのかもしれませんね。今回は従業員のうち約90%が参加してくれましたが、そのうちの約20%の従業員が特に積極的に賛同してくれており、反応もよい印象です。
例えば、今回の取り組みにおける最高額で、非管理職の従業員が50万円を投資してくれました。私も逆に驚きまして、本人に直接聞いてみると、「(会社補助を含めて)利回り12%なんて、投資しない理由はないですよね?」なんて言うんです。今回の取り組みで私の秘書も実は投資への関心が高いことがわかったのですが、「もし資金があればもっと投資したかったです。」と漏らしていました。
一方で、そういった従業員であっても不動産REITや不動産投資にトライしたことはなかったようです。自身の会社が不動産会社であるにも関わらずです。投資の基本概念は理解していたとしても、不動産のを担保とした少額からの投資でも「怖い」、「わからない」という反応になってしまうんですよね。まずは「2-6-2」でスタートして、アーリーアダプターの20%が残りの60%・20%の層を引っ張ってくれるような、よい循環が生まれれば良いなと感じています。
参加率90%達成の秘訣は、「投資=消費」という感覚の更新
ーー今回の従業員パッケージの導入にあたっては、御社の従業員の方が、奥様に相談してみたら「投資なんてもったいないからやめて」という答えが返ってきたという点が印象に残っています。
「5万円を投資する=銀行口座から5万円減る」という、投資と消費を一緒に捉えてしまう感覚を伺い、今回の90%の達成はこうした根幹の部分を丁寧にほぐしていかれた結果なのだと、頭が下がります。
太田氏: すぐに90%を達成できたわけでは、もちろんありません。弊社の従業員は、世間一般でいう普通の生活をしています。無茶なお金の使い方をしている従業員はほとんどいませんし、貯金はしているので、投資をする余裕はあるはずなのです。ところが、部長会で二度提案しても参加率が50%に届かなかったという結果を聞き、「一体なぜ投資をしないのか」と尋ねました。
理由を突き詰めていくと、結局は「もったいない」という感覚なんですね。物を購入してお金が消えるわけではないにも関わらずです。おっしゃるとおり、そうした価値観から変えていく必要がありました。
ーー御社の従業員様に限ったことではなく、日本全体に言えることですよね。だからこそ、国も投資教育の重要性を訴えており、高校で金融教育の授業が始まりました。インフレ経済においては、銀行預金というほぼゼロ金利の商品に資産を寝かせておくことの方が概念的に「もったいない」ことなのですが、なかなか理解を得られない。
そうした日本の状況を踏まえても、今回の取り組みは日本を変えられるくらい、大きなインパクトがあると思います。ある会社に勤めている90%以上の人たちが、会社からの補助を得て、会社の事業に関連する商品を通じて投資の世界へ一歩を踏み出す。まさに、従業員と会社が同じ船に乗っている状態を実現されているかと。
御社との今回のお取り組みを通じて、太田氏のリーダーシップ、そして、投資の力を活用して会社がしっかりと従業員の生活・人生を支えていく姿勢を間近で見ることができ、私自身も多くの気づきや学びを得ることができました。
インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太
株式会社TAKUTO
代表取締役社長 太田卓利
大阪府大阪市中央区高麗橋3-2-7 オリックス高麗橋ビル2F
会社ホームページ: https://www.takuto-group.com/
<本件に関するお問い合わせ先>
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Contact: https://www.takuto-group.com/contact/
WealthPark株式会社 広報担当
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