2023.11.01
WealthPark Investment 特別対談企画(前編)エイチピーエム田嶋会長に聞く、従業員コミュニティのあり方
「Fintech x Business 従業員コミュニティのあり方」をテーマに、業界をリードする不動産管理会社の経営陣様をお迎えし、貴重なお話を伺う対談企画。今回は、株式会社エイチピーエム代表取締役会長兼CEOの田嶋氏にお話を伺いました。前編では、従業員向けの取り組みやそれに至った経緯、コミュニティの作り方や札幌一に向けた従業員のマインドセットなどについてお聞きしました。
ゲストプロフィール
株式会社オネックスグループ代表取締役・株式会社エイチピーエム代表取締役会長兼CEO 田嶋 祐介氏
約10年間、地元札幌にて営業職や会社役員を経験した後、株式会社エニシィングを設立。2009年に設立した株式会社ホットハウス(2022年6月に分社化し、現在の株式会社エイチピーエム)を含む7社を有する、オネックスグループ代表取締役に就任。趣味はゴルフ、バスケ、食べ歩き、仕事。
目次
従業員向けの大きな取り組みや田嶋会長の従業員への想い・背景
ーーまずは、今回投資を経験するという従業員様向けの大きな取り組みをしていただいた経緯から、想いをお聞かせいただけますでしょうか。
田嶋氏: スタッフに対する想いと言いますか、その前提である弊社設立まで遡ると、私、金澤と山田の創業者3人で最初に約束したことがあります。それは、「役員も含めて収益物件を自分たちで持つことをやめよう」というものです。
不動産会社を続けていく上で、当然、収益物件の販売も業務の一つとして担います。その際に、私は異業種から参入しているため、基本はクライアント側の目線で物事を判断できると思っています。その中で、私がお客様とした場合、例えばその企業のトップ3が収益物件を数多く所有していると分かると、「良いものはそもそもトップの人間が持っていますよね」という発想になります。そのため、お客様に対する信頼という意味では「持たない方が良いのでは?」と考えたのです。また、人間は弱い生き物であり、不労所得を持つとどこかで甘えがどうしても出てしまうものと考えました。そのような背景があるためか、弊社ではスタッフも含め、収益物件を保有している人はいません。この考え方は、不動産業に14年間携わってやってきた中で、絶対に正しかったと思っています。
他社では、自社の管理職やスタッフに融資をして物件を持たせることは少なくありません。しかし、実際には途中で退職したり、うまく仕組みが回らなかったりというケースを目の当たりにしてきました。そういう意味では、この考えは正しかったと胸を張れます。一方で単純な管理会社ではなく、オーナー様の大事な資産を預かりマネージメントをしていくという意味では、少なからずお金にまつわる体験や、特に不動産投資に関する体験・勉強をどこかでしていかなければならないフェーズに入ってきていると感じています。10期目くらいから体験・勉強の必要性は少し頭によぎってはいるものの、今更方向転換をして社員に対し「物件を持っていいよ」というのはおかしいのではないかと思います。私たちが物件を持つ・持たないで言うと、「持たない」という考えは貫いていきたいです。
そのような中で、御社からいただいた話は非常に面白いと感じました。1つは、スタッフの体験を踏まえたスキルアップを図ることができる点です。また同時に、一緒にホットハウスという事業を組み立てていく中で、給与所得以外の所得を僕らと関わることで、得られる喜びを同時に味わえるという考えから、前向きになれたと感じています。やはり、人間は誰しも好き嫌いがあります。基本的には、「好きな人と、好きな事を、好きなだけやっていたい」という欲求はあるものの、どこかでこの人といて良かったなという想いも必要です。例えば、「田嶋さん・金澤さん・山田さんと一緒にやって良かったな」という想いを、投資を通じてその価値が増えることで喜びを感じてほしいと思いました。
田嶋会長の目指す会社や従業員コミュニティのあり方
ーー事業規模が大きくなるに従い関係されるコミュニティが大きくなっていく中で、田嶋会長が変化していく様子をどのように受け入れながら、またその過程でどのように社員の方に対する想いは変化されたでしょうか。
田嶋氏: あまり深く考えたことはありませんが、やはり大前提として私が最初に起業した29歳という年齢のとき、ビジネスマンとしての終わりをあまり考えていませんでした。どちらかというと、長い未来を考えると、ワクワクと無限の可能性しかない状態でした。始めたものは終わらなければいけませんが、強く終わり方を意識し始めたのは、大体ホットハウスが10期経ったぐらいです。
ホットハウスの事業をやっているからではなく、単純に自分の年齢から健康的に経営者という職業をやっていける期間を逆算すると、割ともう終わりに近づいていることが分かります。今までは「楽しいことをやるから付いてこい」という乗せ方でしたが、この先は私がずっと船頭をやれる訳ではないため、違う乗せ方をしていかないといけません。私が一緒に船に乗っている状態のときは、乗ってくれている人が楽しいと感じていることが大前提なんですが、私が降りた後、当時を振り返ったときに「田嶋会長に声をかけられて乗って良かった」と思ってもらうにはどうしたらいいか、というように価値観が変わってきました。
その意味では、10期目を迎えたあたりにおいて、創業からの仕組みやビジョンの与え方等変化させないといけないと思いました。私たち目線で言うと付いてこれないものが、若い世代の方の目線で言うと「この会社古いな」というイメージになるということがあると思います。その部分を、バランスの良い仕組みに変えなければいけないと感じた頃がちょうど10期経った頃です。ここから先は、私たちのような古い感覚と今の新しい世代の感覚を、どこかで折衷できる場所みたいなものを作っていかなければなりません。もしかしたら、今回の取り組みもその1つなのかもしれないです。
従業員の方々に期待すること・イメージ
ーー自分と他人との違いをどう埋めていくかは、特にこれからの日本の大きなテーマだと感じています。
社員の方たちに対して、このような変化の中でどうなってほしいというイメージ・理想をお持ちになられているか教えてください。
田嶋氏: 自分の腕で稼ぐことが、理想であり王道だと思っています。私たちが社会に出た今から25年前は、一定の情報を先取りできる人たちがお金を動かし、そうでない人たちは労働者という状況でした。その中で、労働力として頑張って稼ぐことには、やはり限界があります。今はインターネットが世の中に普及し情報量が変わってきましたが、王道である「自分の食いぶちは自分の腕で稼げ」という想いはあります。
しかし、自分の腕で稼いでいる本流から大きく逸脱せず、仕事のモチベーションを削がない程度の収入・ロイヤリティーは得ても良いと思うんです。お金だけでなく、何かを得ることはこの先において必要だと感じています。「二足の草鞋を履くな」という昔の考えと違い、今は可能性があれば途中で変えても良いという風潮が世の中にはあります。その動きに付いていかなければいけないと感じます。
「札幌一」に向けた従業員のマインドセットと取り組み
ーー地域で一番の不動産管理会社になる、仲間を増やしていく、その人たちに幸せになってもらうという部分を考えると、今回を経てどのようにコミュニティを作っていこうか、社員・地域・仲間をうまく巻き込む事業の作り方や考え方としてどういったものをお持ちでしょうか。
田嶋氏: ホットハウスは、今まで賃貸仲介が強いと見られていましたが、これからは明確に「札幌一の管理会社」というキーワードを全スタッフが発信していける会社づくりをしようと考えています。
今まで、「ホットハウスって何の会社?」と言われると、周りも含め客付けの会社、客付けが得意な会社と言うイメージを抱かれていました。その一方で、管理もやっているという見え方だったと思いますが、イメージを一新し、「弊社は管理会社です」と発信していきます。その中で、6月の始めから新しい体制を組みスタートしているのですが、HPM(ホットハウス・プロパティマネジメント)という会社に対しコミットしていることがあります。それは、まず「札幌一の管理会社になる」という言い方はするものの、そもそも何をもって札幌一なのかという定義を、しっかりとHPM流で考えようというものです。
私が目指すべき札幌一とは、戸数ではなく集まってくれるオーナー様、管理しているところに住んでくれている入居者様、不動産を弊社と一緒にカバーしてくれているパートナー企業の皆様など、全部を高い質に維持することです。戸数を札幌一にするという会社もあると思いますし、それは否定しません。弊社はそこに食い下がろうとせず、その中で質の高いオーナー様や入居者様を取り巻く環境となると、まず自分たちが質を高めなければいけないと思います。今までに集まってくれたスタッフの人物像は非常に良いものがありますが、例えばDX・投資にまつわる部分・ハードウェアや建物に対する知識など、全体的にリテラシーの底上げをしようという考えがあるのです。
今回の取り組みは「まず投資を学ぶ」という意味では非常に良かったです。また、札幌一の不動産会社になることは、あくまでも目標であり目的ではありません。私たちが提唱する札幌一という基準を作った時、その目的に関しては札幌一給与が高い管理会社になろうということを6月始めにコミットした訳です。そのために、給与・自分たちのレベル・取り巻くステークホルダーなど、あらゆる部分の質を一段階上げる。14年も会社をやっている訳ですから、誰とでも仲良くするのではなく、次のステージを目指すにあたって付き合う選別をしなければならない。まさにそういう状態であると感じています。
ーー給与を一番払える会社にするということは、大きなメッセージだと思います。福利厚生もそうですが、良い状態になったものが段々と当たり前になっていくなかで、それでもクオリティを追いかけていく環境を整えることは、難しいと思います。そのあたりは、どのようにバランスを取りつつクオリティを上げて、ステークホルダーの満足を図っていこうと考えていますか。
田嶋氏: ある意味、満13年に渡り雑多にやってきて良かったと思っています。もちろんトライアルも多かったため、挑戦してはダメであったりうまくいったこともあります。その時々で最善と思うことをやってきた中で手にしたものはありますが、同時に色々なものを失いました。6月始めに私たちのメッセージを聞いたスタッフは、雑多な時からいる人が大半です。
もちろん良くなると忘れるのかもしれませんが、そもそも弊社が現状お金がすごいあるにも関わらず、皆への分配をしていない訳ではありません。もっと利益を出すことで皆に分配ができるのだと伝えることが大事です。
利益を出すためにしなければいけないことは、やはり無駄の削減です。仕組みのない中で業務を日々こなしたことにより生まれた無駄な人件費、思い付きで取り組んだIT化、最初は使っていたものの、気付けば誰も使っていないサービスの月額のランニング費用など。そういった無駄の積み重ねが、自分たちの手取りとして回ってくるはずの分配を阻害してたと気付くべきです。今3カ年計画を立てていますが、無駄をなくすと投資に回せるという感覚を繰り返し体感してもらおうと思っています。
給与アップを図るうえでの取組み・持つべきイメージ
ーーこのコストを減らせることにより給与が上がる、達成されるたびに昇格を伴っていくという部分を仕組化するイメージということでしょうか。
田嶋氏: そうですね。経営陣だけが戦略的に分かっていたことを、あまりそれ以外のスタッフには伝えてこなかったと感じています。それを、今後はなるべく可視化していきたいと思っています。
そうすることで、例えば給料50万円の人が70万円になった時、なぜ70万円になれたかというプロセスが沁みつきますし、一方で50万円に戻ってしまう要因も理解できると思います。三カ年計画においては、まず最初の1年を自分たちが全力で土台を作り上げるステージとし、そのうえで何ができるかをその次の2年で考えながら、何度も思考錯誤しながら札幌一の給与を手にしてほしいです。
ーーメンバーに対して理由付けをして作っていくという形になるんですね。表現は違うかもしれませんが、現代らしさを感じます。
田嶋氏: 色々なリテラシーの高い人たちを巻き込まなければいけませんし、もっと言うと今いる人たちにも付いてきてもらわなければなりません。今回は投資の勉強や疑似的なオーナー体験となり、それ以外にやらなければいけないことが多くあります。それらを経てHPM社・旧ホットハウスの社員は、自分たちの年収に相応しくなければ、その分の給与を受け取ってはいけないと思います。
実力に伴わない報酬を得ることは、長続きしない要因と感じています。そのため、実力が伴った状態で給料を受け取って欲しいです。「実力が伴う」とは何かというと、今の弊社社員は、もちろん頑張ってはいますが、それだけではカバーできないスキルの取得があると思います。資格の取得が良い例です。もう少し頑張ってもらい会社の業績も追いつくと、しっかりと利益が出るため無理なく還元できます。皆のスキルに見合った給与であれば絶対的に正しいですし、まずはそのような段階まで3年かけていこうと今取り組んでいます。
ーー冒頭で田嶋会長からあった受け手側の気持ちはどうしても欠けてしまう部分は否めないため、今の話は非常に重要だと思います。
従業員の方たち月30万円の給与を受け取っている人にとって、なぜ35万円・40万円になってくかという部分は、国が賃上げを推奨することにより上がるなんてことは正直ありません。
では、その2万円・5万円の明細の内訳がわかってきます。その2万円は業務効率の向上、あるいは新規顧客に対するサービス向上による単価上昇なのかなど、色々なものが関係していると改めて思いました。
インタビュアー:WealthPark Founder & CEO 川田 隆太
株式会社エイチピーエム
代表取締役会長 田嶋祐介
札幌市中央区南8条西4丁目422番地5号 グランドパークビル3階
会社ホームページ: https://ho10-house.com/
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